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俺が反応したのが写真に写っていた猫だとわかると安堵したような、それでいて納得出来ないという複雑な表情をする鈴木さん。
「別にあたいは最初からクルミの事って知ってたし」
と、自分の髪をクルクル指で回しながら呟いている。
そうかあの子の名前はクルミと言うのか。
いつか鈴木さんに頼んで是非抱かせて頂きたい。あの長い毛を両腕でしっかりと抱きしめれると考えただけでご飯三杯はいけちゃうね。
そんな妄想をしていると次の授業を報せる鐘が鳴った。
"太郎、昼は沙羅と三人で学食でもどうだ?"
そんな連絡が影継から来たのは丁度午前最後の授業前。俺はそれに"了解。それじゃ学食前で"と返信する。
授業が終わるといつもはゆっくり学食へ向かう俺だが、自分でも驚く程今日はやけに足が軽い。廊下に出ると丁度二人を見つけたので一緒に学食へ向かうことに。
「なる程、普通のメニューも美味いものだな」
俺と同じく影継は唐揚げ定食。その隣では綺麗な箸使いで鯖の塩焼き定食を食べている四十九院さん。
彼女は元々普通の家の出らしく、小学生の頃影継と出逢いコイツに相応しい女性に成るべく色々マナーや勉強を頑張り今の場所を勝ち取ったらしい。
「好きな人の為に……か」
「ん、何か言ったか太郎?」
"何でもない"と話を以前河原での影継とのやり取りにすり替え四十九院さんと一緒に影継をイジる。
俺の中の名ゼリフ「お前に沙羅は渡さん」を嬉し恥ずかしそうに聞いている四十九院さん。それに腕を組んでそっぽを向く影継。
「ああ、楽しいな」と、久しぶりの感情に浸っていると四十九院さんから爆弾が投下された。
「そう言えば田中さんはもうお相手は選ばれたんですの?」
えっ?
俺が掴んだ唐揚げを口に運ぶ途中で固まっていると
「沙羅!」
影継に名前を呼ばれた彼女は一瞬で状況を理解したのか"失礼致しました"とわざわざ席を立って腰を折る。
"気にして無いから座ってくれ"と返答すると、影継が心配そうな顔で"すまんな"と謝ってくる。
「だが」
この話はここで終わりと思っていたのは俺だけらしく、いつもより強い口調で影継がこちらを見てくる。その視線は口調とは裏腹に心配そうな、不安そうな複雑な表情だ。
「……だが、俺も心配なのだ。お前は良いやつだ。俺の最高の友人だ。だからこそ言わせて欲しい」
「待て」
俺も馬鹿じゃない。こいつ等が本気で俺の事を心配してくれてる事くらい分かってる。だけど……
「流石にここは人が多い。よかったら今度影継の家で話さないか?」
ついでにその時ご飯食べようぜ。
そんな俺の意見に二人共納得してくれたのか、お互い頷くと
「わかった。それじゃ早速今晩俺の家に招待しよう」
急な誘いだったが二人の真剣さに圧されて現在俺は影継が用意した車に乗って京華院邸に向かっている。
隣には細田さんが同乗しているが彼女は今回はディナーには同席しない。完全に仕事モードでの付添だ。
何となく細田さんには聞かせられない話っぽいしな。
ぼーっと外を眺めていると着いたのか、ゆっくりとスピードを落として車が止まる。
運転手にエスコートされて着いた先には正に大豪邸と言わんばかりの家があった。テレビで紹介される芸能人の何億円とかいう家が小さく見える。
扉を潜ると両脇にメイドさんがズラリ。
何人か見た事がある顔もちらほらと……ああ、影継の嫁候補の子達か。
しかし影継もわかっている
メイド服が俗に言う秋葉でよく見るミニスカではなく、イギリスのクラシックタイプで裾が足元まであるやつだ! 確かにミニスカ黒ニーソプラス絶対領域も捨てがたいが、それはあくまで商業用だ。実際身近に置くならクラシックタイプだろう。
一人満足げに頷いていると何人かのメイドさんに変な目で見られてしまったし、後ろの細田さんからの無言の圧も凄い。
まあ細田さんはメイド服よりエプロン姿の方が似合うから個人的にはそれで満足である。
「ようこそ我が家へ」
全然変なことなんて考えていなかったが、影継の言葉で我に返る。隣には着飾った四十九院さんが完璧に正妻ポジションをキープしている。
そんな二人に連れられて着いた場所は影継の自室だと言う広い部屋。俺が住んでる部屋の数倍はある。
因みに細田さんは隣室で待機中だ。
「この部屋での会話は外へは聞こえないから安心しろ。窓ガラスもマジックミラーだし防弾だ」
キョロキョロと部屋を見渡す俺が不安そうに見えたのか影継が説明してくれた。
「へぇ。それは捗るな色々と」
仮面を外しながらニヤリとしてしまう俺は決して不健全では無い筈。このくらいのお年頃の男子は皆こうだろ?
「なっ、何をおっしゃいますの田中さん!」
それに反応したのは顔を真っ赤にしている四十九院さん。視線はチラチラとベッドの方に向いてたり、マジックミラーと思しき窓ガラスを行ったり来たり。
マジかよ! ちょっと冗談でからかうつもりが……
「いや、勉強とかするのにはいい環境かなと思っただけなんだが」
まあこの辺でからかうのはやめておくか。
「そ、そうですわ。この部屋で勉強しますと集中出来ますのよ」
「保健体育の?」
「そうそう保健体育の……って違いますわ!」
ヤバい、この子面白い。
「その辺でいいだろう太郎。あまり沙羅をいじめてくれるな」
そう言いながらそっと彼女の肩を抱き寄せる影継からは大人の余裕を感じられる。
くそっ、これが文字通り経験の差というやつか。
冗談もそこそこに、今日のために準備したというテーブルにつくと影継が卓上ベルを鳴らす。
「今日は我が家のシェフのおまかせコースを楽しんでくれ」
「それは楽しみなんだが影継さんや」
「なんだ? 改まって」
「ベルの音も外には聞こえないんじゃないか?」
………………
そっと影継が立ち上がると扉を開け、外に待機していたメイドへ料理を持ってくるよう指示を出し無言で席へつく。
気まずい空気のまま始まった食事だが、料理の美味しさもあり自然と会話は増えていく。
「ありがとう影継、四十九院さん。今日は楽しかったし料理も美味しかった」
食後の珈琲を飲みながら感謝を告げる。
「それはこちらのセリフだ馬鹿者め。俺こそこんな楽しい食事は初めてだ。太郎、お前に会えたことに感謝する」
ほんとコイツったら恥ずかしげも無くよくこんなセリフ言えたもんだ。
そしてカチャリ、と珈琲カップを置く影継の雰囲気が変わるのがわかった。
「さて太郎。食堂での話の続きだが……いいか?」
「ここまで来て駄目とは言わないさ」
「わかった。沙羅、お前は席を外せ」
その言葉に四十九院さんはスッと立ち上がるが、それに俺はストップをかける。
「いや、四十九院さんにもにも聞いてほしい……のだと思う」
視線を彼女へ向けると少し困った表情を浮かべるも"田中さんがいいのであれば"と席へ戻る。
俺は深く息を吸い込み一度目を閉じ、ただ淡々と昔の出来事を語る。
作者の小話
「もっと私を叱ってください」
ふとこんな子もいたなと思い出したので次回からちょこちょこ書いていきます。
あれ?作者はまともな女性と出会った記憶が……




