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絶欲モンスター  作者: ジラフ
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今代勇者


先先代勇者騎士団長と先代勇者剣聖の名はよく知られている。


しかし今代の勇者はそこまで有名なわけではない。どちらかといえばその仲間の方が有名なくらいである。


それはどうしてか。


理由は簡単である。今代の勇者は滅多に戦わない。


仲間を扱う事に長け、商才は神がかり。


自分が出る必要がないほどの頭脳。


今代勇者ウェルス・ビーは勇者というよりも集団の長としての素質が極めて高いのだった。


大多数の人間はウェルスを大商会の会頭だと認識している。


無理もない、彼が最後に戦ったのはいつのことだっただろうか、それさえも分からないほどなのだ。


彼はいつも座して言う。


「嗚呼、今回も決着チェックメイト)だ」


世界の危機に瀕したこの状況でウェルスが下した判断は全物資放出だった。


もちろん慈善などではない。


世界を救った後で利益を出す算段はできていた。


長い金髪と揺らし金色の瞳を歪めて笑う。


「全て予想通り計画通り。この世は私の手中にあるのだ!!!クハハハハハハ!!」


突然扉が勢いよく開かれた。信頼する部下の一人だった。


「会頭!!大変です!!」


「知っている。ここに向かって災害が来ているのだろう?」


「いえ……それが」


「皆まで言うな、私は全て知っている。【聖災】だろう?」


「いえそれが!」


「言うな言うな、対策は万全だ。【聖災】なぞ私にかかればただの路傍の石と等しい」


「【聖災】が倒されました!!」


「は?」


「やった者は不明です!!」


「はぁ!?そんなことがあるのか!?」


「事実です!!神託がおりました!」


「そんな……ばかな……」


今代勇者ウェルス・ビーの持つ超高精度予測能力【我が手中に世界在り】が初めて外れた瞬間であった。


そして時間は巻き戻る。


※※※


「あー、言っちまったなあ……なんであんなこと言ったかなあ。舐めんなっていう気持ちが溢れちまったなあ……」


『意見。当方としてもノープランで災害一個潰して来たら協力しろと言うのは予想外』


だってよお、役立たず役立たずってお前腹たつだろうが。


『事実を言われて憤慨するのは愚か者であるという言葉がデータバンクにある』


やかましいわ。


だからって、いきなり荒野にぶん投げられるとは思わねえだろ。


『第一魔王ソロの発言からするとこの場所に何かがある』


確か……「じゃあやってみせてねー、頑張れー」だったか。


それでここに落とされたからってなんの確証もないだろ。


『……反応あり、聖性の急速上昇を確認』


それ俺のじゃねえの?なんも見えねえしなんもいねえし。


『発生源……出現」


うっわ……光る翼が十二枚。


『照合成功。対象を聖精霊クリアの負覚醒体マイナス)【聖災】と認定』


これがクリアか。


かっこよくなったなお前。


「ーーーーーーーーーーーー」


金切り声みたいな音がする。


『警告、左方へ二メートル移動を推奨』


なんだいきなり……動くけどさ。


「ーーーーーーーー!!」


「おわぁ!?」


光の柱が俺のすぐ横に!?


「ーーーAaaaaaaaaaaa!!!!」


うわー、光が増して臨戦態勢バッチリって感じ?


『警告……け……ジャミン……より……不可……負覚醒……負の……掌握……能性あり………………」


おいおいおい!?


お前がいないとマジでただ殺されて終わりそうなんだけど!?


「Aaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」


「あっ」


羽が腹に刺さった。


「いってぇええええええええええ!?」


嘘だろ!?


痛覚なんて……もう火傷してないんだったー!!


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


「ーーーーーーーーーー」


やめろやめろやめろ、羽を共振させるんじゃねえ!?


傷が震えて広がる!!


「があああああああああああああ!!!」


やっべ……これ……死ぬ……。


仕事しろや……負の聖……なんのためだよ……。


「ーーーーーーーーーー」


あれ?だんだん痛くなくなってきたぞ?


死ぬ間際の脳内麻薬ドッバドバ状態に入ったのか……無理もねえ……こんな傷が……。


「ん?傷が……ない?」


たしかに羽がぶっ刺さっていたはずなのに……どうなってんのこれ。


「なんだこれ……?」


そして俺の前で舞っている黒い羽。


俺に刺さっていたのは白い羽。


「まさか……」


羽を動くように念じてみる。


動かない。


「ですよねー!!」


分かってたよ、俺に戦闘力が与えられることはねえってな!!


「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」


「うおう!?」


今度は翼自体で殴ってくんのかよ!?


避けれんのか!?


「くそっ!?」


不思議な感覚があった、翼に当たる直前俺は不可解な動きをした。


ふわりと。


まるで翼があるかのように浮いた。


「はあっ!?」


意味が分からない。こんなことできるはずがない。俺にはこんなことはできない。


第一飛ぼうだなんて思ってもいない。


なのに。


「なんじゃあこりゃあ!?」


黒い羽に包まれて浮いている。


さっきまでは無軌道に風に乗っているだけだったのに……


「これか……これが負の聖の効果……?」


意味が分からない。聖性は都合のいいことが起こりやすくなっていたが……それなら黒い羽なんていらないはずだ。


何が違う?


何ができる?


俺はどうやったら生き残れる?


武装の平和創生爆弾は使えない。


……待てよ…?


本当に使えないのか?


あの場所だから使えなかっただけじゃないか?


「Aaaaaaaaaaaaaaa!!」


「ああもうどうにでもなれ!!」


スイッチを取り出す。詠唱はした方がいいのかもしれんがしなくてもいいだろ。


とにかく時間がない。


「おらあっ!!」カチッ☆











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