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コロナで時間が出来たので
今回の処女祭り事件の顛末はというと、恋愛マスターこと佐藤さんが実は処女であったことがクラスに知れ渡ったにも関わらずクラス内は今日も和に過ぎていく。最近は佐藤さんのまわりに鈴木さん以外の他の生徒も集まるようになってきた。
「佐藤さんって経験ないのに男性のことわかっててすごい」
これは四月一日さん。
「でも花っちはあの本読んでないのに田中君と仲がいいよね?」
続いて小鳥遊さん。
「そうそう、なんて言うか凄い自然なんだよね二人の会話って。コツとかあったら教えてよ花っち」
最後は東雲さん。
この三人は幼稚園の頃からの仲らしく大体三人で行動していることが多い。今も俺の前の席を囲って佐藤さんと楽しく会話をしている。
勿論会話内容は後ろの俺にも聞こえてくるので自然とその内容に考えさせられた。
……俺と佐藤さんの会話が自然な訳か。それは間違いなく同じ世界の住人で価値観や常識が似ているからだろう考えていると
「えっ、私とた、田中君が!?」
素で驚いている。だからわざわざこっちを見て俺に確認をとるなというのに。なんでちょっと嬉しそうなんだよ。
「周りから見たらそう見えるだけじゃないかな?あと、佐藤さんって鈴木さんと同じで少し話しやすいっていうのかな。もしかして鈴木さんみたいに佐藤さんにもご先祖様に異世界から来た人でもいたんじゃない?」
俺の解答に満足したのか三人は「成程」と納得しているご様子。
当の佐藤さんもその手があったかと言わんばかりに手を叩いて納得している。
そうこうしている内にこの話題も特に続くこともなく会話は最近のファッションへと変わっていった。
特に俺もファッションに詳しいわけもないのだが、彼女達の口から出てくる横文字をなんとなく聞き流しながら視線は外へと向ける。
「太郎」
しかしそんな俺の時間は一人の男によってあっさり崩れていった。
俺の事を太郎と呼ぶのはこの学校には一人しかいない。確信を持ちながら声のした方へ顔を向けると、体型はひょろっとしているのに何故か威厳のある男がそこに居た。
くそっ、やはり経験の差なのか!べ、別に悔しくなんかないんだからね。
「なんだ影継、一人とは珍しいな?」
本当に珍しいらしくクラスの女子達も少し落ち着かない様子だ。
当の本にも少し落ち着かないのか「ああ」といいながら教室の入り口の方を振り返る。
釣られて俺もそちらに視線をやると許嫁の金髪ドリルさんに凄い剣幕で睨まれた。恐らく俺と話がしたいから彼女には待機命令かなにか出ているのだろう。
「少し話をしないか?」
クラスで話すかと思いきや「こっちだ」と踵をかえすと教室を出て行こうとするので、慌てて俺も影継の後を追う。確かに女子に囲まれた状態で男二人で話すのは……ちょとな。
逆に男子に囲まれた状態で女子二人が冷静に平静に会話出来ないと同じだ。
……出来ないよな?なんかこっちの女性は喜々としてやりそうだ。くだらないことを考えながらヤツの後について行くと屋上へと着いた。
季節は春とは言え、高い場所で吹く風は少し冷たく感じた。
「で、話ってなんだ?許嫁にも聞かれたくないってのは少し気になるが」
俺はなんとなしに影継へと問いかけたのだが、何故か返答が返ってこないのが不安だ。
話があると言ってきた当の本人を見ると、目を瞑って軽く深呼吸してから小さく「よしっ」と自分に喝を入れていた。
……えっ、まじ?ちょっとまてまて。俺達男だろ?いやまさか。影継の気迫に押されて自然と一歩下がってしまう。それに合わすかのように一歩近づいてくる影継。
ついには背中にフェンスの冷たさを感じ、目の前の男の熱視線を感じる距離まで追い詰められてしまった。
「おいおい影継、ちょっと近くないか?」
俺はこの場の空気を変えたくて冗談交じりに言ったのだが
「大丈夫だ。俺も緊張している」
いやいや、答えになってないし!
そんな返答をしようと影継の目を見るとその言葉を自然と飲み込んでしまった。……真剣だったのだ。
こんな冗談を言うやつじゃないのは短い付き合いながらもなんとなくわかっているつもりだ。俺も真剣に影継に向き直ると、自然と手が髑髏の仮面へと伸びていった。
「そんな顔をしていたんだな太郎は」
「ああ、なんとなくお前にはこっちで向き合わなきゃって思ったんでな」
「そうか」
小さくそう呟いた後、影継は意を決したのか俺に自分の思いの内を打ち明けた。
……
……
全てを言い切った影継の顔はとても不安な表情だ。いつも自信満々なこいつでもこんな顔をするんだなとか思っていると
「で、答えは……どう、だ?」
益々不安気な声で返答を待つ影継に俺はそっと右手を出した。
その瞬間今までの不安な顔なんて嘘のようにいつもの影継の表情に戻り、いや一瞬だけ笑った気がしたのは本当に俺の気のせいだろう。
男同士の握手になにか熱いものを感じながら俺達は次の授業の為それぞれの教室へと戻った。
思っていたより長い時間影継と話していたのか、授業の開始時間ぎりぎりに教室へと滑り込んだ俺を待っていたのはクラスメイトの訝し気な視線の数々だった。
俺はそれを気にはしつつ自分の席へと座る。まさか仮面をつけるのを忘れてたっ!?
急いで自分の顔へと手をあてるとそこにはしっかりと冷たい感触がある。仮面じゃないとするとそれじゃこの視線の意味はなんだ?
結局一人悩んでいても仕方ないのでほっとくことにした。
そうこうしている内に今日の授業は全て終わり後は帰宅するだけだ。明日の放課後には影継との約束もあるし楽しみだなと帰る準備を終えて席を立つ。
「ちょっと待ちなさい」
いつぞや聞いたことのある口調で俺を引き留めるのは前の席の佐藤さん。その隣の鈴木さんもなにやら普通ではない雰囲気で「まあまあちょっと聞きたい事があるの」と俺の進路を塞ぐ。
クラスを見渡すが全員俺の方を向いているのがちょっと怖い。何かやらかしたか?と自問自答するも答えは出てこない。
「はい」
これが噂に聞く女子の集団力というヤツだろうか。凄まじい圧だ。尻もちをつくように自分の席へと座る。
「田中太郎さん」
女子を代表して佐藤さんが俺の名前を呼ぶ。そこには感情の一切が感じられずただ本のタイトルを読んでいるような、そんな気すらさせる。一体何を言われるのかと緊張で体を強張らせていると
「あなたは男が好きなのですか?」
そんな突拍子もない質問が俺を襲うのだった。
ずっと家に居るのキツイっす




