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2話目です
~鈴木 哀~
教室を出た後すぐに先生からもうすぐ授業が始まるという注意を後ろに流しながら近くのトイレのに駆け込み、一番奥の個室に滑り込む様に入る。
本来は授業中のため誰も来ない筈なのに鍵をしっかりとかけなんとか腰をおろせた。
「変に思われてないかしら」
普段学校で使う言葉遣いではなく、本来の喋り方になっているが誰もいないので今は気にしない。
まさか”ありがとう”なんて言われるとは思ってもみなかった。自分は打算ありきで話しかけたのにそれに感謝されたのが恥ずかしかったし、それでもその言葉は私の心を乱すのには十分過ぎたのだ。
今朝校長先生から男子生徒の編入が告げられ私達は歓喜した。更にそれが異世界からの男性となると尚更だ。そこで私は金曜の夜に出会った男の子を思い出していた。
あんな場所であんな時間に1人で出歩く男性なんてこの世界にはいない。あの時は「着いてきて」と言って近くの男性警護会社の「シリウス」まで連れて行く予定だったけど、彼は私の提案を一蹴してどこかへ走って行ってしまった。
その後彼を探していると会社の人間と思われる人達に大通りまで連れていかれてしまったので彼があの後どうなったかはわからない。
それでもこのタイミングで異世界からの転入生と言ったら彼しかいないだろう。暗くて顔は余り覚えていないが一目みれば思い出せるはず。
その思いが通じたのか彼は私と同じD組の生徒となった。
あの時ばかりは本当に神様はいるんだなと祈りをささげたくらいだ。そうして先生の後ろについて教室に入ってきた彼を見て私だけでなくクラス中の皆が驚いた。
なんせ髑髏の仮面をつけているのだ・・・これじゃ顔がわからない。背格好も同じだし十中八九彼だろうけど確信が持てない。
ぶっきらぼうな自己紹介の後、田中先生同じみの席替えが始まりくじを引くと「36」と書かれた紙が・・・くしゃっとそれを握りつぶすと同じく今日編入してきた佐藤さんに小さな声で話しかけた。
「佐藤さんは何番だった?」
と聞くと彼女が引いたくじをチラっと見せてくれた。
「37」とそこには書かれており「お互い残念だったね」と言うも彼女は「なんで?」と本気で首を傾げている。
なんでだろう。この子は本当になにが残念かわかっていないみたいだ。どう説明しようかと考えていると早速1番を引いた人が呼ばれていた。その人物をみてもう一度自分の引いた紙を握りつぶす。(どう考えてもこの番号じゃ彼の近くには座れない)
それにあの場所じゃ2人しか彼と接点を持てない。
どうせ次の人達が周りを固めて、最後は一番彼から遠い席しか空いてないんだろうな。と考えているとまさか2番の生徒が彼から1番遠い席に座ったことで小さな希望へと変わる。
そこからは私の心の中はさながら競馬場で馬券を握りしめながら叫ぶおばさま達と変わらなかった。
途中ヒヤッとする場面はあったものの私は彼の右前という絶好のポジションを確保することに成功したのだ。席に向かう私は万馬券を握りしめて換金所へと向かうおばさまだろう。今ならわかる。これは癖になる。
前の席も空いていたがそこからでは彼を見るには真後ろを振り向かないといけないので、この席がベスト。
その席には佐藤さんが何事もなかったかのように座るが、その時も彼女の表情に変化はなく淡々としていた。
それをただ単にポーカーフェイスの上手い子ぐらいに片付けて今はどう彼に話しかけようか考えよう。
始まった授業を他所に色々考えていたのだが途中で思い出してしまった。
「彼が嫌がることをした生徒には3ヵ月の接触禁止」
校長先生から言い渡されたその条件は厳しい。特に何が彼が嫌がる事かがわからない現状彼に話しかけるのはとてつもないリスクを負う。最悪話しかけた瞬間レッドカードが出てくる可能性すらあるのだ。
・・・それでか
2番を引きながら彼と離れた所に座った生徒に視線を向けると彼女もこちらをチラッとみて薄っすらと笑みを浮かべる。くそっ、そういうことか。
席替えは基本1ヶ月ごとに行われる。もし今から3ヵ月の間場外にいると夏休みを挟んで、次に話しかけれるのは新学期の9月になってしまう。その時点で既に負けが決まってしまうのだ。そうなるくらいならこの1ヶ月を捨ててでも手堅くいった方がいいという彼女の判断に他の皆も賛成した結果が今回の席替えだ。
しかし彼女はおろか他の誰も知らない。私は一度彼と会っているというアドバンテージがあるということを・・・多分だけど。
決心がつかないまま結局授業は終わり10分の休憩時間となってしまった。
クラスメイトの大半は佐藤さんの席の前に行き質問しているが、視線はチラチラと後ろの田中君に向いている。もし彼女達の中から彼に話しかける人が出てきたらと思うと居てもたってもいられなくなり
「ねえねえ田中くん。あたいのこと覚えてる?」
と、口走っていた。
それに反応したのは彼とクラス中の女子生徒。彼はこっちを見ながら私を思い出そうとして、クラスメイトはそんな私達を観察している。懸念していたレッドカードは直ぐに出てくる気配もないし一安心していると
「今・・・あたいって言った?」
どうやら私自身ではなくこの言葉遣いを覚えていたらしい。けどそれでも思い出してくれたことが嬉しくて自然と笑顔になってしまう。
この言葉遣いにしていてよかったと初めて思った瞬間でもあった。
そこから互いに軽く挨拶を交わし気分が高揚してついいらないことを聞いてしまった。
「こんなこと聞くのも変な話だけど・・・あたいウザくない?」
なんでこんなことを口走ったかわからない。そしたら
「別にウザくはないが、強いて言うならそんなことを聞いてくるほうがウザいな」
彼の抑揚のない声が私を襲う。
やってしまった。この時は天国から地獄に落ちた気分だったのだが、彼から一向にレッドカードが出てくる気配がなく薄っすら目を開けて尋ねると、然も今思い出したかのようにカードを出す。一瞬でクラスメイト達は慌てふためき彼から距離をとって怯えている。
その場に残っているのは私と佐藤さんだけ。彼女は何が起こっているのかわかっていない様子。それとも自分にそれが絶対向かないという自信があるのだろうか。
しかし、結果として彼はカードの力を振りかざすことはせず、私に”ありがとう”と伝えてきたのだ。
その言葉を聞いた瞬間胸が熱くなり私の目からは涙がこぼれていた。。「あれ?おかしいな止まらないし」嬉しい筈なのに涙が出るなんて漫画の中の話だけだと思っていた。
同い年の男の子に涙を見られるのが恥ずかしくて、目元をごしごしと拭うっていると
「化粧しないほうが可愛いんじゃないか?」
彼からの追撃に私の思考回路はショート寸前だ。
「勝手に見んなし!!」
ちょっと乱暴な言葉になってしまったが今の顔を見られるよりはいいし、こんな言葉で彼がカードを使うわけがないと確信に似た何かがあった。化粧ポーチを鞄から抜き取り、先生の注意も聞かずにここまで来てしまった。
廊下を走ったことなんてなかったのに。
漸く落ち着いてきた私は個室から出て鏡に映る自分を見る。
「化粧しないほうが可愛い・・・か」
その言葉にみるみる顔が熱くなっていくのがわかる。自分でもわかっているのだ。この化粧が似合っていないことくらい。髪の毛も初めて染めて親にも怒られた。これまた私には似合っていない。それもわかってる。
だけど今はこれを辞める訳にはいかない。本来の黒髪に戻して薄っすらと化粧をしたら彼は褒めてくれるだろうか?また可愛いと言ってくれるだろうか?そしたら次はどんな気持ちになるのだろうか?
それはとても魅力的な話だけど今じゃない。
はやくこの問題を片づけて彼に褒めてもらおう。言葉遣いも戻したらもしかしたら私だとわからないかもしれない。それはちょっと残念だけど揶揄うネタが出来て楽しいかもしれないな。
「私は負けない」
鏡の自分に言い聞かす様にポーチから道具を取り出し私はまた仮面を被る。
幼女戦記の劇場版を観てきました!!
遅くない?と思われるかもしれないですが、上映前に「幼女戦記って総集編らしいよ」という友人の言葉を信じた僕が悪かった。なのでその銃をしまってほしいです少佐殿。
youtubeのおすすめに「本編一部特別公開」が出てこなかったらと思うとゾッとします。
やっぱり映画館で観ると迫力凄いですねー。




