地雷処理
『加えて精霊とエルフの干渉を禁止し、この場での因果への干渉を防ぎます』
さらに難易度あげてきやがった。そんなに気にくわなかったか。
「ワシは……なんなんじゃろうか……ワシは……」
滅多なことは言えないが、言わなければこいつは終わる。
「あ、えと……その……だな」
「せいじゃどの……?」
そりゃあ違和感があるのは仕方ない、俺が自分が思うがまま話してたことはないからな。
「私……クソ、気持ち悪いな。もう俺でいいや。俺はお前のことなんて知らない。どんな風に生きてきたかもどんなことを抱えているのかも知らない。勇者なんて言う役割の辛さも知ったこっちゃない」
「せいじゃどの……なのか?あまりにも……違う……」
それでも押しとおすしかない。今の俺は聖者じゃない。
「いいから聞け、だから俺はここでお前を救うことはできないし誰かがお前を救ってくれることもない。お前が選んだことだろう」
「ワシは……先代とは違う……望んで勇者になぞなったわけではない……その場を生き延びたらそのままこうなっていただけなんじゃ」
「そんなことは問題じゃないんだよ、お前はどっちみち流されてここまで来たんだろ?」
俺はそうだった、成り行きに流されてこうなった。勝ち組だと思って楽しんでいたがな。
「流されてなぞおらぬ……ワシにはこうするしかなかったんじゃ……名を捨て、家族を置き去りにして、仲間を喰らいながら生きるしかなかったんじゃ……」
「途中で死のうと思ったことは?」
「あるわけないじゃろ……ワシが死んだらこれまで犠牲にしてきた者たちに顔が立たぬ……」
俺はあるけどな、飽きて死のうとおもったこと。
「捨ててきたものに未練はあるか?」
「ない……わけないじゃろ……」
かかった……未練があるのなら。それでどうにかこじ開ける。
「捨てたものを取り戻せるとしたらどうする?」
「そんなことはできないんじゃ……勇者になったワシにはな」
勇者って制約あるのか……それは初耳だが問題はない。
「お前に俺がやれるものが一つだけある、違うな……お前に返してやれるものがある」
というかこれでどうにかならなかったらその時に考えよう。
「なにを言う……たとえ聖者だとしても……そんなことは不可能じゃ」
これも多分、こっちに来てから身についた勘なんだろうな。たぶんこいつにとって大事なことだということがなんとなく分かる。
まあ、実際にはさっき喋ってた奴がポロッと言ってただけなんだけど。
「これがお前にとって大切なもののはずだ。お前の名を俺は知っている」
「なん……そんなはずないじゃろ……ワシの一族は……ワシが看取った……ワシの名は……もうこの世界から失われた。ワシを知っている者はいない……」
ここにはなくても他の世界の奴は普通に知ってたからな……。
「いや俺は知っている、お前の名前を」
「嘘じゃっ!!ワシはだまされんぞ!!さてはお前は聖者殿の体を乗っ取った別の奴じゃろ!!」
あー、めんどくさくなってきた。多分これ以上時間がかかったら本気で聞く耳なくすな。
「それ以上喋ったらお前を聖者殿ごと斬る、聖者殿もそれが本望だろうて!!!」
いやそんなことしたらフンコロガシが……こいつだけでも多分なんとかなっちゃう気がするな。
というかシンプルに死にたくない。
「さあ、いますぐ往生せい!!」
切っ先がのど元にあるとすごく喋りづらい。貫かれる前にさっさと言ってしまおう。
「スモモ、それがお前の名前だ」
「えっ……?」ブスリ
こいつ本当に刺しやがった!?名前間違ってないはずだけど!?
「うそじゃ…ワシの……わたしのなまえ……そんなはずない……そんなはず……!!」
そういうのいいから……さっさとこの刀抜いてくれないかな……。
「ごぶっ……ちゃんと返したぞ……これでお前がお前でしかないことを……思い出せ……」
「せいじゃどの……!!」
やっと抜いたか……いてえ……熱い……からだにちからがはいらねえ……
「いやじゃ……いやじゃ……もういちど……わたしの名前をよんで……わたしは……!!」
ようやく目に光が入ったか……これで責任は果たしたな……死ぬのか……俺は……死んだ後はどうなんのかな……死後握られてるからな……ろくな事にはならないだろうな……。
「いや……いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
女の叫びは耳に痛い……。
「死なせない……絶対に……もう一度名前を呼んでもらうためなら私は禁忌を破る……」
手首……斬って……なにしてんだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい……私は私のわがままで……理を歪める……それでも……わたしはまた名前を呼ばれたい……真名を呼んで欲しい……」
もう目は開かないが……なんだか鉄くさい味がする……それにしてもねむいな……ねむい……ねてしまおう……かな……




