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[双子百合]うまれる前から永遠に  作者: 唯凜
私はそんなことくらい気にしない
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第六話

「「ただいまー」」


 買い物から帰ってきて玄関に二人で持ってきた沢山買ったものが入ったエコバッグを玄関に置く。


「よいしょっと」


 先に環樺が靴を脱いで家に上がり、買ってきた物をリビングの方に持って行ってくれる。そして私も靴を脱いで後を追って一旦リビングに入り、ダイニングキッチンの傍に荷物を置く環樺の後ろ姿に声を投げかける。

 

「おつかれさま。ご飯作り始める前に着替えてきちゃお」

「そだねー」


 2階にある自室に向かって階段を上がり始める。すぐに環樺が後ろから駆け足でリビングのドアを閉めて追いついてくる音が聞こえる。

 二人で前後に並んで階段を上がり、部屋のドアを開けて中に入る。そしてドアを閉めようとした後ろ手に、ドアノブの堅い感触とは違う柔らかい感触を感じる。

 いきなりの意識外の感覚に何が起きたのか分からなくて後ろを見てみると、環樺が自分の部屋ではなく私の部屋に入ろうとぴったり後ろに付いてきていた。どうやら私が触ったものはドアノブを握っていた環樺の腕だったようだ。

 環樺の部屋は私の部屋とは廊下を挟んだ向かい側にあり、もちろんその入り口のドアも向かい側にある。着替えるために自分の部屋に戻るはずなので私の部屋に入る必要はないはずだ。


「んふ~」


 いたずら出来たからか満足げに笑う環樺と目が合う。

 それならこちらも、と良い事を思いつき、気が済んでそのまま部屋に戻っていこうとする環樺の腕をつかんで逆に私の部屋に引き込む。


「わ!? お、お姉?」


 帰ろうとしたのに引っ張られた環樺は当然驚く。

 

「環樺? 私の部屋に何か用事? もしかして私の部屋で着替えしたいのかな? いいよ、私の服貸してあげるから一緒に着替えよっか?」


 どういうことか訳が分からなくなっている状態の環樺にまくしたてるように言う。すると......


「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですーー!」


 ものすごい速さで逃げていった。

 ふん、お姉ちゃんの方が一枚上手だね。逆にこちらが少しの満足感を覚え、着替えを始めた。




「よっし、じゃあさっそく取り掛かっちゃお、お姉」

「そうだね。遅くならないうちに」

 

 部屋着に着替えをしてきて同じくらいのタイミングでリビングに帰ってきて、まずはキッチンの方に行き手を洗う。

 それからエコバッグを漁ってまずは買ってきた調味料を環樺にパスする。環樺はそれを、今使うものは調理場に、使わない者はそれぞれの場所にしまっていく。

 私は食材の方を担当して同じようにそれぞれの場所に置いていく。

 空になったエコバッグを元あった場所に掛けて、会計時に取り出してから私のポケットに入れていた共用の財布をエコバッグの中に戻す。

 そして近くの食器棚の引き戸の一つを開け、今日の買い物レシートを棚に入っているノートに張り付け、日付と買い物の金額を記す。

 我が家ではこうすることで共用の財布の残高を管理している。主に、私達が今後この家を離れる(できれば一生この家に居て欲しいそうだけど)時の為に家計管理の意識を付けさせる為だそうだ。なのでそれほど厳格なものでもなく、あまりにもな無駄遣いでなければお菓子などは自由に買ってもいい、としてくれている。


「これでよし、と。さ、始めていこっか。はい環樺、エプロン」

「ありがと~」


 キッチン内の壁に掛けられている同じようなデザインの緑色と黄色のエプロンを取って黄色の方を環樺へと手渡し、自分は緑のエプロンを身に着ける。


「じゃあ私はご飯を炊いてから他人丼を作るから、環樺は先にポテトサラダの方を作り始めてくれる?」

「はいはーい、りょうかい」


 打合せ通りに私はご飯を炊くために炊飯器から窯を取って、米を量りに行ったり流し台で米を研いでいる間に、環樺は隣でじゃがいもやにんじん、きゅうりをトントンと小気味良いリズムで手際よく切っていく。

 数回米を研いで濯いでを繰り返してから、水分量を量って窯を炊飯器に戻して早炊きのスイッチを入れると、既に環樺はさっきの食材を切り終わり、私が包丁を使える状態にしてくれていた。


「ほい、お姉。包丁空いたから置いとくね」

「ん、ありがと」


 そのまま環樺はお湯を沸かしていた鍋にさっきの食材を入れて下茹での作業に移行した。

 我ながら?我らながら?良いコンビネーションだな、と感心しながら環樺が置いた包丁とまな板をさっと洗って、さっきまで環樺が立っていたスペースに立ち、他人丼に使う食材を切り始める。


 私と環樺は昔から料理するときは大体二人一緒にしている。

 お母さんからは、台所に何人もいるとかえって作業しにくくなって時間が掛かるということであまりお母さんの料理の手伝いをする機会はなく、今まで手伝ったことがあるのは料理を教えてもらった時くらいの数えられるくらいだと思う。

 世間でもお母さんのように台所にいるのは一人でいい。むしろ入ってくるな、という人が多いみたいだし、私も環樺以外とは二人以上で料理したことがないので何とも言えないが、少なくとも私が環樺と二人で料理をするのは効率が上がっていると思う。

 さっきみたいにこれから自分が作業するためのスペースをスムーズに空けてくれるし、作業スピードが合っているから色々とやりやすい。

 

 まぁ、そんな理由がなくても一緒に料理をする理由は楽しいから、の一点に尽きるんだけど。


 そういう事で二人で他愛もない話をしたりしながらも効率よく晩御飯の支度を進めていく。


「よし、こんな感じかな。お姉ちょっと味見してみてくれる?」

「うん」


 しばらく各々の作業をしていたところで環樺がボウルの中身をかき混ぜていた手を止める。ポテトサラダの出来上がりの確認を求めてスプーンに少しだけ掬い、私の顔の方に差し出してくる。


「あ~」

「ん」


 カプリとほんの少しだけスプーンが歯に当たった音が鳴り、私の口の中に環樺が作ったポテトサラダが入り、その味が広がる。


「んー。うん、バッチリ!」

「よし、じゃあ完成!」

「最近ますます腕を上げたんじゃない? 環樺」

「へへーん、でしょ? やっぱり高校生になるとこういうスキルも一段階レベルアップしちゃうねぇ。お姉の方はどう?」


 効果音がついていそうなくらい大げさに腕を組んでドヤッた後に、私の担当している他人丼の出来を見るために蓋越しにフライパンの中をずいっとのぞき込んでくる。


「うん、そろそろいいかな」


 私が火を止めて蓋に手を掛けると環樺が身体を引く。そして開けると白い湯気がブワーっと広がって上っていく。

 数秒して湯気が少なくなり全容が見えると卵の半熟具合がわたし達の丁度好みな感じになっていて美味しそうに出来上がっているた。


「うわぁ美味しそう」

「よかった。もうすぐご飯も炊けるし、味噌汁作ったらもう食べ始めれるね」

「もうおなかペコペコだよ~」


 冷めないように一度フライパンの蓋を閉め、味噌汁の材料を切り始める。環樺は鍋に水を入れて火にかけ、ポテトサラダの入ったボウルと人数分の小皿を食卓の方に持っていき等分に盛り分けて仕上げにミニトマトを添えていた。


 しばらくして全てを用意し終えて、テーブルの上にそれぞれの盛り付けられた皿を並べて席に着く。

 

 我が家では座る場所が正確に決まっているわけではないが、家族全員で食事をするときはいつも同じ場所に座っている。

 私と環樺は隣同士、両親が向かい側、というのがいつもの場所で、今もそれと変わらず私たちは隣に座っている。

 二人しかいないんだから向かいに座ってテーブルを広く使えばいいのにと言われればその通りなのだが、その方が落ち着くし好きなのでいつも何となくこうして隣り合って食べている。

 飲食店に行ってテーブル席に座るときは自然と向かい合って座っているんだけど。

 改めて考えるとこの違いは何なんだろう。そんなに意識しているわけじゃないんだけど。


「じゃあ、いただきます!」

「あ、いただきます」


 一瞬でそんなことを考えていると、隣の環樺が手を合わせて挨拶をしたのですぐに復唱して食べ始めることにする。

 

「ん~~! 美味しい~」

「うん。美味しいね。でも急いで食べ過ぎないようにね」

「分かってるって」


 片手を頬に添えて美味しそうに味わっている環樺に同意する。やっぱり自分達で手間をかけて作る料理は気持ち的により美味しく感じられるな、と思いながら食べ進めていった。

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