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[双子百合]うまれる前から永遠に  作者: 唯凜
私にそういうこと言わないで
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第42話

「明日からが楽しみになっちゃった! じゃあまた明日ね円樺ちゃん!」

「うん! バイバイ、また明日~」


 放課後になりちょっとだけ話をして、隣の子は別れの挨拶を済ませると颯爽と部活へと向かった。

 私はいつも通りに環樺に連絡をする為にバッグからスマホを取り出してメッセージの画面を開く。


「円樺ちゃん、じゃーねー」

「うん、また明日」


 文字を入力してる途中、顔を上げて他の挨拶してきてくれるクラスメイトの子達に手を振る。

 再びスマホに視線を戻した瞬間、シュポッという通知音をならしながら逆に環樺からのメッセージが届いた。


「えっと、なになに......」


 メッセージの内容は——ごめんお姉! 明奈とか他の友達と遊びに行くことになった! ——とのことだった。


「あー、そっかぁ......」


 とりあえず了解の旨を伝えると——寂しくさせちゃってごめんねっ——っていうメッセージと、追加でごめんねって書いた犬のスタンプが送られてきた。


「ふふっ、なまいき~」


 ——寂しくないです。気を付けて行ってきなさい——と返信してツーンとした顔の猫のスタンプを一つ押してからスマホをバッグにしまう。

 他の子は分からないけど、明奈は運動部だって言ってたし平日に一緒に遊びに行けることはそんなにないだろうから、そうやって環樺が友達と遊びに行くのは私も嬉しく思う。

 一緒に帰る気満々ではあったけど、別に、寂しくない。


 さて、することもないし一人で帰ろうと思ってバッグを持って席を立ち、そのまま学校を後にする。


 そして一人でいつもの帰り道を、と思ったけど、いつもとちょっと違う道を通って帰っちゃおうかな。


「ただいまー」


 いつもより少しゆっくり目に歩きながらいつも通らない道をふらふらとして家に帰ってくる。

 手洗いうがいをして、リビングのクロクロにただいまをしてから自分の部屋に行って部屋着に着替える。


「あ~どうしよっかな~」


 今日は特に授業で出された課題もないし、環樺も居ないからすることがないしなぁとこれから何をするか悩む。 

 環樺はご飯どうするかいつ帰ってくるかも分からないから先にお風呂掃除とか家事をしてしまおうか。


 とりあえずリビングに行こうと思い部屋を出て、なんとなーく環樺の部屋のドアが目について、そのままなんとなーく吸い込まれるように部屋主が居ない無人の部屋へと入っていく。

 別に環樺の部屋ですることもないんだけど。


 部屋を眺めると、私が誕生日プレゼントであげたコケリウムが棚の上にあるのが見えたのでそれを眺めてみる。


 水やり過ぎたりしてないかな。


 それから棚の上にあるぬいぐるみ達を撫でてから、棚の引き出しの一つを開けてみる。

 一つ言い訳をしておくと、なにか隠してるものとか恥ずかしい物がないかなって探っているわけではない。決して。

 勝手に開けてはいるんだけど。


 この引き出しにはどんなものが入っているか大体知っているし、環樺も私が把握していることを知っている。ので、開けても問題ない引き出しになってるの。うん。


 どんなものが入っている棚かというと、私達二人の昔からの思い出の物が入っている棚だ。ちなみに私の部屋にも同じような棚が存在する。

 例えば、小学校の頃に一緒に作った押し花の栞だったり保育園時代に描いてお互いに贈り合った似顔絵、一緒に海で拾った綺麗な石とか。小さい頃に見ていた日曜朝の魔法少女もののアニメのグッズだったりも。


 そして一番奥には一緒に手作りしたアロマキャンドルがあった。

 一年と少し前までは二人ともたまにアロマを焚いてリラックスするのが好きだったりしたけど、クロクロを我が家に迎えてからは使えなくなった物だ。

 アロマストーンや液体の物は全部処分してしまったけど、これは一応二人で作った思い出のものになっているから、これと私の部屋の引き出しにあるその二つだけは匂いが漏れないようにジップロックなどで厳重に包んで保管していた。

 使用期限もあるだろうしもう使えはしないんだろうけど。


 しばらく棚の中の物を眺めて懐かしい気持ちに浸ってからゆっくりと引き出しを戻す。


「ん~~~。よいしょっ」


 再びどうしようか考えてから、まぁいいやと思考を放棄して環樺のベッドに仰向けで軽くダイブしてみる。

 別に急いでしなきゃいけないことも何もないし。


 環樺のベッドは久しぶりだな。

 こうしていると、使っているのは同じ型のベッドのはずなのに、全然違う物に感じるから不思議だ。


 やっぱり匂いかな。


 目を瞑って深呼吸すると全身を環樺の良い匂いに包まれて心がフワ~って......安心する......。


 ......

 ............


 すぅ......すぅ......


 一瞬目を瞑るだけのつもりが、いつの間にか意識を手放してしまった。






 ハッと目を覚まして、寝てしまっていたことに少し驚いてからスマホで時間を確認すると、大体30分くらい寝てしまっていたらしい。

 珍しく休みじゃない日にお昼寝してしまった。夕方だけど。


 でもこのくらいならきっと夜に寝れなくなるなんてこともないでしょう。

 良い寝方ができたのか、寝起きなのに頭がすっきりとしているのが感じられる。


 もう一回だけ深呼吸して環樺の空気を肺いっぱいに入れてから起き上がって、伸びをしてから環樺の部屋を出ることにする。

 久しぶりに環樺が居ない時に一人で環樺の部屋を堪能......もとい環樺の部屋で過ごした。


「さてと。それじゃあ、洗濯から始めようかな」


 気分転換もしたことだし、ここから家事へと取り掛かることにして自分の部屋から洗濯物を持って下の階に下りる。

 洗濯機が回っている間に、環樺が遊んで帰ってきてすぐにお風呂に入れるように、お風呂を掃除してお湯を沸かしておくことにする。

 自動給湯のボタンを押してお風呂の掃除道具を片付け、洗濯機の残り時間をチラッと確認してからリビングに戻って掃除機を掛け始める。

 掃除機の騒音が鳴り始めると、クロノとクロエは非難するようにキャットタワーに登っていく。


「ごめんねー、ちょっとだけ我慢してねー」


 そう言いながらこの子達がよく居て毛が落ちていそうな場所を重点的に掃除機を掛けていく。

 フローリングが終わった後はソファ、リビングを掛け終わってスイッチを切り、コンセントからコードを外して廊下のコンセントに付け替えた。

 洗面所やトイレ、階段から私達の部屋の前の廊下までやって終了にする。

 掃除機を持ってリビングに戻り、手を洗ってソファに腰かける。


「ふぅ」


 テレビを点けて、ふらふらとソファにやってきたクロノを膝の上に乗せて撫でてあげると気持ちよさそうにしてくれて、あまりに可愛くてお腹に顔をうずめて思い切り息を吸い込む。

 数か月前はもっと小さかったこの子達も、今では成長して顔いっぱいにうずめられるようになった。


「ん~~~~~~」

「にゃあーー」


 顔をうずめたままお腹にスリスリとすると流石に抗議の声を上げられたのでそこまでにしておいた。


 それからリビングでゆっくりして、窓から茜色に染まった陽が差し込み始めた頃、キィーと玄関のドアが開く音が聞こえた。

 環樺が帰ってきたんだろう。


 お風呂を沸かしてあるよと伝えてあげようと立ち上がって廊下へと出ると、そこにはやっぱり環樺が居た。


「おかえり環樺。お風呂沸かしてあるから——」

「あ! 待ってお姉!!」


 靴を脱いで上がった環樺に声を掛けると、環樺は慌てたようにこちらに手を突き出して静止のポーズを取る。


「ち、近づかないで!!!」

「えっ......」


 ありえない言葉が聞こえてきたことで頭が処理できずに、身体ごと固まってしまった私の横をババーっと素早く通り過ぎて環樺は廊下の奥へ消えていった。


「あ......あ......」


 頭が真っ白になったまま、ふらふらと無意識に自分の部屋へと戻ってベッドにうつ伏せに倒れこむと、現実からシャットアウトされるように世界が真っ暗になった。


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