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絶欲モンスター  作者: ジラフ
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勇者の地雷


「以後お見知りおきを(紙)」


筆談キャラはあんまり見ないな。しかしまあ同じ銀髪だしどことなく顔が似ているような気もする。


「もしやあなたは【無垢】様の縁者ではありませんか?」


「なぜ分かったのですか!?(少し乱れた字)」


表現豊かな字だことで。


「流石は元紅蓮様といったところでしょうか。その眼力には敬服いたします(紙)」


「いえ、ふと思ったことを言ったまでです。すみませんができればこの二人が何をしているのかを教えてくださいませんか?」


今もずっと手を出しては斬り合い続けているんだけどいっこうに何かが決まった様子がないし。普通のジャンケンじゃないことは分かった。


「分かりました。剣士の決闘法ジャン剣についてお教えしましょう。遙か昔に存在したと言われる剣の神であるジャンが生み出したとされる幻の流派においてもめ事が起こった際には拳、刃、爪の三種を形象した手の形を出し合うことで血を流すことなく事をおさめたという伝説がもとになっています。しかし実際にはそうそう上手く諍いが収まることは少なく遺恨が残ることもしばしばありました。やはり剣の腕で決定するべきではないかという考えが出たのです。そこで出した手によって仕掛け手と受け手を決めその次に一合打つのをくりかえし体に刃が触れた方が負けという今の方式が生み出されたというわけなのです。もちろん打ち合いの際に実際に傷を負わせてはいけませんしそうした場合は剣士としては最大限の恥ですのでだれも相手を殺したりはしません。自信がない場合は従来のジャンケンをすれば良いだけですしね(紙)」


こいつの筆記速度どうなってんの?いくらなんでも早すぎない?さてはおめーその羽ペンと羊皮紙マジックアイテムだな。


「あ、そろそろ決着がつきそうですよ(紙)」


え?永遠にやってそうなのにそんな簡単に終わるわけ……ほんまや。


「はあっ……はあっ……!!」


「息が上がってきたのう、ずっと聖堂におるから持久力が落ちたんじゃろ?」


「あなた……っみたいな。化け物と一緒にしないでください……」


「……おうおう、口だけは達者に動きよるわ。それでは次で終わりにしようかの」


じゃんけんの結果は剣聖の勝ち。


「あーいこで」


もう無垢には声を出す気力もないか。


「ほれっ」ぽすっ


無垢の脇腹に剣聖の刃が触れた。


「私の負けですか……」


「そりゃあ勇者が簡単に負けるわけにはいかん、相手がたとえ聖者であっても」


「今度は負けません……よ」ぱたり


あ、倒れた。


「お気になさらず。いつものことですので。兄のことは私に任せておいてください(紙)」


そうなのか、でもたしかに手慣れた感じで担いでるから大丈夫そうだ。


「ふふふ、どうじゃった聖者殿?ワシの強いところはしっかりと見たか?」


けんせいがほめてほしそうにこちらをみている。


「少しはこれでワシをつれて行く利点を分かってもらえたか」


なんだかこの体になってから目敏くなった気がする、こいつがさっき化け物と呼ばれたときに不自然に顔がこわばったのもはっきり見えたしな。それも聖性のせいなのかそれとも咎人のせいなのか。まあいいや、そこをつけば良いって事もなんとなく分かるし。


「あなたは化け物ではありませんよ。あなたは勇者である前にあなたなんですから、そのことを忘れてはいけません。たとえ何千年生きても、たとえどれだけ力を持ってもあなた自身を見失ってはいけません。私はあなたと会って一日もたっていませんがなんとなくそう思います。出過ぎた言葉とは思いますがどうか心の片隅にでもとどめていていただけたら幸いです」


言おうとしたことの三倍くらいの文量が口から出て正直びっくりした。あなたはあなたですぐらいで終わりにしようと思ったのに。


「……っ!!」


けんせいはくちをぱくぱくさせながらこちらをみている。


「あ……あああ……せいじゃ……どの……。どうしてワシにそのようなことを言うのじゃ……ワシは……ワシのままじゃ……いままでも……これからも……」


動揺しすぎだ、メンタル豆腐だったら勇者なんてできねえだろうしこれは本気で地雷をぶち抜いたか。このままの精神状態でついてこられても困るしフォローしなきゃならんか。でもなー、今の感じで三倍言うことになったらたぶんめんどくさいことになる。


勇者だし自分でなんとかしてくれると信じよう。トラストユー。


「ワシは……ワシは……」


だんだん目のハイライトが消えてきやがった。あ、濁った目でこっちみんな。


「せいじゃどの……ワシは……ワシなのじゃろうか……」


哲学かよ、お前以外お前じゃないの、当たり前だろ。しかし知り合っちまったし原因は俺だしな……でもな面倒だな。


『終わりなき女難の成立を確認しました。対象先代勇者スモモ。なお、失敗した場合は先代勇者の精神が廃人となります』


あれ?俺へのペナルティは?


『今回はありません。当方としては放置を推奨いたします』


ふーん、今回はなんもねえんか。


『いかがなされますか』


やらなくてもいいと言われるとやりたくなるのが人の性だよな。てことで今回は俺の意思で助けようと思う。なんかここにぶちこんだ神への嫌がらせになる気もするし。


『了承しました、であればこの場面において限定的に言葉の矯正を解除します。あなた自身の言葉でお救いください』


まじかよ、難易度ぶち上がったな。さてと……どうすれば良いかな。














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