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本日二話目。ちょっと短めですが。
〜京花院 影継〜
結果から言うと俺達はあの絶望的な状況から逃げ切れた。正直今でも信じられない。頬を抓ってみるが……痛い。
「それではご協力ありがとうございました。護衛の方が到着されるまでこちらでお待ちください。尚、国の威信にかけて暴漢は豚箱へブチ込みますのでご安心を」
綺麗な敬礼をした警官に"ありがとう"と言うと、驚いた顔をした後"仕事ですので"とだけ言い残して退出して行った。
今いる場所は保護された小さな交番の一室だ。
そう言えば"ありがとう"か。自然とそんな言葉が出て来る日が来ようとは思いもしなかった。コイツと会うまでは。
俺の横には背もたれに体重を預けて天井をボーッと見ている友人が。
本当に太郎は凄いな。俺はあの時、不知火妹とその取り巻きに囲まれた段階で色々諦めていたのに。コイツときたら自分より強い相手にあの手この手で突破口を開いてみせた。まぁ内容はあれだが……
「本当に助かったんだな俺達……」
走りながらこれでもかと言うほど声を出して助けを求めた。その結果、どんどん一般女性が集まってきて追いかけてきた奴らを足止めしてくれたのが幸いした。急に太郎が叫び出した時は狂ったかと驚いたが、俺も恥を捨てて叫んだ。
そうして騒ぎが大きくなった頃、先程の警官に保護された訳だ。
ただ気になるのは不知火姉を捕まえる事が出来るのかが不安だが、そこは国家権力に任せるしかないか。
先程の呟きに何の返答も無いのも恥ずかしいので、隣で呆けている友人の肩を小突くとグラっとそのまま倒れてしまった。
「おい、大丈夫か太郎!」
まさか軽く押しただけで倒れるとは思わなかった。急いで立ち上がり手を差し出す。
「悪いが引っ張り上げてくれないか? 上手く立てない」
そう言う太郎の足は産まれたての仔鹿の如くガクガクと小刻みに震えていた。
緊張の糸が切れたのだろう。グッと力を入れて太郎を引っ張り上げると勢い付きすぎて俺の方に倒れかかってきた。
急いで押し止めようとするも疲れからか俺も踏ん張る事ができずに二人して倒れてしまう。
「大丈夫ですか?」
椅子を巻き込んで派手な音をたてたからか先程の警官が慌てた様子で扉を開けて
「……失礼しました」
去っていった。最初の敬礼よりなんか力が入っていたのは気のせいと思いたい。多分太郎が俺を押し倒したと思ったのだろう。
「いい加減起きろ太郎。このままじゃ入ってくる人達に勘違いされてしまう」
未だ俺の上から退こうとしない男を疲れた体に鞭を打ちながら起こし再び椅子へと座らせる。
「すまんな影継」
「こっちのセリフだバカタレ。そもそもの発端は俺にある。お前は巻き込まれただけだ……こっちこそすまなかった」
それっきりお互い言葉をはっする事なく時計の針の音だけが静かに刻まれる。
……本当にこのままでいいのか京花院影継。お前のせいで一人の男の未来が失われようとしたんだぞ! "すまない"とたった一言で終わらす気か? それが、それが友達に対する礼だというのか……いや、怖いんだな俺は。今回のことで太郎から嫌われ距離を置かれるのが。
でも、俺が感じている恐怖なんてアイツが感じたものに比べればクソみたいなものさ。正直不知火姉にマウントポジション取られたら失禁してたかもしれん……いや言い過ぎた。そこまではしない、多分。
「太郎……俺達ってさ」
"友達だよな"
その一言が出てこない。
いつからこんなにも臆病になってしまったんだ俺は。こんな情けない姿を沙羅が見たらなんと言われるか。"私の知っている京花院影継はこんな軟弱者ではありません!"とか言われそうだ。
そう考えると今まで悩んでいたのが馬鹿らしくなってきた。ただ自分の気持ちを伝えればいいだけなんだ。
「太郎が今回の事でどう思おうが構わない。だけど俺はお前の事をと」
〜細田 瞳〜
「太郎さん!」
自分が護るべき人が居る部屋へと駆け込むと、その人は力なく椅子に座り込んでいた。勢いよくドアを開けた時に今回のトラブルの元を作った人物の言葉を遮った気もしたが気にしない。と言うかそもそもこの京花院なる人物のせいで太郎さんが襲われたのだ。そう思うと無性に腹が立ってきた。
「影継は悪くないよ細田さん」
太郎さんはゆっくりと椅子から立ち上がるもフラフラと覚束ない足取りでこちらに歩いてくる。見ていてハラハラする様に耐えきれず私は支える為彼の肩を抱いた。
大丈夫。拒絶の色は無い。
もし今回の一件で太郎さんの女性不信が悪化していたら犯人達一族郎党、法では裁けないやり方で地獄を見せていた。
いや、だからいいって話じゃないわね。しかも今回の件にはあの"不知火華"が絡んでいる。完全に名前が負けていると思うが腕っぷしだけなら私より……
そんな相手によく無事でいてくれたと思わず支える腕に力が入る。
「とりあえず今日は家に帰ってゆっくりと休みましょう。明日から学校ですが、行くなんて言わないですよね?」
暗に"休みなさい"と言う意味を込めたのだが、さすがに疲れたのか「休みます」と返事があった。
そうこうしている内一人の女の子が京花院へと飛び込むと体中をペタペタと触り「大丈夫?」を連呼していた。恐らく彼の許嫁か何かだろう。あそこまで体を触られても平気な関係を築けている二人が少し羨ましい。
そんな微笑ましいその光景を横目に彼等を通り過ぎようとした時
「友達だ」
小さい声で誰に聞かせる訳でも無い太郎さんの言葉は、何故かしっかりと彼にも届いていたらしい。本当に嬉しそうな色をしているのが分かる。それも二つ
妬けちゃうな。私にはまだ観せたことない色を引き出した彼に。
でも私も負けません。これからどんどん幸せな色で太郎さんを彩っていくんですから!




