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不知火、確か影継の話に割り混んだことでグループから外された女子生徒だ。あれから特に顔を見た記憶も無かったが、まさかこんなところで会うとは偶然だ。
「こんなにも早く再開出来るとは思いませんでした影継様。お変わりございませんか?」
「お前と会うまでは良かったんだがな。そして偶然な訳でもあるまい。いつからつけていた?」
どうやらこの遭遇は偶然ではないらしい。
まあなんとなくそんな気はしてたけどこれって俗に言うピンチなんじゃなかろうか。
「俺達これから帰るんでまたの機会に」
「誰が喋っていいと言いましたかクズ野郎。許可があるまでそこで木偶のように立っていなさい。失礼しました影継様。つけていたつもりは御座いません。あなたをお守りしていたのです。因みに朝からですわ」
まさかの許可制だったとは。それにしてもさっきから”クソ”とか”クズ”とか暴言吐かれてるけど、この世界の女性全てが無条件に男性へ媚び諂う訳でもないのか。何だかそこは嬉しくもあるな。別に暴言吐かれて嬉しい訳じゃないけど。ここで何か言うと今度は何を言われるかわかったもんじゃないので黙っておこう。
てか、朝からストーキング宣言とかやっぱりヤバい人じゃん。
「おいおい、そんなこと言っちまったら仮面の兄さんがビクついちまうじゃねーか」
そう言えば俺達の後には現在進行形で怪物が立っているのを忘れていた。女子ハンマー投げ世界チャンピオンが幼女に見えるレベルでヤバい。
しかし会話をするということは今すぐ俺達をどうこうするつもりではないのかもしれない。
「姉さんの方が怖いです。まだ壊さないでくださいね?」
「わかってるって唯。でもコイツ異世界人なんだろ。こっちのもやしみてーなヤツより持ちそうじゃねーか」
頭越しに不穏な会話が飛び交っているが、まずこの二人が姉妹なことに驚いた。それにまだ壊さないとか不穏過ぎる。
しかしここで思いがけないチャンスが訪れた!
影継への”もやし”発言に妹がブチ切れていらっしゃる。姉も妹を宥めるのに必死で注意がこちらから逸れたのだ。
その瞬間俺はポケットに入れていたキーホルダーへと手を伸ばす。キモい鶏だが鶏冠を押し込むと細田さんへと俺の居場所がわかる仕組みだ。到着するまでの時間は会話で引き伸ばせばいい。
「おっと、そいつはおいたがすぎるぜ仮面の兄さん」
ポケットに手を入れようとした瞬間俺の右手は姉によって止められ、そこから腕を拗じられ体勢を崩され気が付けば地面に転ばされていた。おいおいマジかよこの動きって、ただ喧嘩の強い素人の動きじゃねーよ。
「おっと、すまねーな。転ばすつもりはなかったんだがつい体が動いちまった。しかし兄さんいい体してんじゃないの。こりゃ期待出来るわ」
そう言いながら俺の尻を揉みしだく姉。一体何を期待しているのかは知らないがご期待には答えたくない。
「……姉さんそれは?」
「これか? これは男性警護の奴らがよく使う発信器さ。まあ押さない限り効果はないがな」
クルクルとキーホルダーを回しながら答える姉に俺は一つの答えに辿り着いた。そんな俺の雰囲気を察したのか「元な」と耳元で囁かれこの状況に納得した。
確かに”元男性警護”のこの姉が居れば俺達に気付かれず一日尾行するなんて簡単だろう。もしこの場所に来なければこいつらは手を出さなかったかもしれない。こっちに警護がついていないとわかればイージー過ぎる条件が整う。
影継が持っていた緊急用のキーホルダーも既に妹の手に渡ってしまった。万事休すってやつか。
「さて、お前はそいつに用があるんだろ? アタシはその間この坊やと遊んでるとするか」
そう言いながら一瞬にしてうつ伏せの状態から仰向けにされてしまう。抜け出そうにもマウントポジションガッツリ決められているので暴れてもピクリとも動かない。
「おいおい、そう急かしなさんな。ちゃんと可愛がってやるからよ」
何を勘違いしてんだこのメスゴリラ。てか顔近い近い! 仮面なんて舐めてもおいしくないですよ。まじやめて、仮面取るのだけはやめてという俺の願いも虚しくメスゴリラとご対面。その瞬間いやらしい顔で舌なめずりする顔を見て鳥肌が立つ。
「初めてはベッドがいいんですが……」
「残念だがあたしゃ気にしない」
場を和まそうとした俺の渾身の冗談も華麗にスルーされてしまった。
「そ、その上腕二頭筋……ステキデスネ」
今にも俺の服を脱がそうとする極太の腕を見た瞬間、俺の思考回路はショート寸前だったのか口から訳のわからない言葉がでていた。
「ば、ばか言ってんじゃないよ。こ、こんな太い腕のどこに素敵要素があるってんだい……」
あれ? もしかして?
「いやいや、この大腿四頭筋とかウツクシイデスヨ」
そう言いながら空いていた右手でそっと太ももを撫でる。
「んッ」
コラ! 急にそんな声出すんじゃないビックリするだろうが。
しかしこれで確定した。コイツは……チョロい!なまじ強者として振る舞ってきたのだろう、男性からの攻めには馴れていないご様子。
そこから俺は少しずつ撫でる箇所を腰やお腹、そしてまた太もも等これでもかと撫でまわす。でもこれがいけなかった。既に俺の上の雌は準備万端だと言わんばかりに自分の服を破り捨てた。
「はぁはぁ、まさかあたしがここまで追い詰められるとはな。さすが異世界人と言ったところか」
くそ、あと一息ってところで……俺の初めてはここで散ってしまうのか。というか黒で大人っぽさを出しつつ中央にピンクのリボンで可愛さも忘れない! みたいなブラつけてんじゃねーよ。てか脂肪なんてねーじゃねーか。それなんて言うか知ってる? 筋肉って言うんだよ!
「おいおい、そんな情熱的な視線を向けてくるんじゃないよ、恥ずかしいじゃないか」
……!
まだだ、まだ終わらんよ!
「もし……もしも許させるならその魅力的なブラを僕の手で取りたい」
もう自分が何を言っているのかわからないが助かる可能性があるなら小さなプライドなんて捨ててやる。それに運良くフロントホックじゃない。
「ふぅ、あんたの熱意には負けたよ」
体の上から重みがふと消えたと思うとドスンと音を立てながらこちらに背を向けて胡座をかく。
や、やめてくれ背中に垂れた髪を手でまとめてうなじを見せつけるのは。これがこんなシチュエーションじゃなきゃちょっとは興奮したかもな。
少しの罪悪感を感じながらホックへと手を伸ばしながら、真っ赤になっている耳に息を吹きかけた。
その瞬間ビクビクっと体を震わせた背中に思いっきりヤクザキックをかます。その反動で俺は影継の方へと走り出した。残念だがヤツがどうなっているかを確認してる余裕なんてない。音から察するに顔面から地面へダイブしていると思うが。
「どっけぇー」
影継に腕を絡ませていた不知火妹に渾身のタックルをかますと、未だ状況を理解出来ていない取り巻きには目もくれず影継の手を取って走り出す。




