第32話
「「ただいまー」」
「さあさあお姉! さっそく見せ合いっこしよ!」
「もー、そんなに急がないでってば」
我が家の玄関をくぐってお姉を急かしながらパタパタと急いで靴を揃えて脱ぎ、爆速で手洗いうがいをしてそのままの勢いでリビングへと入る。
誕生日前日の放課後、今日で全てのテストの結果が帰ってきて、それがまとめられた結果票ももらったので家に帰ったら見せ合おうねって帰りながら話していた。
テストが全部返ってきて順位が順位が出るまではお姉とテストの点数についての話はしないでおいた。
ウチの高校は廊下に順位表が貼られたりはしないのでまだお互いに順位も全部のも合計点なども知らない状況だ。
先にソファに座ってリビングの入り口を見つめてお姉が入ってくるのを見守っていると、やれやれといった表情をしながら入ってこちらにやってくる。
「はいこれわたしの!」
「はいはい、ちょっと待ってね」
自分のバッグを漁ってお姉の座る場所の前のテーブルの上にわたしのテスト結果が書かれた小さめの紙の結果票を置く。
お姉もゆっくりとわたしの隣に腰を下ろして膝の上に置いたバッグをごそごそと探り、一枚の紙を取り出してわたしの前にそっと置いた。
クラスが別だからこそ、家に帰ってきてからこうしてソファで隣に並んで座って結果を見せ合いっこするこの時間も楽しめるようになってきているのも成長なのかもしれない。
さっそくお姉の結果票を手に取って確認する。
「どれどれ~。うわぁ順位ちょっと負けたぁ!」
お姉の結果票に記されている学年順位は7位でわたしは9位だった。
かなり惜しかったけど今回はギリギリお姉の方が上だったみたいだ。
「ホントだ。ふふん、私の勝ち~」
お姉がこっちを見てドヤ顔しながら勝ち誇っている。少し悔しいけど可愛いなぁ。
「くそー、流石お姉」
「今回のテストは勝負してなくてよかったね、環樺ちゃん?」
「くうううう......! 次はわたしが勝つから......!」
ここぞとばかりに煽ってくるお姉に何も言い返せずに捨て台詞だけを吐いて、結果票に視線を戻す。
各テストの点数も確認していくと、総合点では勝てなかったけど得意科目ではちゃんと勝てているのを見て心を落ち着ける。
逆にお姉の得意な科目では一つも勝てていないし、二人とも得意な科目もギリギリ負けてしまっていたんだけど。
今回はここの差かな......
「はい。今回は大人しく負けを認めるよ」
「まぁ、この中間テストはほぼ中学のおさらいだからね」
しっかり見終わった結果票をお姉に返すと、お姉もわたしに返してくる。
お姉の言う通り、今回のテスト範囲はほとんどが中学で習ったことの復習で、高校の範囲はどの教科もほんの少しずつしか入ってきていないので全体的に平均点も高めだったらしい。
「次のテストからはもっと大変になるんだろうなぁ......」
「そうだねぇ。科目も増えるし、単純に覚える量がね」
「そっか~そうだよねぇ」
今後は教科が細分化されて科目も増えていくみたいなのでおいていかれないように頑張らなきゃなと思いながらソファに身体を預けて一息つく。
「そういえば、明奈はどうだった? ちゃんとできてた?」
お姉が結果票をバッグに仕舞ってテーブルの横に置いてから思い出したように聞いてくる。
「あーうん、大丈夫だったみたいだよ。思ったよりもいい点数取れたって喜んでた」
「そっか、それならよかった」
「真尋ちゃんの方は?」
「真尋ちゃんも同じ感じ。思ったより順位が高いって喜んでたよ。環樺にもありがとうって」
「皆良い感じみたいでなによりだね」
二人とも喜んでくれているなら一緒に勉強会もした甲斐があったというものだ。
ちなみに明奈は各授業でテストが返却されるたびにウキウキで報告してきてくれた。
各教科の点数は聞かれてないので教えてはいないけど、今日結果票が全員に渡されて、その時に順位だけは聞かれたので教えたら「え......? 高すぎなんだけど......」ってちょっと引いていた。
普段からお姉と宿題とかを一緒にやったりして教え合っているし分からないところがあっても一緒に調べたり、やっぱりお姉と一緒だから勉強もそれほど苦にならない、どころかむしろ楽しくやれているって言うのが大きいかもしれない。
わたしは勉強だけに関わらず、あらゆることでお姉と切磋琢磨して一緒に成長していけること自体に喜びを感じている。
「そうだ、環樺。明日お母さんが16時頃に帰るから誕生日パーティーは18時過ぎくらいからだって」
お姉もわたしと同じようにソファに身体を預けて、横にあるクッションを抱えてリラックスする態勢になり、テストの話題を終わらせて明日の予定を話し始める。
「はーい。お父さんは何時帰り?」
「お父さんは20時頃になるみたい」
それならきっと誕生日パーティーはゆったりまったり時間を過ごすだろうから終わるまでには余裕で帰ってくるだろう。
その後はお姉とのプレゼント交換もあるし、寝る時間になるまで二人きりで誕生日の夜の時間を大切に過ごしたい。
数日前から、明日のことを想像するだけでこんなにも楽しかったんだから誕生日ってすごい。
「んふふっ、楽しみだねーお姉」
「そうだね、大切な日だからね」
隣のお姉に向かって笑いかけると、お姉もこっちを向いて微笑み返してくれる。
「どんなものが食べれるかなー」
「それも楽しみだけど、まずは今日の夜ご飯の支度しよっか」
よいしょ、と言いながらソファに両手をついて立ち上がろうとするお姉の手首のあたりを掴んで止める。
「まだ帰ってきたばっかりだし、もう少ししてからでいいじゃ~ん」
「でも早くやっちゃってご飯食べてから部屋でゆっくりする方がいいんじゃない?」
「今日の夜はいつもより長いんだからさ。早くご飯食べちゃって暇な時間が長いとお姉眠くなっちゃうでしょ」
「確かにそうかも......」
わたしはお姉に誰よりも先に誕生日おめでとうを言いたいし、お姉にも誰よりも先におめでとうを言ってほしい。
それだけは絶対に誰にも譲りたくないし、お姉もそう思ってくれていて、誕生日の前日の夜は日付が変わるまで自主的にお姉も頑張って起きていてくれる。
とは言っても、わたしもお姉もあまり周りの人に積極的に誕生日を教えたりもしないので、昔から小学校から仲の良い人とかじゃないとそもそもわたし達の誕生日を知ってはいなかったり。
小さい頃は授業とかイベントとかで強制的に周りに誕生日を知られる機会があったりしたけど、中学以降は話題にならなきゃ周りに言う機会もないし。
もちろん誰にでも祝われるのは嬉しいしありがたいんだけどね、どうしても年に一回のこの大切な日はお姉と二人での時間を大切にしたいなって......
「それでも、とりあえず服は着替えなきゃでしょ。ほら立った立った!」
「うあぁぁぁぁぁぁ......」
お姉の手首を掴んでいた手を逆に反対の手で掴まれる。そしてぐぐーっと引っ張られて強制的に立たされてしまう。
「行くよ、バッグ持って」
「はぁい」
お姉に言われるままに自分のバッグを手に持つと、珍しくそのまま手を離されることなくお姉に引っ張られていく。
リビングを出て階段を上がっていき、部屋の前に来てからようやく手が離される。
「部屋でゆっくりすると時間忘れちゃうからリビングに集合ね」
「はーい」
お姉の体温が離れていき、そのまま部屋に入っていって姿も見えなくなる。
「さてと、着替えてきちゃいますか」
部屋に入ってすぐに制服から部屋着に着替えて、早くお姉に会いたくて急いでリビングに向かった。
お姉はまだ居なかったけど。




