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五等分の花嫁だと
一位:四葉
二位:四葉
三位:四葉
四位:四葉
五位:四葉
以下同文
となる作者です。いいですよね元気っ子。昔だと三玖だったと思うんですがこれも年ですかね。
午前の授業の終わりを知らせる鐘がなると、いつも通り俺は食堂へ行くため席を立つと前の席から
「ちょっと待ちなさいよ」
またまた聞き覚えのあるセリフが聞こえてきたので今回はちゃんと返事をした。これで俺に話しかけてなかったら泣くぞ。
「なに?」
……返事がない、ただの俺の勘違いだったようだ。
小学生の頃こちらに手を振る生徒に思わず手を振り返すも、実は俺の後ろの生徒へ向けて振っていたぐらい恥ずかしい。俺もそれと同じように、実はあなたの後ろの人物に手を振っていたんですよ? みたいな感じを出して一人で帰ったっけ。
今回も俺が勘違いをして返事をしてしまったから佐藤さんが本来話しかけたかった相手に話しかけづらくなってしまったのだろう。
俺の方は見ずに未だ前を向いている。
「田中……くん。ちょっと、待ちな、さい」
再び食堂へと足を進めたところで今度は確実に俺を呼び止める声がした。
佐藤さんは途切れ途切れに俺を呼び止めると、何が恥ずかしいのか視線を泳がせながら言葉を探している。
それを無言で待っていると教室の後ろの入り口が騒がしくなってきたのでそちらに視線を向けると、いつぞやは俺の膀胱を助けてくれた男子とその取り巻き女子達が居た。
そのまま俺の方まで歩いてくると
「ここにいたか異世界人。今日は俺が直々に昼食の誘いに来たぞ」
相手の身長が百八十くらいあるのか俺を見下ろすかたちとなる。
これでこいつが筋肉マッチョだったら確実に財布を出していたが、生憎こいつは身長こそ高いもののヒョロットした体型だ。眼鏡をかけていかにも秀才君みたいな感じなのに声が厳ついし口調も合ってないから違和感が凄いな。
まあ、こっちに来てから同性と絡むことがなかったので今回の誘い方は置いといて正直嬉しかったりする。
「ちょっと待って。で、佐藤さんのほうは結局なんだったんだ?」
一先ずこいつの提案を置いといて、先に話しかけてきていた佐藤さんの要件を済まそうとしただけなのに
「あなた! 影継様が話しかけているのに、それを無視するとはどういう了見です。異世界から来た、それだけしか価値のないあなたにこうして話しかけておられる影継様のご厚意を無下にするおつもりですか!」
取り巻きの一人がヒステリックに叫んできた。
いやいや、ちゃんと「ちょっと待って」って断ったよね? 何言ってるのこの子は? それに異世界から来たというだけしか価値がないって言ったか?
本当のことだからわざわざ言葉にしないでくれ!
自分のセリフに酔っているのか「言ってやりましたわ」とでも言いたげな顔をしている。
しかし、他の取り巻き女子はそれを可哀想な子を見るような視線で見つめているだけだ。何だこの温度差は?
その答えはすぐにわかることとなった。
「お前は確か最近俺のグループに入った……不知火だったか?」
「は、はい! そうです影継様。不知火唯でございます」
自分の名前を呼ばれたのが余程嬉しかったのか、俺に向けた視線とは正反対の目で男子を見つめている。
「そうか。ならそれもこれまでだ。二度と俺に近づくな」
……えっ
自分が何を言われたのかわかっていない様子だ。多分褒められると思っていたのだろうが、しかし聞かされた言葉は突き放されるものだった。
その現実を受け入れられないのか硬直したまま動かない。
だけど「連れていけ」という彼の言葉で他の女子に両脇を固められ教室の外へと連れていかれた。丁度教室を出た辺りで意識を取り戻したのか彼の名前を叫んでいる。
その一連のやり取りに呆気に取られていると
「騒がしくしたな、許せ。それでそこの女、こいつの質問に早く答えろ。俺の順番が回ってこん」
細身の男子だが今は佐藤さんが椅子に座っているためかなり視線の高さに違いがある。それにこの世界で育った男子の、前の世界の男子とは違った凄味というか圧に押されたのか
「いえ、もう大丈夫……です」
最後は尻すぼみになりながらも答え終る。
「そうか。それで異世界人? 先程の答えを聞かせてもらおうか」
なんか偉そうだなこいつという考えと、まあこんな世界で育つとこうなるのかという考えが出てきた。
それでもちゃんと佐藤さんに一言入れるだけ他の男よりマシなのかな。言いかたは兎も角として……
「わかった行こうか。それと、俺は異世界人だが田中太郎という名前がある。呼び方は好きにしていいから異世界人はやめてくれ」
「それもそうか悪かったな太郎。俺は京華院影継だ。男同士だ、影継でいい」
なんでそんなカッコイイ名前なんだよ!
最初に出てきた感想はそれだった。さっきの女子も不知火とかだしなんなのこの世界! 田中に喧嘩売ってんの? 買うよ? 全国の田中さんが集まったらお前なんて瞬殺だからな。
心の中で俺は京華院影継をフルボッコにして気分を晴らし、一緒に食堂へと向かう。
向かう道中、なんでさっきの女子を自分のグループから追い出したのかを聞いてみる。
「俺は異世か……太郎を食事に誘った。お前と話がしたくてな。そんなお前にあいつは暴言を吐いた」
それだけだ。
そう言う京華院の顔は少しだけ疲れた表情を滲ませていた。
特に俺から言うこともないので「へ~」とだけ相槌をうつだけに留める。もしかしたらこの世界の男も色々苦労しているのかもしれないな。そんな会話の最中も取り巻きの女子達は静かについて来るくるだけだった。
目当ての食堂へ着いた俺は食券を買うために列へと並ぶが、京華院はいつも通りと言わんばかりに奥の席へと進んでいった。
文化の違い。郷に入れば郷に従えという言葉もあることだし特に騒ぐことじゃない。
唐揚げ定食が乗ったトレイを持って俺は初めて奥の男子専用のスペースへと足を踏み入れた。
下に敷いてある絨毯が思いのほかふかふかで驚いてしまう。影継の正面に座ると、彼の分の昼食を取り巻きの女子がこれまた普通ですよと言わんばかりに彼の前に自然に置き料理の説明までしている。
それが終わると彼の両側に二人ずつ、計四人が座り準備は整い、さて今からという前に俺は言いたかったことを言おう。
「京華院。今日は誘ってくれてありがとう。俺もこっちにきて男子とは縁がなくてな。助かった」
正面の京華院は「気にするな。ただお前と話をしてみたかっただけだ」と片手を軽く上げて答える。
「だけど、俺はお前とご飯を食べると思っていたんだが……」
そう言いながら取り巻き女子四人に視線を向けると、彼女達からは殺気の乗った視線を向けられるがここは譲れない。正面の京華院に視線を固定させて答えを待つと「ふむ」と一度頷いて
「それはすまなかったな太郎。そう言う訳だお前達、今日は一般のスペースで食べてくれ」
未だ視線は俺を睨み殺さんとしていたが、先程の一件が効いているのか特に俺に何か文句を言う訳でもなく各々一般のスペースへと向かって行った。
「無理を言ってすまん。だけど初対面の女子と一緒にご飯を食べれるほど俺の心臓は強くないんだ」
「そうなのか?異世界の男は女が好きと読んだのだが……まあ人それぞれか」
理解のあるやつで助かった。伊達に眼鏡をかけていないな。
……ちょっと待て。今なんて言ったこいつは? 読んだ? なにを?
「つかぬことを聞きますが京華院君。君が読んだというその本のタイトルと著者を教えてくれるかね?」
俺の口調の変化に戸惑うも
「あ、ああ。あれは確か”異世界男子の対処法~昨日の敵は今日の強敵~”だったか。書いたのは鈴木源次郎先生だ。それがどうかしたか?」
二巻だっけ? 三巻だっけとぼやいているがそんなのどうでもいいんだよ。なんでそんなに本書いてんだよ源次郎! 暇なの?
……ちょっと内容が気になるし、今度読んでみよう。
それからの話は他愛ない内容で、京華院には既に婚約者がいるとか。それが取り巻きの中の一人の髪がドリルの人だとか。後の三人は嫁候補とか。全然他愛なくないんですけど! 結構ぶっ飛んでるんですけど! 仕舞いには「太郎はもう嫁は決めたのか?」だってさ。 嫁どころか彼女すらいたことありませんがなにか? 聞かれた瞬間ついつい大きな声で彼女がいないことを言ってしまったのがいけなかった……
「……聞いた?」「「「聞いた」」」「いないって言ったよね?」「「「……言った」」」「いたことないって」「と、いうことは」「……どう」「てい……」
「「「「「「私の時代きたーーーーー」」」」」」
食堂のおばちゃんに注意されるまでこの騒ぎは中々収まる事がなかったし、俺の気のせいで無ければキッチンの中でおばちゃん達も、しゃもじや鍋の蓋、包丁や鯖を思い思いに掲げて叫んでいたような。
この狂乱の中、目の前の京華院だけは冷静を保ったまま俺にだけ聞こえる声で
「太郎。俺と友達になってくれ」
そう言ってきたのである。
作者の小話
結局流されて近くの観光地まで来てしまった。
……だがいつもの俺ではないのだ! 「それでは十九時にここのレストラン再集合で」そう言って現地解散まで持ち込んだのだ。よくやった俺。
行きと帰り。そして晩御飯だけ一緒という条件での今回の小旅行。住んでる町からだとちょっと来にくい場所だったが、それは隣人の案内で問題なし。
その街を満喫し美味しい料理を食べて帰りの電車に乗っているとつい眠くなってしまい、隣人に「着いたら起こしてください」と言って寝てしまった。
寝てしまった……
「ぷちっ」っという何かが抜ける音と痛みで目が覚めた。一体何が起こったと驚いていると
「白髪があったから抜いてあげた」と俺の白髪を指に挟んでご満悦な隣人。田舎への帰りの電車とはいえ人がまったく居ないわけではないこの車内で、こいつは俺の白髪を抜いたのか?落ち着け俺。まだ慌てるような時間じゃない。
「勝手に髪の毛抜くとか常識ないんですか?」と、平静に冷静に尋ねると「だって白髪だよ?まだ若いんだから邪魔だと思って抜いてあげたのにうんたらかんたら」
ピーチクパーチク囀る隣人を放って俺は席を移動する。よし、奴はついてこない。
だが悲しいかな。降りる駅は一緒で帰る場所も一緒なのだ。だけど一緒に帰るなんてまっぴら御免なので速足で一人さっさと家に帰ると「ピンポーン」とお決まりの鐘が鳴った。
「こんな田舎の夜道を女性一人で歩かせるなんてなに考えてるの?うんたらかんたら。信じられない!」そう言って隣の部屋に帰って行った。
こっちが信じられんわボケ!!!!!
つづく




