ダルマ落とし
「まずいな……手がない」
このままじゃ俺は守られないだろうし、でも俺自身立ち向かうのは論外だし。
今回詰み多くない?
「殺しちまったらまた来るだけだしな」
「さっきのが三匹になった、これを殺したらまた強いのがたくさん来るわ」
そうなんだよなあ、この強度の敵がわんさか来たらどうしようも……おい待てよ。
だったら一番強いのをアホみたいに送り込めばいいじゃねえか。
どうしてそれをしない?
「まさか……」
個体の性能と数には限界があるのか。
無限なんてもんは存在しねえ、【獣災】にも限界がある。
幸い景色を埋め尽くす雑兵の時期はもう終わったらしい。
なら、殺し続ければいつか本体に相当する最強の一匹が出てくるってことか。
まあ、これは全部憶測であってなんの根拠もない。それでも、無闇に逃げるよりはずっと良いだろ。
「もう手加減なんていらねえ、来るやつみんな殺せ。そうすれば本体が出てくるはずだ」
「正気?どこまで強くなるかわからない相手に持久戦するっていうの」
そりゃあそんな反応するだろうよ。
でもな、戦闘ができなくても。餌にすらなれなくても。
できることはあるんだぜ?
「アシストはしてやる」
「自分で戦えないって言った筈よ」
「ああそうだ。正面戦闘なんざできねえ。それでも呪いを撒くくらいはできる」
「見る限り【原罪】の呪いは表に出てきてないように見えるんだけど」
「いいから見てろ」
今回はそんなに広い範囲はいらない、戦闘が起こるフィールドだけ覆えばいい。詠唱で制御してるんなら、言葉を変えれば範囲も変わるだろ。
イメージは立方体だ。核爆発なんていう巨大なモチーフはいらねえ。
必要最小限の範囲でいい。
俺自身の言葉で定義する。
俺は【原罪】罪の源泉、呪いの親だ。御せないわけねえ。
「俺が求めるのは四辺六面構造体、呪いを詰め込んだ箱」
あー、箱の名前になっちまうな。
まあいいや、イメージにはぴったりだ。
開けたら終わりのびっくり箱、この世に悪をまき散らした箱だ。
「ピースメーカー【呪いの箱】」
カチッ☆
「うおう!?」
確かに目の前に立方体の呪いの空間ができた。あまりにも濃い呪いのせいで先が見えない位だ。
あとうるさい、音じゃなくて見た目がうるさい。
亡霊みたいなやつがずっと苦悶の表情で中をグルグルしてる。
「で?これをどうするの」
「こん中は呪いの渦だ。呪いってのはまじないでもあるだろ。なんか有益なもんも混じってるはずだ」
たぶん。
殺さない呪いらしいし。
「悪魔なら呪いの扱いもお手の物だろ?自分に必要なもんだけ持ってけ」
「簡単に言うわね……できるけど……」
やっぱりできるんじゃねえか。
「時間もないし、さっさとやるわ」
潔く腕突っ込んだな。
「へー、なるほど……ああこんなのもあるんだ。これとこれは良いわね……それにしても本当に無軌道な呪いがたくさん……ええ!?」
なにかあったらしい。
「こんなのありえない……でも【原罪】の呪いならあるいは……」
あ、全身いった。
よく入れんなあ、俺は無理。
「コード333を受理したっす!カスタマイズ機能を見つけるなんてやるっすね!!」
お前……いったいいくつこれにギミック仕込んでんだよ。
「以降からこのカスタマイズは【呪いの箱】っていうワードとスイッチで発動するっす!!」
有難いことで。
「じゃあ頑張るっすよー!!」
なんか疲れた……。
あれ?箱にヒビ入ってね?
ちっちゃい分継続時間長いわけじゃないのか?
違うな、内側からなんかされてる?
「あああああああああああああ!!!さいっこうに良い気分だわ!!」
内側から最高にハイな悪魔が出てきたんだけどどういうことだ。なんかオーラみたいなもん纏ってるんですけど。
「これすごいわ、【狂戦士化】に【痛覚無効】に【限界無効】に【超感覚】極め付けに【存在極化】まであるなんて」
俺の呪いすげえ。
弾こうと思ったら全部弾かれるけどな。
「その千倍呪いがあったけど、呪いの取捨選択できれば最高よ」
普通できねえんだよ。呪いの取捨選択。
「これなら幾らでも戦える……あら?」
何かが砕ける音がした。
ガラスのような陶器のようなものが割れる音は魅了にかかったはずの奴らから聞こえていた。
解けたな。
「あー、私経由で伝染っちゃったか」
聞きたくなかった。
「これは……すげえな。今なら砂漠全部を黒砂で埋められそうだ。これで【獣災】を……!」
おっさん覚醒。
「これが我らの本当の力……我らが血脈の深淵とはこういうものなのか。仇を討つ時は近いな」
アバ○ー五人がまとめて覚醒。
勝ったな。
んん?
三匹が砂の下から出てきた口に食われたぞ!?
砂の下から盛り上がっていく巨大な獣の輪郭が見える。
「小賢しい……小賢しいぞ人間」
でっけー……あれって【聖災】と同じくらいあんな……【獣災】の本体か……でもいきなりお出ましは早すぎねえか……?
「ゆるりと食い尽くすつもりであったが。性急に滅びたいらしい」
【獣災】の体が崩れていく。
「なんだ……?」
「来たわね」
おいおいおい、崩れてんじゃねえよアレ。
分裂してやがる、数の暴力はちょっと辛いんじゃねえかな!?
やっぱ無理かもしれん。
『露払いは私がやろう』
あ、忘れてた。
『開門』
ひゃっほう!!さすがは第三魔王だぜ!!
悪魔の軍勢と獣の軍勢。どっちが強いかは証明済みだ。
【獣災】を倒す道が見えてきたな。




