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おかしい。
確か俺が細田さんに膝枕をしていた筈なのに、いつの間にか寝てしまっていたらしく起きたら逆に細田さんの膝の上だったのだ。
三時に起こすのでとか言っておきながらこの失態。
窓から入り込む光は既に人工の灯りへと代わっている。
"やらかした"と思うのもほんの数秒だ。寝てしまったものは仕方がないので後で謝ろう。それよりも今はこのシチュエーションを楽しむのが先決だ。次なんて無いのかもしれないのだから。
幸い細田さんからは小さな寝息が聞こえてくる。
三流であればこのままもうひと眠りするだろう。
ニ流なら相手が起きるまでこの態勢のまま幸せを感じることだろう。
一流であればこの柔らかい太腿を撫でつつも、相手を起こさぬようギリギリを楽しむというもの。
紳士であれば? 反対側、今で言うなら細田さんの方に顔を向けてからのムニャムニャ起きてないですよーアピールからの頭の位置をなおす為にスリスリがベストアンサーだろう。
相手が細田さんでなければそれも良し!
しかしここにいるのは男性警護のプロであり感情の色が観えるという強者である。そんな小手先の技は通じないと思ってた方がいいだろう。
ならここでの最適解とは……これだ!
「うーん」
そろそろ目を覚ましますよーと一旦アピール。
「うーん」
ちょっと体を動かして次起きますよーアピール。これで細田さんの視線は俺に向いている筈だ。
ここで両手を上げてからのパイタッチはまだまだ素人。玄人はここからが違うのだ。
「うーん」
ゆっくりと細田さんから離れるように動いていく。ここはソファの上なので少し高さはあるが下は柔らかいラグが敷いてあるので問題なし。
大丈夫とは言っても護衛対象がソファから落ちて頭でも打ったら大変ですよ細田さん!
そう、俺は細田さんとの関係性を利用したラッキースケベを期待しているのだ。どのくらい膝枕されていたかは定かではないが十分に足は痺れているとみていい。
そんな状態で俺が落ちていくのを止めようとするとあら不思議。床に転がり重なり合う二つに影が……
「大丈夫ですか太郎さん!」
まさか本当に寝てたとは思わなかったし、身じろぎしても起きてなかったのね細田さん。
床で頭を打った音で目が覚めたのだろう、慌てた声が頭上から聞こえてきたと思ったら
「あっ」
あっ?
細田さんは本当に足が痺れていたらしく立ち上がろうとしたがそのまま倒れ込むように俺に覆い被さってきた。体勢的にはプロレスのカウントをとるような感じかな。
俺は仰向けで細田さんがうつ伏せ状態で俺にのしかかっている。まあ俺が思ってたヤツとは違うけどこれはこれでアリだ。
「すいません太郎さん。直ぐに退きますから」
腕の力だけで俺の上から退こうとする彼女に出来る事と言ったらこれくらいしかないだろう。
「こちらこそすいません。僕も退きますから」
そう言いつつ立ち上がるフリをして触るのは勿論!
「あっ、太郎さん。そこは今触っちゃだめです……凄く、敏感に……なってるので」
そう、痺れている細田さんの両足だ。
そこから同じような攻防が繰り広げられたが、終に俺がギブアップ。
お互いワチャワチャと動いていたのでじんわり汗もかいてるし息も少し乱れ、俺のお腹の上で上下する細田さんの腹部が少し熱を持っていてさらに体温を上げている。
「悩み事は吹き飛びましたか?」
正直こんな体勢で聞くような質問でもないが、なんとなく今じゃなきゃ駄目な気がした。
当の細田さんはと言うと、体勢はそのままに顔だけをこちらに向け笑顔で……
〜細田 瞳〜
「大丈夫ですか太郎さん!」
気がついた時には既に太郎さんが頭を抱えていました。
私が膝枕をしてもらってすぐに太郎さんが寝てしまったので、彼を起こさぬように今度は私が彼に膝枕をしてみたがこれがなかなか素晴らしいのです。
正直男性に膝枕をされたいと言う女性は数多く居ますが、どちらも経験した私に言わせてもらえば断然こっちが幸せを感じれます。
自分の膝の上で好きな人が無防備にスヤスヤと寝息をたてて寝ているのを見放題なんて、どこかのAmazoonPrimeなんかより断然こっちです。
しかしそんな幸せを見ていると私も眠くなってしまい……ああ今寝てしまったら駄目なのはわかってるのですが抗えません……
と、気がつけば太郎さんがソファから落ちた音で目が覚めました。
勿論彼の安否を確認するべく立ち上がろうとしましたが、思いの外長時間の膝枕に私の足が痺れていた事に気が付かずそのまま太郎さんに覆い被さるように倒れてしまいました。
直ぐに立ち上がろうにも太郎さんが邪魔をして立ち上がれません。
嘘です。
正直太郎さん相手であればこの体勢からでも三秒あれば制圧出来ますし、痺れも耐えれますが今はこの時間を楽しみたいと言う我侭な私がいるのを感じます。
結局太郎さんが力尽きたところでこの時間も終わってしまいました。勿論私としてはこのまま彼の体温を感じていたいのですが頃合いですね。
「悩み事は吹き飛びましたか?」
両腕に力を入れ立ち上がろうとする私に飛んできた質問。恐らく彼は私が何に悩んでいるかまでは知らないけど、彼なりに私を励ましてくれていたのかもしれない。
そうじゃなきゃいきなり膝枕なんて伝説級の御褒美をしてくれることも、こうやってただ戯れ合うこともしてはくれなかっただろうに。
いや、もしかしたらただ単にラッキースケベを狙ったと言うことも……いえいえそんなことを考えては太郎さんに失礼というもの!
体勢はそのままにゆっくりと太郎さんへと視線を移す。
ああ、この"色"は……
久しぶりに自然と笑えた私がそこにはいた。
「太郎さんのえっち」
作者の小言
「こんな気持ちになるくらいなら出会わなきゃよかった」
はいこれ、実際作者が言われたことにあるセリフです。田舎町の隣人にですが。正直このときは「このセリフ実際言う人いたんだー」くらいの気持ちだったと思います。
その後
「あんたのこと人としてじゃなくて、男として好きだったのかも」
そう言い残し部屋を出ていきました。
ビール瓶片手に。
ロマンのロの字も見当たらない話ですいません。




