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この前朝三時くらいに小説をアップして気分転換に庭へ出ると小雨でした。丁度イヤホンからは「ドメ×カノ」のopが流れていたので深夜のテンションで歌ってると、新聞配達の人が来たことにも気が付かず恥ずかしい思いをした作者です。

皆さんも外で歌う時は注意してください。


 人間どんなにマイナス思考になっていたとしても空腹には勝てない。

そう言えば今日は朝から何も食べて無かったなと目を開けるも、帰った時はまだ中天で陽を照らしていた太陽も沈んでいるのか部屋の中は真っ暗だった。


「今何時だ?」


 時刻を確認するためどこかに置いた携帯電話を探そうと手を伸ばそうとすると、指先に何か引っかかった気がした。起きたばかりで更に部屋の中は真っ暗だ。少し暗闇に目をならすと布団の外で同じく丸まって寝ている細田さんが居ることに気が付く。


 まさかとは思うが今まで俺の手を握っていてくれていたのだろうか?

多分だけどまた俺の感情が不安定なのを視てしまったからだろうな……この人はどうしてこうまでして俺に構ってくれるのだろうか。仕事だから? 俺が男だから? 眠っている彼女に聞こうと口を開く。


「なんであなたは俺に……」


 その時丁度窓から差し込む月明りが彼女を照らし出し、うっすらと流れる涙を見て言葉を呑んでしまった。

不覚にもそれに見とれていると細田さんが目を覚まし、目元の雫を拭きとると


「太郎さん」


 いつものように俺の名前を呼ぶ。

だけどそれは怒っているようで悲しそうな声で。今にも泣き出してしまいそうな彼女に向き直り言葉を待っていると


「おなか……空きましたね」


 先程の雰囲気から一変して彼女の口調は穏やかになり「何か作りますね」と言って部屋から出て行ってしまった。正直何を言われるか大体察しがついていたが、あまり話してもお互いいい気分にはならないことなので助かった。それでもいつかは話す時がくるのかもしれない。


 その日の晩御飯は余っていた卵を使ってオムライスを作ってもらった。

俺の料理スキルは足りていないのだが「何事も挑戦です」と細田さんに教わりながら作ったオムライスは、彼女のと比べるとどうしても不格好な形になってしまう。


「「いただきます」」


 作ったオムライスを交換してでの今回の食事はお互い口数が少なく、スプーンとお皿が触れる音だけが食卓に響いていた。

 無言の時間を嫌う人も多いかもしれないけど、俺はこうやって話をしなくても気にならないし、更に言えば好きなほうである。相手が、今でいえば細田さんがどう思っているかはわからないけど……チラッと視線を向けると、眉間にしわを寄せてなにやら難しい顔をしている。


 まあ人それぞれってことだ。

俺は好きだけど細田さんは別にそうではなかったって話でそこまで気にすることじゃないぞ俺。

自分に言い聞かせていると、細田さんが申し訳なさそうに事実を伝えてきた。


「太郎さん。次は両手で卵を割りましょうか」


 どうやら調子に乗って細田さんの真似をし、片手で卵を割ったはいいが殻が混じってしまっていたようだ。だってあれカッコイイんだもん。


「自分の分を作る時に練習します。半分食べちゃいましたけど交換します? 細田さんのオムライス美味しいですよ。卵がふんわりしてて」


 そう言ってこっちのお皿を差し出すも「これは私のです」と腕でオムライスを隠し威嚇してきた。

 それから食べ終わるまで先程の部屋でのことには触れてこず、ごちそうさまをして俺はいつもの皿洗いに勤しむ。頑張れ食洗器。


 




 翌朝、いつも通り登校すると


「あんた……大丈夫なの?」


 前も聞いた気がするセリフを言うのは目の前の佐藤さん。席に座ったまま体をこちらに半分向けながら話しかけてきた。


「ああ、特に問題ない」


 そう答えると「あっそう」と言いながら前を向く。このやり取りもなんだか二度目な気がするな。前は確か俺が二階から飛んだことを心配してくれたんだっけ。

 でも、今回特に飛んだりはしてないんだけど佐藤さんは何を心配してるんだ……


「まさか俺の体調を心配してくれたのか?」


 思いついたことが口から出てしまった瞬間、凄い勢いでこちらを振り返り


「なんでそうなるのよ! バッカじゃないの」


 ちょっと声が大きかったのかそれまで友達同士で話していたクラスメイト達が一斉にこちらを向いた。

それにはさすがに気まずさを感じたのか小声で


「勝手に私の思考を決めないで。なんで私があんたの心配をしないといけないのよ」


「じゃ、何を心配してたんだ?」


 と聞き返すと「あー」とか「うー」とか唸りながら視線を散らす佐藤さんが面白いのでそのまま放っておくと納得する理由を思いついたのか


「そう。そうよ。あんたにはお礼を言っただけで特に何かお礼をしてなかったでしょ? だから私がそれを返す前に倒れられるとこっちが迷惑なの、わかった?」


 絶対今考えたであろう理由に自分で「うんうんそうよ」と納得しているご様子。

まあそれで自分が納得するならそれでいいか、でもこれだけは言いたい。


「やっぱりツン……なんでもありません」


 「ツンデレ」って言おうとしたら思いっきり睨まれて最後まで言えなかった。残念だと思っていると意外な伏兵が現れて佐藤さんと俺を驚かした。



「花っちのそれって”ツンデレ”ってやつだよね? 食堂でも使ってた。それって凄い高等テクニックって書いてあったのに花っちはそれを自然に使えるんだね! さすが恋愛マスター」


 まさかの友達からのFF(フレンドリーファイア)には何も言えないご様子。

教室では「さすが恋愛マスター」「マスター花子さすが」「師匠ッパないっす」「あたしもあれ読んだけど難しすぎて断念したのに」「「私も」」「まあ試す相手が居なかったんだけどね」「「……私も」」


 話の話題は一気に佐藤さん(恋愛マスター)一色になる。

その中で少し気になる単語を拾ったので、無意識に佐藤さんを撃墜した鈴木さんに聞いてみようか。


「おはよう鈴木さん。こっちにはツンデレの教科書かなにかあるの?」


「おはよう田中君。うーん、ツンデレ限定って訳じゃないんだけど……」


 少し言い難そうにしたあと自分の鞄の中から一冊の本を取り出して俺に渡してくれた。

受け取った本は意外に分厚く重い。もしかして毎日これを鞄に入れて持ち歩いてるのかこの世界の女子は。

 その本のタイトルを読んでみる


「えーっとなになに”異世界男子の対処法~これで気になるあいつもあなたにメロメロン~”?」


 ……なにこのタイトル。

 しかも最後に”四”って書いてあるんですけど! これ以外にまだ三冊はあるってことなの! このタイトルが! 著者:鈴木 源次郎って書いてあるってことはもしかしなくても


「この源次郎って人ってもしかしなくても鈴木さんの?」


「うん。あたいの曽祖父が書いた本で、田中くんが来てからこの学校で今ブームなんだよ」


 知らない? と最後につけたしてくる。知らねーよそんなのと周りを見渡すとクラスの女子全員がどや顔でそれぞれ同じような本を見せつけてくる。

もうやだこんな世界。


 ちょっと興味本位で本を開くとそこには説明文とマンガで書かれていた。プロが書いたのか絵は上手くついつい読んでしまう。


 



 ……そして現在読むんじゃなかったと後悔しているところだ。

あんたかよ源次郎! あんたが要らないことを書くから俺は歩いて学校へすら通えなくなってるんだぞ。

 そこへ書かれていたのは、

・「ちっこくーちっこくー」と言いながら通学路の角から食パンを咥えて飛び出す(マーガリンよりバターがベター)。

・男性とぶつかって尻もちをつく(危険なので実際はギリギリで避けましょう)。

・そしてさりげなくパンツを見せる(縞パンがベスト)。

・その場で「どこ見てんのよ!」と怒りましょう(羞恥心も忘れずに)

・次に会った時「あー、あんたはあの時の!!」と、皆が居る前で言えば男子は逃げません。(異世界男子の習性で逃げれません(・・・・・・)


 しかも丁寧に最後にこう書かれている。


・注意:上記の行動は相手、もしくは自分が転校初日であることが望ましい。お互い顔を知っていると効果は激減するので留意されたし(その場合はP32の「み……見えた?」を参照すること)



 思わず床に叩きつけそうになった本を何とか耐えて、そっと本を鈴木さんへ返し空を見上げる。

今日もいい天気だな。おっ、小鳥の囀りが聞こえてくる。青春ってなんだろうなーと現実逃避していると


「えっとね。この本はもし自分の後にこっちに来る男子がいたら、その人の為になるかもって。その人が気分よくこの世界で生活出来る様にって書かれたって聞いたんだ……だからその……怒らないでくれると嬉しいな」


 俺が返した本で口許を隠しながら上目遣いで語る鈴木さん。流石に身内が書いた本を馬鹿にされたらいい気はしないよな。それが俺たちの為なら尚更か……


「すまなかった鈴木さん。別にその本が気に入らなかった訳じゃなくて、その……ちょっと再現度に驚いたというかなんというか。よく出来てると思うよ、俺が保証する。感謝はまだ出来ないけど、その気持ちは嬉しく思うよ」


 気恥ずかしくて横を向きながら言うと「ありがとう」と笑顔になる鈴木さんに安堵する。すると今まで黙っていた佐藤さんが「あんたも同じじゃん」とボソッと呟いた。

ん? 俺も、なんだって?


 佐藤さんへと視線を向けると、鬼の首を取ったかのようにニタリとした笑みをこちらに向けて信じられない事を言ってきた。


 


 











「あんたもツンデレじゃん」



 一瞬何を言われたかわからなかったが、確かにこう聞こえた「俺がツンデレ……だと?」確認するかのように自分でもう一度口にすると



「やーいツンデレツンデレ。ツンデレって言うヤツがツンデレなんですー」


 と程度の低いことを言ってくる佐藤(ツンデレ)さん。それ自分がツンデレって認めたもんだからな! それからはもう止まらない。小学生並みの言い合いをしているとどうやらホームルームの時間らしく先生が教室へ入ってきたことにより、俺達の口論は一時中断した。


「覚えとけよ恋愛マスターさん」


 嫌味を込めて前の席だけに聞こえる声量で呟くと直ぐに一枚のメモ用紙が送られてきた。

なんだ? と思いながらそれを開くと短くこう書かれていた。






 ”上等よツンデレ王子さん”








 

作者の小話⑬


「私とは行かなかったのに友人とはご飯行くんだ?」事件から数日が経ち、お互いその話は持ち出さないことで静かに鎮火していった。

そうして何事もなくすごしていたある日、郵便受けに手紙が入っていたのをそのまま掴み部屋へと戻る。どうやら「受信料払え」というお達しだけど、生憎俺の部屋にはテレビは無い。

そのまま捨てようとしたとき裏面に違和感を感じてよく見ると……


俺はその手紙を持って隣の部屋に行きチャイムを鳴らす。少しして隣人が「なに?」と何食わぬ顔で出てきた。

「なに?ではなくてこれはなんですか?」持っていた手紙の裏面を見せながら問う。そこには”今度近場の観光地に行こう!こことここがお勧めだよ。どっちがいい?”みたいな文が書かれていたのだ。

「普通他人の郵便物をメモ代わりにしたりしないと思うんですが?」イライラしていたのが全面に出ていたのか「そんなに怒んなくてもいいじゃない。はいはい、次からは気を付けます。それにそれどうせ捨てる手紙でしょ?」


それを聞いてなんか怒る気も失せてしまい部屋へと帰る。

後ろからは「どっちに行きたいか決めといてねー」という声が。知り合いが少ない所為か、こんな隣人の言葉通り一緒に観光地へ行ってしまった俺に凍った豆腐を投げてやりたい。



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