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絶欲モンスター  作者: ジラフ
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97/111

優先順位


「困ったことになったね」


いきなり出てきて俺と猫を拉致して言うことがそれかよ第一魔王。


「今の状態を端的に表すとこの世界の勢力によって【災】が滅ぼされそうになってる」


「まじか…!」


あんなん倒せんのがいるのかよ。


「手っ取り早く言うと「私が説明するわ!」


「随分と食い気味にぶった切ったな……」


「ええ、影が薄いのは我慢できないわ!!」


今回何もしなかったクリアが張り切りだしたな……やめて欲しい。


「まずは【嵐災】よ。今は巨大な鎧と戦ってるわ、今のところ【嵐災】有利だけど相手は切り札を隠し持ってるみたい」


「おっと全部はやらせないよ。【地災】は勇者達が総出で討伐に向かっている。流石にあの戦力が出てきたらまずいね」


「【空災】のところには【聖女】と【聖者】が向かってるみたいだけど……たどり着けてもいないわ」


ダッサ。


【聖女】と【聖者】じゃあ格落ちだからしかたねえかもしれんが。


「君は裁定者がいなくなるのは困るだろう?」


ニヤついてやがる、ムカつくな。


まあ、ムカつくってことは図星ってことか。


「ああ、俺のせいであいつらが消えるのは避けたい」


「じゃあ決まりだ。他の勢力より先に僕たちで倒すよ。心配は要らないこっちは魔王が揃い踏みだからね」


「それはもう過剰戦力なんじゃねえか」


「いやいや……何があるか分からないしね。現にメフィストは暴走までしたみたいだし」


「ああ……」


嫁に襲われることになったあれか。


「とりあえず【嵐災】と【地災】を優先でいこうと思うけどそれで良いかい?」


「それで良い……」


「あ、それと君のリンゴのことだけど。複製できそうもないからここで一個だしてもらえる?」


「それなら使わなかったこれやるよ」


結局【獣災】にこれ撃ち込んでねえしな。


「そっか……【獣災】は実をつけなかったのか」


んん?


なんか引っかかるぞ?


「大爆発で消えちまったからな。それがどうかしたか?」


「いや……大したことじゃないよ」


これ以上聞くなっていうオーラが出てるわ。


退散が吉か。


「ともかくありがとう、それで君はどっちに行きたい?」


「【嵐災】だろうな。勇者連中とはまだ事を構えたくねえ」


というか、会ったらただじゃ済まない確信がある。


「分かった。僕は【地災】の方に行こう」


「頼む」


あいつらが死んだら俺の寝覚めが悪い。


ま、眠れねえけどな。


「ちなみに【嵐災】は空での戦闘だから気をつけて飛んでね?」


「は?」


「じゃあいってらっしゃーい」


「ちょっ!?」


抗議の言葉も言い終わらないうちに渦に飲まれた。


本気であいつ嫌いだわ。


※※※


【嵐災】と神器鎧零式【伊射奈岐大御神】の戦いは膠着状態へとなりつつあった。


【伊射奈岐大御神】の攻撃は【嵐災】に当たらず。


【嵐災】の攻撃は【伊射奈岐大御神】の防御システムを突破できない。


そんな状態が続いていた。


「くそっ!?当たりゃあしねえ」


「風圧を起こさないような攻撃ってできたかしら?」


「うーん、この大きさだと厳しいよ?


「青!!お前のペットでなんとかなんねえか!?」


「かすり傷ならつけられるけど……それじゃ倒せないわ」


「食べようにも口を閉めるときに逃げられちゃうしねえ」


「KUAAAAAAAAAAA!!!」


風が全方位から襲い来る。


一極集中した風は掘削機のごとくあらゆるものを削り飛ばすだろう。


だが。


風の相手は変態技術国家ヒノモトが作り上げた最新鋭兵器である。


「効かねえよお前の風なんか。俺の【天岩戸(あまのいわと)】の絶対防御は抜けねえ」


「抜けたとしても私の【八塩折(やしおり)】で霧散するわ」


「それもダメだったら【黄泉比良坂(よもつひらさか)】に送っちゃえば無意味だもんね」


風は三重に張られた防御能力によって無効化された。


攻め手の足りぬ千日手が続いていく。


とうとう痺れを切らした赤が叫んだ。


「だぁもう!!やってらんねえ!!ここら一帯消し飛ばせばいいだろ!!」


「……そうね。有効な手はそれくらいかし

ら」


「やっちゃう?」


三人の意思に呼応して操縦桿の中央が開いて空間が現れた。


それぞれがそこに両腕を差し込む。


「壱式、自焼領域突破(オーバーヒート)


「弐式、融合閾値逸脱(オーバーリージョン)


「参式、無限領域解放(オーバーヴォーリュー)


宣言の直後それぞれの身体に限界を超えた負荷がかかる。


「がああああああああああああ!!?」

赤の身体は深部まで焼き焦がされ


「きゃあああああああああああ!?」

青の身体は戻れないほどの変質に悲鳴をあげ


「うわあああああああああああ!?」

黄の身体はどこまでも膨張するのを抑え込む


それを振り切り三人は紡いだ。


目の前の【嵐災】を倒すために。


ヒノモトの民が安心して暮らせるように。


全身で。


全霊で。


その名を叫んだ。


【伊射奈岐大御神】が持つ最大最強の攻撃の名を。



「「「【火之迦具土(ひのかぐつち)】!!!」」」


【伊射奈岐大御神】を中心として球状にエネルギー場が広がっていく。


その範囲内に入ったものは何人たりとも生還できぬ死の領域が【嵐災】へと迫る。


【嵐災】は逃げようとするが中心にいる【伊射奈岐大御神】に引き寄せられる謎の力でそれは許されなかった。


「逃がさねえぞ、この引力は振り切れねえ。逃げてえなら光を超えてみな」


「……終わりです」


「あきらめろー!!」


少しずつ迫り来る消滅に【嵐災】が飲み込まれるまであと数秒。




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