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猫カフェは猫が寝ているお昼過ぎに行くのが大好きな作者です。
「ふぁふぉうふぁんふぁさですふぉ。ふぉふぃふぇくわふぁい。・・・ふぉふぃないふぉふぁんふぁらファムふぁふぉふぃふぇふぃまいふぁふふぉ?」
・・・朝から何言ってるんだろうこの人はと、眠い目を擦りながら視界に広がる光景に驚愕した。
そこには前に細田さんに説明した光景があった。寝ている俺にエプロン姿で跨り(ここ重要)焼きたての食パンを咥えている細田さん。咥えながら喋っている為なにを言っているのかわからないが、まあ起きて下さいだろう。
あの話の通りならここでパンに乗っているブルーベリージャムが俺の頬に落ち、それを舐め取るというとこまでいく筈なので動かないでおこう。
ジャムの落ちる場所に狙いを定めているのか頭の位置を微妙に動かしている彼女はちょっと可愛いかった。
高い位置からでは狙いが定まらないのか両手を俺の頭の横へ置き、ゆっくりと顔を近づけてくる。
いやこれ、パンがなかったらヤバい行為ですからね!わかってます細田さん!
ダメだわかってない。今の細田さんはジャムの落下地点に夢中でお互いの態勢に気が付いていない。
自分の態勢を安定させる為か、あげていたお尻を俺の上に下ろし微妙に揺れている・・・
朝の息子のテンションには刺激が強かったのか
「あっ」
っと、声をあげる彼女。多分布団越しでも伝わってしまった俺の熱いパトスに驚いたのだろう。
でも、声をあげるということは・・・
「あつっ!」
咥えていた焼きたての食パン(細田さんが咥えた食パン・爽やかなブルーベリージャムを乗せて)が俺の顔面に落ちてきた。幸いお互いの顔の距離が近かったので衝撃はなかったものの熱いし、ジャムがベトベトする。
「すいません太郎さん!」
慌てて俺の顔に乗っているパンをとってくれたものの、もう俺は目を開ける事すら出来ない状態なので今の細田さんの表情がわからない。
それでも折角細田さんがここまで頑張ってくれたのだからその雄姿を見ないと言うのは失礼だろうに!
瞼の上にジャムが乗っているのなんてなんのその。一気に瞼を開け・・・
「ジャムったジャムった」
目にジャムが入ってきた。これが噂の”ジャムる”というやつか恐ろしい。目を擦りたいのを我慢する。
今俺はこの場面に相応しい言葉を言わなくてはいけないのだ。
「舐めます?」
結局細田さんがジャムまみれ俺の顔を舐めるなんてことはなく、彼女に連れられて顔を洗い今は普段の朝食を食べている最中。
顔を洗いテーブルにつくも、先程のパンはどこにも見当たらず細田さんも何もなかったかのように座っている。これに関してはお互い黙っているのが吉なのでそこには触れずに”ごちそうさま”と言って食器を洗う。
急いで食べたのか、彼女の口許にジャムがついていることも黙っておこう。
さて、先日の件の処理もあるので早めに学校に来てほしいと校長先生からのお達しもあり、俺はいつもの部屋で書類にサインをしている。
数ヵ所先生に説明を聞くも、問題が無い事を確認したのでサインをしてこの件は終了だ。
「本当にこんな軽い罰でよかったのかい?」
そう聞いてくるのは書類に目を通している校長先生。
「こっちとしてはこれでも重い罰だと思うので、今回はこれでお願いします」
それにこれからは俺に気軽に接触してくる人達が減るんじゃないかという打算もあるしな。
図らずともレッドカード以上の効果を発揮した今回の事件。心の中では保健の先生に感謝をしつつも少し罪悪感も生まれているのも確かだ。
「そうかい。学校側としては今回の対応には感謝したいが、私個人としては少し複雑な思いだよ。でもまた学校に来てくれてありがとう」
そう言って席を立ち部屋を出て行こうとするも扉の前でこちらに振り返り
「そうそう、細田先生少しいいかい?」
俺ではなく、細田さんに声を掛けた。何でしょうか?と彼女が返事をすると
「まだ授業がないとはいえ、ここは学校であなたは先生だ。口許にジャムなんかつけてたら生徒に嘗められちまうよ?職員室に行く前にちゃんとしておくように」
それだけ言って部屋を出て行ってしまった。
(なんでジャムがついてること言ってくれなかったんですか!?)という細田さんからの鋭い視線を華麗に受け流し、俺はこの場面に相応しい言葉を放つ。
「舐めます?」
その少しした後、部屋の扉を勢いよく開けて走り去っていく新任教師がいたとかいなかったとか。
おっ、やっぱりジャムはブルーベリーが一番美味いな。
思わぬデザートの味を堪能しつつ、しっかりと仮面がついていることを確認して自分のクラスの扉を開く。早い登校なので生徒もそこまで多くないが、既に事の顛末が知られているのか俺を見る視線が昨日とは別の何かに変っているのがわかる。
そのまま自分の席に座り今日の時間割を確認して一限目に備えていると
「あんた・・・大丈夫なの?」
後から登校してきた佐藤さんが俺の横で止まり話しかけてきた。
昨日の最後の会話が「変態」で終わっていたのが気まずいのか、視線は外を向いている。
「特に問題はないな。あのくらいの高さなら大丈夫だ」
男子特有の見栄を張ってしまうが許してほしい。まっ、実際大丈夫だったわけだし?もう1回飛べと言われれば飛びますが?
「・・・・・・あっそう」
それだけ言って前の席に座る彼女。背中で話しは終わりと語っているのでこれ以上はやめておこう。
背中で語るってなんかカッコイイなと思っていると
「田中君、もう大丈夫系?」
今度は鈴木さんが心配してくれた。今日も変わらずギャルメイクですね。多分大丈夫系です。
それに先程と同じ答えを返すと
「違う違う。昨日の先生の言動がトラウマというか、学校が嫌になってないかなーって」
成程そういうことか。
「そっちも特には問題ない。心配してくれてありがとう」
そう返事を返すとあからさまに慌てた様子で「ならいいし」とこちらも前を向いて座る。その横で佐藤さんが拳を握りながらフルフルと肩を震わせているが何故だろう。
始まったSHLでも田中先生から特に昨日の事が口から出てくるわけでもなく、普通の一日が始まった。
そこから特に特出するような事もなく授業を消化していき、時間はお昼に。
四限目の終わりを知らせる鐘の音が鳴ると、クラスの皆はそれぞれ思い思いに立ち上がりご飯の用意を始める。恐らく食堂に行くであろう生徒。購買へと走って行き先生に注意されている生徒。机をくっつけて仲良くお弁当を広げる生徒。1人ぽつんと座っている生徒・・・は俺だけか。
佐藤さんと鈴木さんはお弁当なのか鞄から可愛い包みを取り出していた。
それを横目に俺は食堂へと足を進める。昨日の初登校で昼前に帰ってしまったので食堂の場所はわからないが、人の流れで大体の方向はつかめた。
恐らくあの集団の後をつけて行けば食堂に辿り着く筈だ。
ストーカー?馬鹿言っちゃいけない。これは戦略的行動なのだからね。
「そうですか、逆方向ですか・・・ああ結構です。どうも」
そんな俺の戦略も簡単に崩れ落ちた。
ついて行った先は体育館で、彼女達はそこでお弁当を食べてそのまま直ぐに体育館で遊ぶつもりだったらし。「食堂はどこか?」と尋ねると、こことは逆方向ということを教えて貰い、着いて行きましょうかというお誘いも断っておいた。だって恥ずかしいし。
少なくない時間を使ってしまい漸く辿り着いた食堂を見て愕然とした。空いてる場所が見た所見当たらないのだ。
キョロキョロと空いている席を探すも見当たらないが、とある箇所だけあからさまに違う空間を見つけた。そこでは机も椅子も食器も、食べている料理すら違っている。座っているのは数名の男子とその取り巻きの女子生徒達。他の場所よりも数段高い位置にあるのも忘れずに。
そこにはまだ空いてる席があるのだが、正直あんな場所で美味しくいただける気もしないのでスルーだ。
そう思っていると数人の女子が食べ終わったのか席を立つのが見えた。あそこなら大丈夫そうだなと券売機で今日のご飯を物色する。
ここはやはり「唐揚げ定食」だろうか。しかし昨日親子丼を食べたばかりだし「さばの塩焼き定食」か?男子限定の高級ランチなるものもあったが食べる気にならない。なんで学生のお昼ご飯にナイフとフォークが出てくるんだよ。
少し悩んで「さばの塩焼き定食」に決めて財布をポケットから出したところで固まってしまう。
・・・お金を入れる場所がミアタラナイ。
落ち着け俺。そんな筈はないし、もしそうだったとしても何か違う方法で買うことが出来る筈だ。
もう一度券売機をじっくり見てみるも・・・見当たらないし、後ろからはなんか視線を沢山感じるので実はまだ悩んでますよ?みたいな体で立っているも限界だ。
・・・パンでも買おう。
無言の視線に耐えきれずとうとう俺は食堂を離れ、隣の購買で売れ残りのパンを2つと珈琲を買い、人目のつかない校舎の影で初めてのお昼を過ごすこととなる。
仮面の下は取り外し可能でご飯を食べる時も問題ない。ぼーっとパンを食べながら景色を見ているとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。
そうして俺の横で止まる足音と
「なにしてんだいあんたは」
という声に視線を上げると、腰に手をあてた呆れ顔の校長先生と細田さんが立っていた。
作者の小話⑨
仕事の都合でど田舎に引っ越すことに。
そうして過ごした数日後の夕方、ピンポーンとチャイムが鳴る。こっちにきて知り合いはまだいないので「誰だ?」と思いつつ扉を開けるとそこにはやはり知らない女性が立っていた。
話をするとどうやらお隣さんらしく、これから宜しくと言ってその日は終わり。
あれ?俺から挨拶したほうがよかったかな。でも逆に挨拶くるなんて新鮮だな・・・くらいに考えてた俺を殴り飛ばしたい。
つづく




