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[双子百合]うまれる前から永遠に  作者: 唯凜
わたしのクラスでの日常
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第39話

「ここが——で、だから——」


 いつものように授業が始まっている。でも、今までよりももっと難しくなっていく授業についていけるように最近はより一層集中して先生の話を聞いている。


「では、この問題を。そうだな、今日の最高気温から——藤咲、前に出て解いてくれるか?」

「あ、はい」


 先生にいきなり指名されたのでシャーペンを置いて席から立ち上がり、机の間を縫って黒板へ向かう。

 ちょっと不思議な決め方をされたけど。こういうのって普通今日の日付とかで決めたりするものじゃないのかな。

 でも先生方も誰かを選びすぎても選ばなさすぎてもだめだろうと、不公平にならないように指名の仕方も試行錯誤しているんだろうな。


 なんてことを考えながらサラサラ、いやカツカツとチョークで問題を解いていく。


「......どうですか?」

「うん、完璧だ。ここ難しかったと思うけど、流石だな」


 解き終わってチョークを置いて先生に確認すると、正解できていたみたいなので自分の席に戻る。


 そして戻る途中で床にペンが落ちているのが見えたのでそれを拾って一番近くの席の人に確認してみる。


「これ竹下さんの?」

「あ、ホントだ......! ありがと、環樺さん......!」

 

 その席は普段あまり話すことのない竹下さん。

 ペンを手渡すと、受け取った竹下さんは少し申し訳なさそうな恥ずかしそうな雰囲気を出す。


「ううん。ねぇ、このペン可愛いね。わたしの好きな色」


 周りに聞かれないように少し顔を近づけて小声で言う。


「え、あ、はぅ......」


 黄緑色のわたしが好きな色の可愛いペンだったので伝えてみたけど、ペンを両手でぎゅっと隠すように握ってなぜか俯いてしまった。

 どうしたんだろと思うけど、授業中だしこのままそこに居るわけにもいかないので、竹下さんをそのままに自分の席に戻って座る。

 何か悪かった?


「環樺さぁ......」

「ん?」


 席に座ってすぐに隣の明奈に小声で声を掛けられる。そちらを見ると少し呆れたような苦笑いしているような表情だ。


「あんまり見境なくたらしちゃダメだよー」

「? どういうこと?」

「も~」


 とだけ言って前に向き直る明奈。


 なんだったんだろう。まぁいいか、と机の上のシャーペンを再び手に取る。

 ちなみにテストの際にお姉と交換したお姉のシャーペンだ。あの後お姉からも何も言われていないのをいいことにそのまま交換したまま今も使い続けている。

 ということはお姉もきっと今もどこかでわたしのシャーペンを使ってくれているということで、そう考えると気分が良い。






 それから数時間後の体育の授業。

 今日は体育館でバスケをすることになっている。


 授業とかで大人数でやるのは中学二年の時の体育の授業以来ですごく久々だけど、プライベートでは去年の秋頃にお姉と市民体育館で二人で遊んだのが最後だった。

 あの時もこの前のサッカーみたいに一対一で白熱したなぁ。と思い出して授業の始まりの先生の話を聞きながら一人でふふっ、と笑ってしまう。とっさに下を向いたので周りに気づかれていないはず。


「それじゃあ、まずは二、三人で一組になって軽く準備運動してから適当にボール触ってみて下さーい」


 先生の指示で整列していた状況から各地に数人で集まりながらバラバラに散っていく。


「環樺ーあっち行こー」

「おっけー」


 わたしももはやいつも通りに明奈とペアになって開いているスペースに移動を始める。


「よーし! 今日は部活の合間を縫って鍛えたアタシのバスケ力を見せてあげよう!」

「ちゃんと部活やりなよ......」


 明奈はバドミントン部のはずだけど、どういう状況で活動しているんだろうと心配になってくる。


「準備運動めんどくさー」

「はいはい、怪我して後悔しても遅いんだから、ちゃんとやるよ」


 面倒くさがる明奈に準備運動をちゃんとやらせる。


「ん?」


 そこでふと、視界の端に体育館の隅の方で一人でオロオロと困っていそうな人が目に入った。


 あの子は......なるほど。


「最近背中で両手をくっつけてみたいなって頑張ってんだよねー」


 周りを確認してみるけど先生も反対側に居て気づいていないようだった。


「んー! ......あれ? 環樺ー?」

「明奈ごめーん、優美達に混ぜてもらってー!」

「え!? お、おっけぇ?」


 ずっとラケットを使う運動部に所属しているとは思えないくらい身体が硬くて、全然両手が届かず目を瞑ってプルプルしながら苦戦している明奈を、いつも一緒にお昼ご飯を食べている子達のところに押し付けながら、わたしは小走りで体育館の隅に居る子のところに向かう。


「久野さーん」

「......え!? わ、環樺さん......!?」


 手を振りながら近づいて声を掛けると、自分が声を掛けられると思っていなかったのか少し遅れて驚いた反応をされる。

 久野さんも席が結構離れてるので、それほど話したことはないから無理もないかもしれない。


「わたしと一緒にやらない?」

「え、え......!?」

「そういえば今日、いつも一緒に居る井上さんと内村さんが風邪で休みだったよね」

「わぁ、よく覚えてるんだね......」

「もちろん。それで、おせっかいじゃなかったらだけど」

「そんな! 嬉しいです! こちらこそ私でよければ......」

「もう、敬語なんていいから。じゃあストレッチから始めよっか」

「は......う、うん!」


 言葉通り嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうにしながらストレッチを始める。


 バスケで使いそうなところを重点的に、手首や足首をぐるぐるしたり肩を大きく回したり。

 久野さんはわたしに続いて動きを真似ていて、ちょっと見ただけでも明奈と違って身体は柔らかいみたいだ。

 最後に軽く屈伸をして準備運動を終える。


「よし、それじゃあボール取ってくるね」

「あ、うん、ありがとう......!」


 少し離れたところにあるバスケットボールが沢山入っている籠からボールを一つ取って久野さんのところに戻る。


「久野さんって服飾部だったよね。バスケは出来る?」

「え!? そんなことまで知ってくれてるんだ......」


 久野さんは三度驚いた反応を見せる。


「えっと、バスケは授業でやったことがあるくらいで......でも全然うまく出来なかった記憶が......」

「そっか、だったらまず軽くパス交換してみよっか」


 そうして少し距離を開けて、「いくよー」と合図してから、まずは優しくふんわりとしたパスを出してみる。


「あ、え、えい!」


 久野さんの胸元にふんわり向かって行ったボールがパスンと音を鳴らして久野さんの両手に挟まれた。


 そして下手投げで帰ってきたボールをもう一度同じようにパスをして、同じように久野さんが左右から勢いよく挟みこむようにキャッチして少し手を痛そうにする。

 一応キャッチできてはいるものの、これを続けているとキャッチし損ねて身体のどこかしらにぶつかるのは時間の問題だと思う。


「久野さん、キャッチの仕方はね、こうして両手を前に出して三角を作るみたいにして」

「こう?」


 久野さんの隣に移動してボールの取り方を教えてみる。


「うん、そうそう。それでもう少し力を抜いて、外の指はそこだと危ないから広げて――」


 お手本を見せながらそれに倣う久野さんの手に触れながら少し修正してコツを教える。


「あっ、あ......」

「綺麗で大事な手だからね。部活でも使うし。キャッチするときが一番怪我しちゃうからこれだけでも意識してみて」

「ひゃ、ひゃい......!」


 返事する声が裏返ってる。触れた手はさっきより力が入ってガチガチになってるし。そうだよね、いきなり怪我とか言われたら怖くて緊張しちゃうよね。


「ごめんね、もっとリラックスして力抜いて大丈夫だから。もっかい軽くパス出してみるね」


 もう一度距離を取ってさっきと同じように軽くパスをすると、さっきよりも静かにボールが手に収まる。


「そうそう! 上手い上手い! もう一回」


 もう一度やって、それから少しだけパスを強くしてみてもしっかりキャッチしてくれる。


「うん、完璧だね。もしそれでも怖かったら一回でキャッチしようとしないで、床にバウンドさせてから落ち着いて取ったっていいから」


 そうアドバイスしてから久野さんの胸に向かってボールを投げる。


「えっと、こう?」


 手に当てて勢いを殺して、バインと床に弾んだボールをギュッと包むようにキャッチする久野さん。


「上手上手。体育での一番は怪我をしないことだからね。低いパスとかは突き指しちゃうから無理に取らずにスルーしてもいいからね」

「ありがとう、環樺さん......。こんなに沢山気遣ってくれて」

「ふふっ、どういたしまして。少しでも力になれたら嬉しいな」

「! はぅぅ......」

 

 お礼を言われてわたしも嬉しくなって微笑みかけたんだけど、よく見たらあまり慣れない運動をしていたからか、久野さんの顔が真っ赤だった。


「だ、大丈夫? 疲れたよね。少し休憩しよっか?」

「う、ううん! 全然大丈夫、です!」

「そう? なら、まだ時間あるみたいだし、ちょっとだけパスのやり方も教えよっか」

「お願いします......!」

「もう、敬語じゃなくてもいいってば」


 それから少しの時間、パスの仕方、どうすれば強いパスが出せるかとかを軽く触れあいながら教えていった。


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