聖なる負精霊
「何言ってんの!?」
食われるのなんざまっぴらご免だ。俺がお前らを食うのを嫌がったから今のお前がいるというのに。
「言ったと思うけど今の私には燃料が足りないの、何かしようにもこれじゃあ虫と竜が戦うようなものよ。それに本当に咀嚼して飲み込む訳じゃないわ、外側じゃなくて中身が欲しいの」
「じゃあどうすんだよ?」
「……キスでも良いのだけれどそれは多分負担が大きいでしょうから、そうねちょっとしゃがんでもらえる?」
キスなぞされたらお前でも余裕で押し倒すぞ、まあモノがないからナニもできないけどな。
「こうか……?」
「ええそうよ」がぶっ!!
今度は首だと!?
「いだだだだだだだだだ!!!本当に食うわけじゃねえって言ったばっかじゃねえか!!」
「仕方ないでしょう、唾液交換が駄目なら血液でやるしかないんだもの」
「おいばかやめろ、それってお前頸動脈ぶち切るつもりか!!」
「けいどうみゃく?よく分からないけど太い血管が一つ切れたくらいであなた死なないでしょう?」
「死ぬわっ!!出血多量かショック死か多臓器不全かは分かんねえけど死ぬっ!!」
「私の知らない言葉で言われても分からないわ」
「ちくしょう!!ここにきて言葉を恨むことになろうとは!!」
ぶちっ!!
あ、嫌な音がした。
「あああああああああああああああああああ!!!」
なんかよく見えないけど身体が寒くなってきた。
「あら……なかなかの味ね。これなら常飲してもいいくらい」
「お前の賞賛なぞいらねえ!!常飲もさせねえ!!」
「そんなこと言うのなら余計に飲んでやろうかしら」
「すみませんでしたどうか手短によろしくお願いします!!」
「もう良いわ、傷はかってに塞がる」
「そんなはず……あれ?」
確かにクリアが離れたところに傷はねえな。
「これでどうにかなるんだ……な……どなた様ですか……?」
黒いドレスをきた貴婦人みたいなのが目の前にいるけど……クリアには似ても似つかないぞ。
こんな俺好み美人じゃないし。
「これで私がクリアじゃない何かだと思うならあなたの頭は帽子を置く台ぐらいにしか役に立たないしその目は洞穴かなにかよ」
「いやいやいや、姿変わりすぎだろう!!」
「姿って……ああ……コレがあなたの好みなのね。あなた年上のお姉さんが好きでしょう?それとも母親に飢えていたのかしら?」
心当たりは多分にあるがそれを言うのはなんか負けな気がする。
「あなたの血肉で姿を得たのだからあなたの理想が反映されたってことよ、それに負覚醒状態だと姿はかわるものよ。そうねえ名付けるなら【夜想体】ってところね」
「それであのでかい羽はなんとかなるのか」
「んー。あと一押し欲しいわね、なにか他にないかしら?」
「あとってお前、他にはリンゴの種くらいしか出せないぞ」
「リンゴ……?いいから出してみてくれる」
「今は何の意味もないと思うが……。始まりの罪は裏切り贖い難き罪の烙印。されど贖罪は叶った原罪は罪では無い。故に空白が生まれた。主よ赦したまえ人類が新たなる原罪を背負うことを。禁断の果実の種を此処に【罪深き地球の実】」
ゴトン!!
はい、種どーん。
「こんなもん何にするってんだよ……」
「っ!!これならなんとかなりそうよ」
その種をどうするんですかねえ。
「これをアレに埋め込めばそれで終わりよ。すぐに全て飲み込まれるわ」
「でもアレに埋め込めんのか?」
「見てなさい」
あっ、飛んでいってしもうた。
ドレスのリボンが翼みたいになってんのか……かっけえ。
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
「見苦しいのよ!!」
流石にでけえと人間くらいの大きさの飛ぶ奴をたたき落とすのは一苦労か。
「簡単に負覚醒するなんて恥ずかしいったらありゃしない!!」
負覚醒って恥ずかしいのか。
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
おうおう、なんかすげえ事になってんな。羽からレーザーが出てやがる。
あれってほぼファン○ルだな、俺自分が弱くて良かったわ。あんなん飛んできてたら消し炭だわ。
「きゃあああああああああ!!」
おい待て、お前がやられたら本気で詰みなんだが!?
「くそっ!?何かできる事はねえか」
黒い羽はまだ飛んでるが俺には動かせない、思い出せ俺が羽に救われた状況を
「俺の危機か……くそっ!!」
もう一回死にかけなきゃ駄目か!?
「突っ込むしかねえ……頼むぜ……クリアが死んでも俺が死んでもダメだからな……!!」
光の線が飛び交う中に駆け込んだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
一面光りすぎてて何がなにやらさっぱりだ。
それでも俺はまだ当たっていない。
「良しっ!!」
黒い羽がレーザーをそらしている、これなら当たらない。
「クリアっ!!」
「助けは呼んでないわよ!!」
「うるせえっ!!お前がやられたら次は俺なんだよ!!」
道はできた。
夥しい量の黒い羽が舞う中で一際大きな一対の翼まで。
「今よ!!」
クリアがその道に通すように一条の光になる。
そしてーーー光が止まった。
「やったか……!」
「きっちり核に撃ち込んできたわ」
いつのまにか横にクリアがいた。
翼は地に横たわっている。
「はー……しんっど……!」
座り込むのも仕方ねえだろ、ここまですり減らしたのなんかこっち来たばっかのときくらいだ。
「………Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
「おいおい……嘘だろ?」
起き上がるのかよ?勘弁してくれよマジで……こっちはもう動ける気がしねえよ。
「最後のあがきよ。もう逃れられない」
「Aaaaaaaaaaaaaaa……!!」
内側から根っこが生えてきてやがる、
「あとは内から食い破られるわ」
バキバキと音を立ててまあ……木に食われてんなあれ。
「……aaaaaaaaaaaaa」
おー、完全に木になったな。
「そして、実をつける」
「あれは……!?」
実ついちゃった。
あ、落ちた。
「これは私のよ」
そしてクリアの手の中に。
待て待て落とせよ、そうしないと地球化が進行しないじゃねえか。
「ちょっ「あーん」
食われたわ……
「やっぱり自分の力は馴染むわね」もっしゃもっしゃ
「ああ……何よりだ」
せっかく実ったのになあ……




