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[双子百合]うまれる前から永遠に  作者: 唯凜
私はそんなことくらい気にしない
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第五話

 家を出てから歩いて約三分、二つ目の曲がり角を曲がったあたりで道端に生えている植木や花を観察している環樺を見つけた。


「やっと見つけた、環樺」


 もっと近いところで待っていると思ったのだが、案外時間がかかった。もしかしたらここまでの距離が環樺なりの今回の私の発言に対しての意思表明なのかもしれない。


「もぉ~遅いよお姉」

「はいはい、ごめんごめん」


 環樺が数歩小走りでトトッとこちらに近寄ってきて、私の横でくるっと反転して二人で並んで歩き出す。

 早く合流できたかどうかは環樺の裁量次第でしかなかったはずだがこういう時は何も言うまい。

 

「お姉、言っとくけど、わたし別に重くないから」


 ちょっとだけムスッとした表情で訴えかけてくる。

 気にしなくても分かっているのに、なんだか可愛くてついクスッと笑ってしまう。


「ふふっ、分かってるってば。体重だっていつもほぼ一緒でしょ」

「むぅ......」

「ほら、そろそろ機嫌直して? 学校で話せなかった分いっぱい話したいのに、環樺がそのままだったら私、寂しいなー」

「お姉ってばホントずるいんだから......でもそうだね、よし! 切り替え!」


 環樺が自分の頬を両手でぺちっと軽く叩き、背筋を伸ばしてニコッと笑顔になる。


「結局、学校でお姉のこと一回も見かけなかったな。帰りも別々だったし」

「そうだね。でもその分家で一緒に居るのがもっと楽しいよ」

「それは分かる! 一緒に居れなかった時間の分だけ愛が深まるってこういう事なんだって実感するなぁ」

「一日も離れてないけどね」

「わたしにとってはそれくらい長い時間に感じるの~。お姉は寂しくなかった?」


 これについてはお互いにずっと寂しい寂しいばかり言っていたら心が揺れてしまうので、そのまま答える代わりになんとなく環樺のほっぺをツンとつつく。

 環樺が頬を突かれたままこっちを向くのでやわらかいほっぺがもっとグニュッとなる。

 目が合うとなんとなく環樺も察してくれたのか、何も言わずに前に向き直る。こういう時の双子パワーは便利だ。何でもかんでも分かり合うわけではないが。

 寂しいって言ってくれるのは嬉しくはあるけどなるべくならポジティブに考えていこう。


「そういえば今日の身体測定で『あれ、あなたさっきも来なかった?』って二回も言われちゃって」

「あはは! そういえばそういうこと言われるのも久しぶりかもね」


 身体測定の順番は1組から順番に実施され、先に環樺のクラスがやってから私のクラスの番がやってきたようだった。

 中学一年生の時に言われた以来かもしれない。全然悪い気はしないし、むしろ嬉しい事である。


 そうして学校でのことを話しながら歩いていると、さっきまで聞こえていた二人だけの足音に少しずつ他の通行人のものも混ざり始める。

 もう少し歩くとこれまでの住宅街の道とは違う、車通りの多い大通りに出た。

 ここまでくると目的地のスーパーは見えてくる。横断歩道を渡って中に入り、入り口に積んである買い物かごに手を掛けると環樺が先にカゴを取っていく。


「今日はわたしが持つよ」

「ありがと。ここに来るまでに献立とか話そうと思ってたのに、他の話が盛り上がっちゃって何にも考えてなかったね」

「そういえばそうじゃん、えっと何にしよっか」

「家に野菜って何か残ってたっけ?」


 まずは入り口に一番近い野菜のコーナーを見ながらゆっくり歩いて行く。

 家に残っている食材も併せて今日の献立を考えていく。


「えっと、一昨日にお母さんが肉じゃが作った余りで、じゃがいも、にんじん玉ねぎはまだあったよ」

「うーん。じゃがいもってどのくらい?」

「いっぱい入ってるの買ってたからまだまだ残ってると思う」

「じゃあポテトサラダにしちゃおうかな。きゅうりを買って、それに付け合わせでミニトマトも買って、と。環樺、味噌汁の具材は何か希望は?」

「えっとね、何がいいかな」


 環樺がいろんな野菜を見て悩みながらしばらく練り歩く。


「あ、ナスがちょっと安いよお姉。ナスにしようよ」

「いいねぇ。じゃあ次、主菜だね」


 希望通り、ナスを買い物かごに入れて一旦野菜コーナーを後にして魚やお肉を見に行く。


「魚は安くないね」

「うん、今日はお肉にしようか」


 魚のコーナーを一通り見てあまり安くないから買い時じゃないなと思いするする進んでいく。


「どうしよっかな。うーん......。生姜焼き、からあげ......牛丼、親子丼とか......」

「お、いいかも親子丼。しばらく食べてない気がするし」


 お肉コーナーに向かいながら思いついたものを適当につぶやいていると環樺が親子丼に反応してくれる。


「それなら親子丼にしよっか。玉ねぎと卵は家にあるから鶏肉だけ買ってこ」

「うん! よかった、スムーズに決まって」


 お肉売り場に辿り着き、鶏肉を探す。


「たまにはもも肉じゃなくてささみとか胸にしてみる?最近ダイエットとか健康に良いってよく食べてる人いるみたいだけど」

「お姉......?」


 環樺がジトーっとした目でこちらを睨む。


「ん? 他意はないよ? ......ふふっ」

「もぉーー!」

「あはは! ごめんってば、ホントに冗談だから」


 ポコポコと肩あたりを軽く叩かれて抗議される。


「ふぅ。......あ」


 こんなやりとりをしながら鶏肉を選んでると、ふと隣の豚肉が並んでいる所に目が行く。夕方になるとちょうど割引が開始される時間帯で豚肉が割引になっていた。


「ねぇ環樺。豚肉が割引されてるから親子丼じゃなくて他人丼にしない?」

「いいねお姉! むしろそっちの方がいいかも!」

「ふふっ、喜んでいただき光栄です。じゃあ後は醤油が少なくなってたはずだから醤油と、マヨネーズも買わないとかな」


 環樺の大賛成を得て、割引シールが貼ってある豚肉をかごに入れ、必要な調味料などを探したりしつつぶらぶらと店内を回る。

 しばらく回っていると当然お菓子の売り場にも行きつくことになる。いつもなら環樺が真っ先にお菓子を買いたがるはずなのだが今日は大人しい。

 チラッと後ろを付いてきている環樺の方を見ると、名残惜しそうな表情でお菓子が陳列されている棚を眺めていた。

 きっと私が今日、何度か体重についてイジってしまったので我慢しているのだろう。そんな表情をされるとちょっとだけ罪悪感を感じてしまう。


「環樺? お菓子買わないの?」


 こちらから聞いてみることにする。

 すると環樺が一瞬ビクッとしてからこちらに振り向き、取り繕うような笑顔を浮かべる。


「いやぁ、今日はやめとこうかな!」

「いつも買いたがるのに。今も凄く欲しそうな顔してたよ?」

「そんなことないって! ていうかわたし、そんなにいつもいつも買いたいって駄々こねてないと思うんだけど......」

「そうかなぁ。それよりほら、お菓子買っていいから選んだら?」

「だから、今日はいいってば」

「......」


 自分からは買いたいと言わなそうな雰囲気なのでそれならば私が買って一緒に食べてもらうというカタチにしよう。それで断られるなら本当にそういう気分じゃないってことなのだろう。


「じゃあ私がお菓子食べたい気分だから一緒に食べよ?」

「え?」

「何がいい? チョコにする? ポテチ?」

「もぅしょうがないなぁお姉! それなら一緒に食べようかな。今日はお姉が好きなの選んでいいよ」


 環樺なら私が何を考えているか分かっていると思うが、そのうえで素直に答えてくれる。


「それじゃあ今日はチョコの気分かな。えっと、これにしよ」

「いいねぇ」


 どれにしようかとチョコが並んでいる棚を眺めて、私と環樺が一番好きでよく食べるビスケットとチョコレートが一緒になっているものを選ぶ。


「よし、こうなったら開き直るもんね! ほらお姉、ジュースも買いに行こ!」

「そうそう、気にしなくたって環樺はいつも通りがいいんだから」


 ......まぁ、今回に限っては私が言えたことではないんだけど。

 開き直ってウキウキとした環樺と二人で飲むための大きいジュースも選び、買い物も終わりへと近づいていく。


 セルフレジで会計を済ませて買った物で大きく膨らんだエコバッグを持って店の外に出る。

 外はすっかり夕焼け色に染まっていた。


「環樺、一緒に持つよ」

「うん! ありがと、お姉」


 環樺からエコバッグの持ち手を片方もらい、二人で一緒に持つ。

 私も環樺も力は弱いわけではないので一人で持てるし、いつもは交代で持ったりしているが、小さい頃、よくお母さんに「私達も持つ!」と言っては「じゃあ二人で仲良く半分こね」と言われて小さくて軽い買い物袋を二人で一緒に持たせてくれたのが良い思い出になっている。

 その影響もあり、今でもたまに二人きりで買い物をする際にはこうして半分ずつ一緒に持ったりしている。少し子供っぽいと思わないこともないが、こうするのが好きなんだもん。たまには、ね。


「さ、早く帰ってご飯作ろ」

「よーし! 今日も美味しいご飯作るぞー!」


 環樺が隣で大きな声ではしゃぐのを見ながら二人で並んで帰り道を歩き始めた。

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