山登り 登頂
ごめんなさい雪山っていうか……高地を舐めてました。
なんかそんなに変化ないから余裕かなとか思ってました。
半分を過ぎたころから急激に気温が下がってきたらしく植物は減っていくし、足場はごつごつしだすし。
極めつきには障害物がないから風が強いせいで吹雪がえげつないんだけど。
「大丈夫か……旦那様……もう少し……じゃぞ」
「はい……なんとか……」
エルフどもになんとかしろよと言いたいがこいつらを押しのけて歩いてきてる手前そんなことも言えねえ。
幸い寒さは感じねえが息苦しさと視界の悪さ、風で身体がもっていかれるのには閉口する。
冬将軍がやばいのを身をもって体感してる気がする……ごめんなナポレオン……「寒さで瓦解とか雑魚かよ」なんて思って……冬将軍はとてつもない強敵です。
「あと少しで……ニブル・ゴラドの範囲内に……」
「ニブル・ゴラドの……範囲……?」
突然風と雪が晴れた。
今までの環境が嘘だったかのように晴れ晴れとしている。
眼前に広がったのは山地をくりぬいてつくったかのよう巨大なすり鉢状になった場所にできた街だった。
一番底には城がそびえ立っている。
「すごい……こんなものを……こんなところに……」
観光地には飽きるほど行ったし、秘境とかそう呼ばれるところにも金にものをいわせて行き尽くした。
それでも……この光景にはなにか訴えかけられるものを感じる。極寒と乏しい資源しかないだろうこの場所に住み続けこんな立派なものまで築きあげたという事実。
人の手による積み重ね、諦めないということが何を生み出すのかという結果をたたきつけられた。
そしてその在りようはどことなくかつての都市を思い出す。
それと追随して人の在り方も想起する。
「旦那様……泣いておるのか?」
「え……?」
そうだ感傷に浸るなんてありえねえ、俺は親父が死んだときだって泣かなかったくらいだ。
それでも一応目に手をもっていく。
「そんな……」
その手は濡れていた。水分を一度もとっていないこの身体でこの水分がどうやって生み出されているのかは分からないが確かに俺の目は涙をこぼしていた。
自覚してしまった。
考えないようにしていた、とりあえず斜に構えて正面からまともに向き合わないことで目をそらしていた。
それでも今どうしようもなく思い知らされた。
俺は恋しいんだ。
もとの生活に戻りたいんだな……きっと。
「帰りたい……なあ……」
思わず言葉が漏れる。
それから程なくして想いが溢れた。
「あ……ああ…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
焼き切れるような激情が止めどなく心を灼いていく、言葉にはできない、とても足りない、まるで表す事ができない、言葉の限界故に叫びだけが喉を通っていく。
感覚が一つ一つ潰れていく、いらない、今の俺にはこの世界を直視するような力はない、いらない、この世界の匂いなど俺には合わない、いらない、このせかいのかんしょくなぞくそくらえ、いらない、いらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらない
このせかいはいらない
かえりたい
※※※
天界にて
アースの表情は珍しく険しかった。ラセンは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「……壊れそうだな。この設定なら問題はないはずだが……いやはや我が子とはいえ心というものは難しくなりすぎたな」
「それもまた淘汰の産物だろう、扱いきれないのなら奪ってしまえばいいだろうに」
「その通りだ、だが私はこの心もまた愛している」
「ではどうすると?」
「少し早いが……枷を外すことも考えよう」
「そいつなしでもお前の計画は成り立つのか?」
「我が子の愛に賭けるばかりさ……」
そう言うアースは自分の考えが外れるなど少しばかりも思っていない様子である。
「信頼しているんだな、その方向が自分か子かは分からんが」
「両方だ、と言ったらどうするんだ?」
「お前の世界の言葉で返してやろう、とんだ自己愛者だよ。お前は」
「お褒めにあずかり光栄至極だよ」
「ふんっ……」




