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短めですいません
〜四十九院 沙羅〜
少し前に私が通う学校へ異世界人なる人物が来たのはまだ記憶に新しい。
ニ年生へと進級して桜も散り始めた時期に来たと思えば、あれよあれよという間にワタシの婚約者である京花院影継様と仲良くなっていた。
それはもう最初の頃は嫉妬に狂いそうになりましたが、不知火唯が起こした襲撃事件。あの報せを聞いたときは生きた心地がしませんでしたが、話を聞けば田中さんのおかげで無事に切り抜けられたとか。
その少し前からでしょうか。
影継様がよく笑うようになったのは……
も、勿論私と一緒の時も笑っては下さるのですが、その笑みとはまた別の、ほらっ今の口を大きく開けて笑うお姿なんて初めて見ましたわ!
今日は私を含め三人で影継様の自室にてディナーを楽しんでいる最中ですの。
食事の開始の合図にベルを鳴らすも完全防音の部屋なので外へは聞こえなかった時の影継様のお顔もまた愛おしい。
まあその前に田中さんにからかわれたのはいただけませんが、影継様に抱き寄せられたのでチャラして差し上げます。
今まで勿論抱き寄せられたことも、抱きしめれた事だって何度もありましたが人前と言うの初めてでした……いいですね、こうなんと言いますか俺の女だって強調されてるみたいで。
それにしてもいつも学校では髑髏の仮面をつけていて素顔を見たことありませんでしたが、田中さんは顔だけならそこいらのアイドルより整ってなくて?
「仮面を外したら大層オモテになるのにどうして外しませんの?」
気がついたら思考が口に出ていた。
その問にも気分を悪くする様子もなくただ"恥ずかしいから"と淡々と答える田中さん。
向こうの世界ではお付き合いした事がないと先程影継様との会話で知りましたが、向こうの世界はどうやら男性に厳しい世界のようですわね。
「まっ、二つの世界をひっくるめても影継様が一番いい男だというのは揺るぎない事実ですが!」
「沙羅、そう言ったことは二人の時に言ってくれ。太郎の前だと流石に恥ずかしい」
私ったらまた思ってた事を口に出してたのかしら。失礼しました。でも田中さんと話すようになって影継様の表情が生き生きしているのが嬉しいのです。
「おい、イチャイチャするのは俺が帰ってからにしろ」
そうして楽しい食事の時間は気が付けば終わりを迎え、今はそれぞれ食後の珈琲を飲んでいる。
そんな中、最初に切り出したのは影継様。
空気が重くなったのを感じた私は席を外すため立ち上がると田中さんに止められてしまった。ゆっくりと席へ座りなおすと影継様も背筋を伸ばし真剣な表情へと変わる。
一呼吸置いて珈琲で唇を濡らす田中さんは"さてどこから話そうか"と少し悩むと静かに語り始めた。
まずは向こうの世界の常識。
出来るだけ簡単に簡潔に自分の主観が入らないように説明していただけとてもわかり易かったです。
勿論伝聞等で異世界の情報も少しだけ知っていましたが、当人から聞くのでは全然違いますのね。
初めは田中さんが小学生の頃のお話。
彼は一年生から六年生までの間ずっと一人の女の子を想っていたという。そんな夢みたいな話が本当にあるのだと驚いていると声のトーンが一段下がる。
そこからの話は本当に淡々とただ機械が朗読しているような、一切の感情を捨てた声で語られた。
隣に居る影継様の雰囲気が変わったのを察し、ふと視線を向けると拳を強く握っていて何かに耐えているかのようです。
正直私もなんと声を掛ければいいのかわからないままでいると"次は中学生の時か"と続きを語ろうとする田中さん。
「他にも……ありますの?」
つい出てしまった言葉に"残念ながら"と苦笑いを浮かべる彼は本当に先程まで楽しく会食していた人物と同じなのかと感じる程の変わりようですが
「続けてくれ太郎。お前が話して楽になるのなら俺達は全てを受け止める」
「……わかった」
こういったやり取りは男性の羨ましいところです。
「私も同じ気持ちですわ。特に何か出来る訳では御座いませんが、真剣にお話を聞かせていただきます」
でも今は目の前の男性の話を受け止める事に集中しないとですわね。
そして語られた中学生時代のお話。
一年生から三年生の間、一途に相手を想いそれを伝える為に呼びたした話は正直ドキドキしてました。最後まで話を聞くまでは……
「なんで四十九院さんが泣いてるの?」
その声にハッとなり、そっと目尻に指をあてると雫を拭う感触が伝わってきた。
自分の涙に戸惑っていると
「この辺にしておこうか。少し楽になったよ影継、四十九院さん。二人共ありがとう」
そう言いながらゆっくりと席を立とうとする彼の腕を掴んだのは影継様。
「まて太郎。まだ俺は……俺達はまだお前の話を聞き終えてない」
「モノ好きだなお前等も」
立ち上がりかけていた腰をもう一度椅子へ戻すと更に感情を殺した声で続きを話し始めた。
今度の話は彼のご家族の話。
小学生中学生と重たい話でしたので、ここで漸く温かみのある話が聞けると思っていた私を本気でひっぱたきたい。
そうして一人の女の子を助けた際、トラックに轢かれこちらの世界に来たお話でこの時間に終わりが訪れた。
「とまあ、よくある話さ。すまんなこんなつまらん話を長々と聞かせてしまって」
今度こそ終わりだというかのように席を立つ田中さん。私達が返事をするより前に帰ろうと出口へと足を進める。
「待て!」
今まで聞いたことのない程大きな声で影継様が田中さんの歩みを止める。
「おいおいまだ俺に何か話せと言うのか影継? これ以上は何もないぜ。まさか俺の好きな人でも聞きたいのか? どーしよーかなー迷うなー」
「ちゃかすなこの大馬鹿者!」
「だからそんな怒るなよ影継。冗談だ冗談」
「……本当はまだあるのだろう?」
その影継様の一言で場が凍ったのがわかりました。
作者の小話
「今日からよろしくお願いします」
そう言って挨拶してきたのは当時の作者よりニつ下の女性社員。このド田舎の町が気に入ったらしくわざわざ転職してきた変り者だ。
身長は同じく一七〇センチ。ちょっとぽっちゃり体型で髪は黒のロング。彼氏は前の街に居るとの事。あと素晴らしい胸部をお持ちでした。
驚いたのが狭い通路をお互い背中合わせで通ろうとすると"ビチャビチャ"と水が溢れる音が。
どうしたの?と尋ねると自分の胸部で水が入ったタンクのコックを押してしまったと説明されてリアクションに困った作者です。
凝視してゴメンナサイゴチソウサマデス。




