第53話
「先にコケリウムに入れるフィギュアを探そっか?」
歩き始めてすぐに、パパッと次の目標を決めてしまう。
ゲームはソフト本体だけじゃなく大きめのコントローラーも付属してくるから荷物になるし、それがいいだろう。
「えっと、調べたら100円ショップとか家電量販店とかにジオラマ用の小さいのがあるらしいけど、この建物に売ってそうな場所あるかなぁ」
ここはあくまで大きいとはいえ雑貨店なので、中に誰でも知っているような有名なお店が並んでいるわけではない。
これに関して言えばむしろこの建物を出てしばらく歩いた方が可能性はありそうではある。
「ふふん、あるか分からないからこそ来たって部分もあるからね」
「......え?」
そう言いながらなぜかドヤ顔みたいにする環樺。
求めてる物があってそれを買うために出掛けてここまで来たというのに、発言の意味がよく分からず首をかしげる。
「どういうこと?」
「だって、その方がお姉と長い時間色んな物を見ながら歩けるでしょ?」
「あぁ、なるほど......?」
人差し指を立てて、さも良い考えでしょ、と発表するかのように言い放つ。
「別にそんなことしなくても環樺が満足するまで付き合うけどね」
「お姉......!」
私がそう言うとドヤ顔から感動したような表情へと変わる。
「こほん! まぁ、どうせここで見つからなくてもいつものショッピングモールに行けば見つかるだろうから、あまり気にせず探検しようよ」
「そうだね。ここには一応ゲームも買いに来てるし」
「では、気を取り直して探しに行こー!」
そういうことでそういう物を取り扱っていそうな場所も取り扱っていなそうな場所も気にせずに、環樺と私が気になったものを見る為に色んな所を練り歩くことにした。
「見てみてお姉、このお皿可愛くない?」
「ほんとだ。ちょうど私達が好きな色があるから色違いで買ってもいいね」
「いいねぇ。えっと、お値段は......ぅえ!?」
「ん? おぉ......まぁ、お皿は今使ってる物がいっぱいあるから......」
食器が並んでいる売り場で、ふと目に着いた可愛いお皿に付いている値札を見ると、とても私達のような高校生がこういうテンションでポイっと買えるような金額ではなかったので、鑑賞だけさせてもらってその場を離れる。
「わぁ! マッサージチェアーだ! いいなぁ」
今度は二階へとやってきて、建物の端っこの方で体験できるマッサージチェアーを見つけてテンションが上がる環樺。
「ねぇねぇ、ちょっとだけやってみてもいい?」
「ふふ、いいよ」
「やったぁ!」
私にわざわざ許可を取ってからウキウキでマッサージチェアーに座り、横についているリモコンをポチポチと操作する。
ウィンウィン、ド、ド、ド、と音を鳴らしながら動くマッサージチェアーに「おぉぉ」や「うぁぁ......」「あばばばば」などの変な声をあげていた。
「どう? 気持ちよかった?」
「めっちゃ気持ちよかったぁ~。特にこの足のやつが気持ちいい~」
「よかったね」
「お姉、将来は家にマッサージチェアー置きたいな」
「ふふ、なら一緒にお金貯めなきゃね」
「うん!」
そうしてさらに身体が軽そうになった環樺と色々見て回り、ついに主に置物の類が並んでいるそれっぽい感じの売り場へとたどり着いた。
薄暗い照明に狭くて入り組んでいる通路。商品棚だけじゃなく、柱や天井からぶら下がるこれも売り物だろうか。見るからに雑貨売り場、っていう感じの売り場だ。
「何に使うか分からない物もいっぱいあるねぇ」
「だね。でも一番可能性はありそうだよ」
「ふふん、わくわくするね」
周りを見渡しても環樺が言う通り、何に使うか分からない物、どころかなんと言い表せばいいかすら分からない物もちらほら見受けられる。
それでもたまにはこういう環境でこういう物に囲まれるのも楽しい。
「これトーテムポールっていうやつじゃない? 実物初めて見た」
「だね。こっちのこれも世界のどこかでは有名な物なのかな」
「なんかそういう物って不気味に感じる物が多いけど、大体がその地域では縁起が良い物なんだよね? 不思議だなぁ」
「世界には知らないことが沢山あるね」
「それなら、いつか二人で世界一周旅行とかしたいね!」
「今日はお金の掛かる夢が増えていくね」
多分世界中のお土産だと思われるコーナーを物色させてもらいながらあーだこーだと色々感想を言い合ったり夢を膨らませたりしてから次へと移動する。
「あ、お姉! この辺フィギュアとかあるよ!」
「ほんとだ。小さい物も多いし、もしかしたら」
お店の角の方に行くと、ぬいぐるみやごつごつとしたフィギュアなどが並んでいるコーナーを見つける。
「ねぇねぇ! これ!」
「ん? おぉ~、そんな感じで売ってあるんだね」
「ね。どんな動物にしようか悩もうと思ってたのに、いろんな動物がセットで入ってるんだ」
環樺が手に取っていたのは、箱の中に一般的に思い浮かぶような動物が沢山入っていますよというイラストが描いてあるジオラマ動物のセットだった。
隣には同じシリーズの牛だけ、猫だけが沢山入ったものだったり、海の生物シリーズなども並んでいるけど、今回私達が求める物は環樺が手に取ったやつ一択だろう。
「でも、これなら気分によって変えられていいかもね」
「あ! それなら普段からもっとお世話したいのにって思ってたのも解決しそう!」
「よかったじゃん。私も、環樺の部屋に行く度にどの子が遊びに来てるのかなーって見るの楽しみになるね」
「へへーん。毎日見に来てくれていいからね」
「毎日が大変だろうからってコケリウムにしたんだけど......まぁ、環樺が楽しんでくれるならいいけどね」
こんなに沢山の動物が入っていていろいろ組み合わせて楽しめるうえに、こんなにも私達のわくわくも膨らませてくれて五百円ならとてもリーズナブルに感じるし、これを買うことに決める。
「他にも何か買いたい物ある?」
「う~ん、可愛いぬいぐるみとか人形とかもあるけど、この前あげたばっかりだからまた今度でいいかなー」
「そう? じゃあ、それのお会計して次に行こっか」
「おっけー」
サングラスにバンダナを巻いた立派な髭の店員さんにお会計をしてもらってその売り場から出る。
「ちゃんと見つかってよかった~」
「ついでに色んな物が見られたしね」
「うんうん! 楽しかった!」
「最後にゲーム買いに行って、お昼ご飯のお店探しに行こっか」
「はーい! お腹すいた-!」
「家出てからずっとはしゃいでるからね」
「えへへ」
子供のようにお腹を押さえながらお腹が空いたことを報告する環樺。可愛い。
スマホで時間を確認すると思ったよりも色々見て回って楽しんでいたようで、結構良い時間になっていた。
私もお腹が空いたし、どんどんランチの終わりの時間帯も迫ってきているので早めにここを出た方がよさそうだ。
前に見に来た運動するときに使うようなグッズが売ってある売り場へと真っ直ぐに移動する。
「お~、本当に安いね」
「こっちもちゃんとあってよかったー」
前に何個か在庫があるのを確認していたのであまり焦ってはいなかったけど、ちゃんと残っていて安心する。
流行りが過ぎているのもあってそのゲームのコントローラーのパッケージに60%off! 出血大セール! と書かれている紙が貼ってある。とてもありがたい。
「よーし、これ買っちゃおう」
「それとこのヨガマットも買わない? カーペットの上じゃちょっと痛いし汗が滴っちゃうし」
「確かに。買って行っちゃおう」
「一つずつ買っていく? それとも一緒に使うでいい?」
「もちろん一緒でいいよ」
ということで目的のゲームとヨガマットも手に入れて、今日のミッションはコンプリートだ。荷物は多くなっちゃったけど。
後はご飯を食べたり楽しむだけ。
沢山楽しませてもらった雑貨店を出て、まずはご飯屋さんを探す為に街へと繰り出した。




