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[双子百合]うまれる前から永遠に  作者: 唯凜
私の知らない私の一面
12/15

第12話

「以上でホームルームを終わります。皆さんさようなら」


 帰りのホームルームの先生の挨拶が終わり放課後が訪れる。

 高校生活を送るうえで毎日のように当たり前にやってきていたこの瞬間。ここまではいつもと同じだけど、今日はここからが私にとって少し特別になる。


「じゃあ円樺ちゃん、今日はあたし部活の体験入部に行ってくるから!」


 ホームルームが終わったと同時にいそいそと支度を始めていた真尋ちゃんから声を掛けられる。

 そちらに向き直って笑顔で言葉を返す。


「うん。部活、いいところが見つかるといいね!」

「そうだね! じゃあばいば~い!」

「また明日ね」


 いつもならこれから一緒に帰っている真尋ちゃんがスクールバッグを背負ってトタトタと元気よく教室を出ていった。

 なんか、背負っているスクールバッグがランドセルみたいに見えてしまった。


 見送ってすぐにスマホが鳴ったのでバッグから取り出して画面を確認すると環樺からメッセージが届いていた。

 ーーごめん! 今日日直で学級日誌を最後ちょっとだけ書いて先生に提出してから行くから少しだけ待ってて! そんなにかからないから! ーーとの事だった。

 そういえば私もそろそろ日直が回ってくるな、と思いつつーー急がなくていいからちゃんと書くんだよーーと返信をする。


 環樺の教室に迎えに行ったら書くのを邪魔して周りに迷惑をかけてしまいそうだし、そんなに時間がかからないならこの教室で待ってるよりも昇降口の方が職員室からすぐだから......でもこの時間は人の出入りが凄そうだし校門で待っていよう。そう考えてーー校門のところで待ってるねーーと追加でメッセージを送信する。

 すぐに環樺から了解の旨のメッセージと犬の可愛いスタンプが返ってきたのを確認してスマホをバッグに戻して一息つく。


 周りを見てみると、一人で帰る準備をしている人だったり、もう部活を決めて移動しようと準備をしている人、部活に友達を誘っている人や、帰るそぶりを見せずに周りとお喋りしている人だったり様々だ。

 皆、新しい環境の中で自分の居場所を確立しようと頑張っている。


「よし」


 ぼーっとしすぎて逆に環樺を待たせるなんて事がないようにさっさと移動してしまう事にする。


「みんな、また明日ね」

「バイバイ藤咲さん」

「じゃーねー」


 周りの人にあいさつをして何人かから返ってくる。バッグを肩にかけて教室を出る。

 人の波に流されながら靴を履き替えて校舎を出て、校門で環樺を待つ。門から出て帰っていく人達を眺めつつ、何かしながら待っていようかと思ってスマホを取り出そうかなと思い始めたくらいの時に向こうから走ってくる環樺が目に入った。


「お姉~! お待たせ~」


 環樺もこちらに気づいたようで、ぱぁっと花が咲いたような笑顔になって、走って手を振りながら声を掛けてくる。


「思ったより早かったね」


 まだ待ち始めてから三分くらいしか経っていない気がする。ずいぶん早いが、私の目の前まで来てふぅと一呼吸おいて、走ってきた影響で少し崩れた前髪を整える。


「いやぁ、早くお姉と一緒に帰りたくて急いで来ちゃった」

「学級日誌、ちゃんと書いたの?」

「書いたよ! も~信用ないなぁ」


 環樺が不満をアピールするようにぷくっと頬をわざとらしく膨らませる。

 昼休みとは打って変わっていつも通りのよく喋る表情豊かな環樺だ。いつもの調子になった環樺に対して私もいつものごとく、膨らまされた環樺の頬を人差し指でぷにっと押すと、ぷすっと口から空気が抜ける。するとすぐににへっと笑って柔らかい表情になる。


「私が環樺を信用してないわけないでしょ。でも早すぎたから大丈夫なのかなって。私まだ学級日誌書いたことないからどういうものなのか知らないし」

「えへへ、そんな難しいものでもなかったしね。それより帰ろっお姉!」

「そうだね」


 環樺がくるっと回りながら帰り道の方向に動き出し、バッグを私がいる方と反対の肩に掛ける。

 私もそれに続いて環樺の隣に並んで歩き出す。


「ついにお姉と一緒に帰れるの嬉しい~!」

「私もだけど、そんなに喜ぶなら昼休みの時にもいっぱい話したらよかったのに」

「うぐ......」


 思っていた事を口に出すと気まずそうに顔をゆがめる。これはいじったら面白そうだなと少しうずいてしまう。


「あ~あ、私は昼休み、環樺と会えて嬉しくてもっと話したかったのになぁ」

「わたしだって嬉しかったけどぉ......」

「寂しかったなぁ......」

「うぅ......。ごめんなさい」


 あからさまにバツが悪そうにしゅん、と縮こまってしまう環樺が可愛くて思わず笑ってしまう。


「ふふふっ。それで、アレは何だったの?」

「誰も居なさそうな所をね、気分転換で散歩してたらお姉を見つけちゃって」

「うん」

「その瞬間、今すぐお姉の成分を補給しなきゃってなっちゃって、でも人に見られるのはマズいからどこかに入ろうと思って......」

「それで?」

「無我夢中で連れ込んだ先がトイレだったの。でもねお姉! ホントにもう夢中だったの! そしたら中に人が居てもっとパニクっちゃって」

「ふ〜ん? それで喋らなかったのは?」

「怒られると思って......」


 どうやら悪いとは思っていたらしい。


「あはは! 私も嬉しかったし怒らないって。どちらかと言えば、せっかく会えたのに全然顔を見せてくれないし話してもくれない方が不満だけどね」

「確かに、そうだよね」

「あと、今度またああいうことをするにしてもトイレじゃない場所の方が良いかな」


 私がそう言うと、それまで申し訳なさそうにしていた環樺が元気を取り戻してこちらを見る。


「それってまたしてもいいって事!? それじゃあどこか良い場所見つけておくから! そこに呼び出すね!」

「そう言う事でもないんだけど......」

 

 まぁいっか、私も嬉しいし。


 再び調子を取り戻して楽しそうに歩く環樺を見ると、それでもいいかと思ってしまう。


「よーし! 学校生活の楽しみが一つ増えた~」

「それと、いつも一緒に帰ってた友達がそろそろ部活に入るみたいだからこれからは一緒に帰れることが増やせるかも。環樺次第だけど」

「わたしの友達もそろそろ部活に入るって言ってた! そっかそっかぁ、良い事が続くなぁ、んふふっ」

「でも、これからも仲良くしてくれてる友達は大切にしないとね」

「うん! それはもちろん!」


 環樺が元気に返事をして、嬉しそうに鼻歌を歌いながら数歩だけ軽くスキップして先に行く。


 私も環樺も各々のクラスに少しずつ馴染んできて、これから帰りも一緒になることが増えていくだろう。今までが会えなすぎだったし、少しずつ色々なことが良いバランスになってくれば今日のようにぼーっとして先生に注意されたりする事もなくなっていくだろう。

 そしてクラスメイトに変に勘違いされていじられて恥ずかしい思いをする事も......


 それは忘れよう。


 数歩先をルンルンで歩いている環樺に小走りで追いついて隣に並び、肩で軽くぶつかる。

 環樺の身体が少しだけ揺れて、その返ってくる勢いで私の肩にぶつかり返してくる。


「ふふっ」「くひひっ」

 

 二人で笑い合いながら家に帰ってからの事を話したりしながら帰り道を歩いて行く。


 やっぱり環樺と二人は落ち着くなぁ。


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