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短いので2話投稿してます。


「あたいは鈴木哀、これからよろしくね田中君」


「ああ、よろしく鈴木さん」


 定型文の挨拶を交わしたあと少し彼女と話すと、彼女の名前の”あい”はLOVEではなく喜怒哀楽の哀ということがわかった。あの夜の出会いについてはいまのところ話題には出ていない。


「それにしてもその仮面ってあっちの世界で流行ってたりするの?」


「そんなことはない。もしこれを付けて外に出ると警察に捕まる自信があるぞ。これは昨日急遽造ってもらった女性からの視線避けだ」


 そう答えると「なんかごめんね」と渇いた笑いで謝ってきた。


「鈴木さんが謝ることじゃないし、謝られてもどっちもいい気はしない。それならパンダの赤ちゃんを見るような視線を向けるのはやめてくれると助かる。正直言って迷惑だ」


 そう言って周りを見渡すと今まで俺たちに視線を向けていた女子達が一斉に顔を背けた。こう言っておけばこの話は今日中には学校中に広がり、明日からは快適な学校生活になることを今は願うしかない。


「こんなこと聞くのも変な話だけど・・・あたいウザくない?」


 なぜそんな事を聞いて来るのかわからないが正直者で有名な俺こと田中は正直に答える。


「別にウザくはないが、強いて言うならそんなことを聞いてくるほうがウザいな」


 瞬間彼女はビクッと体を強張らせギュッと目を瞑って何かから自分を守るように体を腕で抱きしめた。

一体彼女は何と戦っているのだろうか?特に言うこともないのでその姿を眺めていると(腕で胸が押し上げられてエロいとかは考えてない)


「・・・あれ?レッドカード(一発退場)出さないの?」


 ・・・レッドカード?


 ああ、あれか。

校長先生の話の中に「彼が嫌がることをした生徒には3ヵ月の接触禁止」という話があって、俺がレッドカードを出せばその子は文字通り3ヵ月間俺に話しかける事すらできなくなるというペナルティーだ。


 先程部屋を出る時に渡された真っ赤なカードを胸ポケットから出すと、佐藤さん以外の女子が一瞬で俺から距離をとり「あんたよあんた!あんたの視線がいやらしかったのよ」「私じゃないし、あの子だし」「ちょっとトイレ行ってくる」「「待ちな」」と急に騒めきだす教室に驚きを隠せない。


 成程。

どうやら彼女達はこのカードが怖くて俺に話かけれずにいたのだろう。話しかけたいが、もしこのカードが出てきたら1人寂しく場外行きだ。それなら誰かが話しかけるのを待ち、俺の許容ラインを把握してから接触しようという魂胆だったのだろう。


 少し悪戯心で女子の集団に向かってカードを持った手を伸ばすと、思いのほか本気で怯えられたのでカードは仕舞うことに。凄いいけないことをしている気分になるから出来るだけ使わずにおこう。

 隣のクラスメイトと抱き合いながら涙目でフルフルと顔を振る女子生徒は心臓に悪い。


「今の所これを使うつもりはないので安心してほしい」


 その言葉に安堵したクラスメイト達。


「でも、使う時にはためらわず使うのでそれも覚えておいてほしいかな」


 コクコクと頷くクラスメイト達。

やってしまった・・・これは早々にやらかしてしまったな。


 俺の静かな学校生活を送りたいという願いにこのカードは欠かせない抑止力だったのに。それを初日で威力の半分を失ってしまった。


 今からでも遅くはない。1人2人くらい生贄になってもらうか?

再びカードに手が伸びそうになるがそれを我慢する。特に何もしていない子に罪を着せるのは駄目だろ。


「と言う訳だから鈴木さん、君にこのカードを出すつもりはないしどちらかと言うと”ありがとう”かな」


「・・・ありがとう?」


「そっ、ありがとうだ。もし鈴木さんが話しかけてくれなかったら卒業まで誰とも会話をしなかったかもしれなかったんだ。もしかしたらレッドカードが出るかもしれない状況で話しかけてくれた鈴木さんにはお礼を言いたい。だからありがとう」


 正直卒業まで誰からも話しかけられないというのは俺の望む展開かもしれなかったが、それはそれで少し寂しさも感じていた俺の矛盾を初日で解消してくれた彼女には素直に感謝を。

 でもこれから大変かもな。


 素直にそう伝えると彼女の頬に涙が伝うのがみえた。

本人も驚いているのか袖で拭うが涙はどんどん溢れて止まらない。「あれ?おかしいな止まらないし」泣きながら笑うというおかしな表情を見せる彼女に少しドキっとしたのは勘違いかなにかだ。


 顔をごしごしと擦り過ぎたのか化粧が剥がれていくのがわかるとつい


「化粧しないほうが可愛いんじゃないか?」


 と、言葉が出てしまった。

確かに彼女のギャルメイクはお世辞にも似合っているとは言い難かったが、まさか化粧の下から出てきた顔がちょっと俺のタイプなのは言わないでおこう。

それに反応したのか体を180度回転させ俺に背を向け


「勝手に見んなし!!」


 顔を隠したまま教室の外へ鞄から小さなポーチを持って走って行ってしまった。

多分トイレかどこかで化粧直しをするのだろう。勿体無い。しかし大丈夫かね?休憩時間ももうすぐ終わりなのに。やはりというか直ぐに次の授業を開始するチャイムが鳴り響くも、彼女は教室には戻ってこなかった。




 

作者の小話⑦


今回の席替えですが実際作者が高校生の時に体験したものです。

引く番号によっては近くに男子がいないという地獄の時期もありました。・・・会話する相手がいない・・・


だけど一番怖かったのは席に座った生徒達を眺めて


「そうかそうか、あんた達はそういう関係か」


と、1人教壇から生徒を見まわして頷く先生だろう。


先生(女性)こえーーーー

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