魔王が来たりて文句を言う
「やあやあ、まさか本当に【聖災】を倒すなんてびっくりしたよ」
ニタニタしながら登場したのは第一魔王だった。
「やってやったぞ、協力しろ」
「まあ待ちなって……そうだなあ……後3…2…1…来るよ」
『創造主アース様より直々の試練が下りました。NO.1【世界平定】NO.2【敵対勢力の無力化】NO.3【地球化完遂】以上です』
……ちょっと待てや、もう隠す気もねえってか。
侵略する気バリバリだなおい!?
『なお【世界平定】には【裁定者】5名の回収が必須事項です』
……まあ……あいつらは……元に戻すつもりだったから別にいいが。
「どうだい?お告げがあったろう?」
「おかげさまでな、どっちみちやることに理由が増えただけだ」
「そっか。それじゃあ僕たち魔王は君に協力するよ。約束もあるしね」
まずは……どうするか。
「クリア、一番まずいのはどいつだ?」
「ん?そうねえ、一番殺されそうなのは【獣災】かしらね。あれは運が良ければ子供にもやられるわよ。まあ運が悪ければこの世ごと全部食い尽くすんだけど」
「……どういうことだ?」
「砂漠に落ちた本体が無数に分裂した巨大な炎獣が【獣災】よ。それは無尽蔵に増えそして食う。まだ一定以上には増えてないみたいだけどいつまでもその幸運が続くわけはないわね」
「子供でも倒せるっていうのはなんだ?」
「核があるのよ、一個体に砂つぶのような核がね。それを殴られでもしたら【獣災】は死ぬわ」
「ああ、それなら早くした方がいいよ。今はアレェナとアズールの二国の精鋭が頑張って数を調整してるところだから。だいぶ辛くなってきてるようだけどね」
「……お前らも手伝えよ」
「ん?これなら多分「私が手を貸してやろう」
影からずるりと出てきたのは第三魔王。
「え?お前かー……聖女にボコられる奴はちょっと……」
「相性というものがあるのだ。この後にそんな口は二度ときけないようになるのが見ものだな」
「えー……」
「言っとくけど、メフィスト君は対多数の戦闘じゃあ魔王最強だよ?」
「一応私からも言うけど、【悪魔王】メフィストは上から数えた方が早い実力者よ本当に」
信じらんねえ……こいつギャグ要員じゃねえの?
「そんなに疑うなら模擬戦してみる?空間と敵ならちょちょっと用意できるけど」
一瞬で周りの風景が変わった。
そして目の前には武装した大軍。
「うおう!?ちょっおま!?」
「これっぽっちか、足りんな」
第三魔王が地に手をつけた。
「真名解放。三法【我が名は天と魔の証明】」
「おいおい嘘だろ……」
地面から地獄の門が出てきたぞ。
いや比喩とかじゃなくて、あの【地獄の門】だ。
ロダンが作ったやつ。
「さあ、眼前の傀儡を蹂躙せよ。これは王命である」
「「「「「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」
うーわー、引くわー。
門から出た大量の悪魔が大軍を押しつぶす様とかもう虐殺だよね。
でもまあ……俺が言ってたことが間違いだって分かって良かった。
「悪かった。第三魔王心強いな」
「分かればいい」
門が閉じた。
同時に悪魔も消えたってことはあれは門が本体か。
「それじゃあどうするの?僕としてはメフィスト君はちょっと離れた所から援護して、君がアレェナとアズールの人たちと【獣災】を相手すればいいと思うよ」
「俺戦えねえの知ってんだろうが、俺が行ったところでできることなんて……」
「君がやるんだ、君のリンゴでやるんだよ」
ああ、ばれてるなこれ。
「君以外が植えたリンゴは多分塗り替える前に世界を吸い尽くす。でもどうしたことか君が近くにいた時のリンゴは【聖災】だけに留まったんだ。あのリンゴはこれから絶対に必要になる。そうだろ?」
「その通りだよ……でもな。多分【災】に植えたリンゴは本体に食われるぞ」
実際クリアに食われたし。
「ああ、それなら大丈夫。サンプルが増えれば解析も楽になるから。その問題は僕がなんとかしようじゃないか」
こいつなら本当になんとかしそうで怖い。
「……なら良いが……」
「じゃあしゅっぱーつ!!」
「おまっ!?」
景色が溶け出した、多分これで俺は【獣災】のところに送られるんだろうなあ。
せめて前置きをしろよクソが!!
※※※
砂漠地帯にて。
「おらあ!!黒砂を味わいな!!」
黒砂王国アレェナの戦士長ハシムの手には一握りの黒き砂が握られている。
それは砂漠には存在しなかった謎の物資。
長年砂漠との闘争を続けたアレェナが生み出した叡智の結晶である。
その名を【黒き支配】という。
自在に操れ、かつ無尽に増やせる砂である。
金属のごとく硬くなることも水の如き流体になることも可能な万能武装だ。
その黒砂を用いて今やっていることは間引きである。
【獣災】の数が増えすぎぬよう、ゆっくりと確実にその数を減らしていく。一匹をいきなり殺すとその報復に一気に夥しい数の【獣災】が生まれてしまう。
故にゆっくりと複数匹を真綿で首を絞めるように殺すのだ。
最近助けた【五碧】と名乗るアズールの者と協力して根本的な【獣災】討伐を目指しているが未だに糸口がつかめていない。
このままでは確実にジリ貧である。
そんな折に砂漠になにかが降ってきた。よりによって【獣災】の群れのど真ん中に。




