山登り 五合目
ここはニブル・ゴラドへの道の半分くらいらしいが未だにそれらしき様子はない、全然気温下がってないし木とかも変化ないし。
時折出る獣とか魔物とかは害意がゼロどころか近寄ってくるし。
先代も俺と一緒にいる手前殺生はしない方針らしく威嚇的なものだけですませている。
「この辺りで泊まることにしようと思うのじゃが……それはなんとかならんか」
先代よ……俺もそれはずっと思っている。
どうして俺の周りに魔物みたいな奴らが貢ぎ物的なサムシングを置いていくのだろうと。
「私にも何がなんだか……」
「旦那様は魔王に会ったことあるじゃろ、そのときになにかされた覚えはないかの」
なにかっておまえ、そんなの一つしかねえわ。
「第六魔王の印みたいなものをもらいました」
「それじゃよ、それは多分第六魔王の関係者であるという印じゃろう。万が一にも第六魔王を怒らせる訳にはいかないからご機嫌取りをしてるんじゃろうて」
「もういいって言ったら止めてくれると思いますか?」
「それ以前に言葉は通じないと思うんじゃが……種族ごとに言葉が違う上に方言がキツいからのう。どうやっても言葉で意思を伝えるのは難しいと思うのじゃ」
「あ、それは大丈夫です」
なんせこいつらが何を言っているかは全部聞こえていたから。一応確認だけとってみたが先代もよく分からんらしいからやってみてもいいだろう。
今来てるのは……なんだろうアレ。ナメクジの下半身に人間の体か……何アレ?
「珍しいのう。粘人がこんなところに現れるのは稀じゃ」
サラーっていうのかあれ……なんか好きな人はすげえ好きそうなデザインしてる。俺は完全に守備範囲外だから少し引くわー。
「これは私たちからの貢ぎ物です……第六の使者様……どうかお納めください……」
んー、これはあれだね。瓶に入ったローションだね。こんなものを何に使えというのか……こっちに来る前は色々と塗りたくったことはあったが……。
「すみませんどうしてこんな風に私に貢ぎ物を持ってくるのですか?」
「ひっ……!お気に召しませんでしたか……」
震えておるなーぷるぷると。
「いえそういうことではないのです。私はこのようなものをもらうような覚えはありません、どうしてこのように貢ぎ物が運ばれてくるのか分からないのです」
「ご存じでないのですか……?あなた様には第六様の印が刻まれております、それはあなたに第六様と同じだけの扱いをせよというものです」
「つまりは王への扱いをしなければならない状態であるということですか」
「そのとおりです……ですのでこのようにそれぞれの部族の最高のものが置かれているのです」
「ちなみにこの瓶の中身は何なのでしょう……?」
「これは私どもの粘液です、薬の材料になったり潤滑油の代わりになったりするものです」
「はぁ……なるほど。ではこれはお返しします」
「お気に……召しませんでしたか?」
そんなおびえなくてもいいのに……いじめたくなるじゃないか。
「そうではなくて、私は貢ぎ物などいらないので全部持ち帰っていただきたいのです」
「もしかして……身体のほうが欲しいということですか?」
身を抱いて震えなくてもいいから。
守備範囲外だから。
「いえ、私は神に捧げた身ですので私自身の持ち物はいらないのです」
邪魔だし。
「それは誠ですか……!」
「もしできるのならばここにある品は全部お返ししたいのです、なにか良い手立てはないでしょうか?」
「あります……私達粘人は一方通行ですが思念を送ることができるのです。少し見苦しいかもしれませんが」
「是非お願いします。これは皆さんで持ち帰っていただいたほうが助かるのです」
「では……」
見苦しいと言ってもそんなひどいもんじゃねえだろ、こちとら目の前で自分の身体がはがれ落ちて別のものになるのを直視できるんやぞ。
ん?ナメクジのようすが?
「う……く……はぁ……っ……あんっ!」
嬌声を上げながらナメクジの上半身、つまり人間の部分が自分の口の中に手を突っ込んでおります。しかもかなりえぐいところまでいってない。
「あっ……やんっ……ああっ……もうすこしで……いく……」
うわうわうわ、なんだなんだ……腹の方がぼこぼこ動いてる……こわー……。
「も……もう……少し……」
あ、止まった。
「いっくうううううううううううううう!!!」
うるせえなコレ……それで思念はどうなった……。
「はあっ……はぁっ……これでメッセージはこの辺りの部族に送られました」
「今のでですか!?」
よく分からん劇場を見せられただけなんだが……。
「ええ、体内にある器官を刺激しないと思念を送れないのです……同族内ならそんなことしなくてもいいんですが……他のところにまで送るとなるとどうしても活性化させなければならないので」
「負担をかけてしまいましたね……」
「そんなことはありません……これは定期的に行っていることですので。そんなことよりこれらを回収できる方がありがたいのです。突然の訪問でしたので無理矢理絞りだした貢ぎ物もたくさんありますので」
「申し訳ないことをしました」
「こちらで勝手にやったことです、お気になさらないでください。それでは私はこれで……」
「ありがとうございました、どうかお気をつけて」
思ったより移動速度速いな……。
「……旦那様……すごいのじゃ……ワシには何を言っているか全く分からんかった……」
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ニブル・ゴラド 地下
第一魔王ソロは退屈そうにイスに座っていた。
「お?来たねってあれまだ半分くらいじゃん。君たちがこないと状況がぐるぐるしないんだから早くしてよね」
ソロは粘人が発した思念を感じ取り聖者達の位置を掴む
「でもな、それまでずっと待ちってのもつまんないよねー」
ソロの手が何かをたぐるように動く。その手を半透明の腕が掴む。
「つまんないの……私と一緒にいるのが」
その身体は暗く濁っている。危険な兆候である。
「いやいやいやそんなことは全くこれっぽっちもないんだけどね?」
「なら……もっとかまって」
「分かった分かった」
ソロの介入が幸運にも防がれたことで数千単位の命が救われたがそれを知るものは誰もいない。
スモモから見た聖者と粘人
粘人「○△×☆○△×☆!!(謎のうなり声と奇妙な破裂音)」
聖者「○△×☆○△×☆!!(なぜか同じような音が出てるが口が普通に動いている」
スモモ「(旦那様の喉と舌はどうなっておるのじゃ……)」




