一方その頃 神サイド
「困ったことになった……」
低次元とはいえ主神である神は世界と命運を共にする存在である。世界の危機はなんとかしなければならない。
「どうしたんですか一体?」
秘書である天使ラジエルが本を片手に問う。
「いやな、地球から来た転生人とうちの子達で全面戦争になりそう」
ラジエルの手から命よりも大事にしている本が滑り落ちた。ちなみにこの本は世界の全てが記され続けるデーベースである。
「はぁ!?なんでそんなことになってるんですか!?」
「なんかうちの子達が転生人を狩ろうとしてるんだよ。わし育て方間違えたかな?マニュアル通りやったのに!?」
大神出版 【はじめての創造神】が基本的なマニュアルである。
「転生人が行った先で暴れたら裁定者がリセットするから大丈夫って自慢げに言ってたじゃないですか!!」
「まさか世界リセットに耐えるような強度で送ってくるとは思わないよ!?」
「そんなの……転生ボーナスの範疇を超えてますよ。それこそ元の世界の一部でも埋め込まれでもしない限り……」パラパラ
そう言いつつも転生人のリストを確認すると転生時には無かったテキストが見つかった。
それは現在生存している地球からの転生人すべてに書かれていた
【地球の因子】地球の一部とそこに存在した人類の全ての情報を内包する。存在密度の上昇効果に加えて一定条件を満たすと広範囲を地球化する
「これって……侵略じゃないですか!?」
「あー、やっぱそうかー。薄々感づいてはいたんだけどやっぱりそう思う?」
「それしかないですよ。ここ乗っ取る気ですよ!!」
「でもさ、最高次元神に抵抗できる?」
「……無理です」
「だよねー、って事でわしは秘密裏にやっていた計画があります!!」
「あ、【勇者計画】ですよね?」
「なんで知ってるの!?」
「私が持ってるもの何か忘れたんですか?」
「あ、そーいや君にデータベース丸投げしてたね」
「とりあえず全面戦争になる前に手っ取り早く要所を潰すために魔改造した勇者を3パーティ作り上げるんでしたね」
「その通り!!先先代の勇者はなんやかんやでソロパーティになっちゃったけど。あの子一人でパーティ一つ分以上の動きができるから良しとしよう」
「えーっと、勇者は全部で3人。そこに聖者と聖女を合わせて最高戦力にするんですよね?」
「ふふふ……わしはそんなところで満足する神ではない。追加で強そうなのを見繕っておいたぞ!!」
「……その人たちもう勇者パーティに入ってますよ?」
「へ?おっかしいな?そんなはず……本当だもういるな」
ラジエルのため息が響いた。
アースは今まで自分が送り出した我が子たちを思い出す。
アースは生存競争を激化させた世界で生まれる誕生と死を全て蒐集していた。それは執着であり責任でありなによりも愛であった。
自分の世界にあった、もしくは現在存在する全ての命をアースは慈しんでいた。そしてそれが滅ばねばならない事を悲しんでいた。
「私は……地球を愛している。それがどんなに独善的であっても……それがどんな犠牲を必要とする事であっても必ず存続させなければならない」
地球を創り出した神はかつて二柱いた。
一柱はもちろんアース
もう一柱はテラといった
彼らは兄弟神として地球を運営していた。
人間が生まれて頂点に立ち、自らで歴史を紡いで約2000年経った時にそれは襲来した。それは人間によく似た姿をしていた。だが違うこれは違う外なる神でもなければ、内なる神でもない。起こるはずのない歪み、あってはならない暗黒、星を、世界を喰らう異常現象だった。人でいうところの癌のようなものだ。それは一人の人間がそれを予知した事でようやく気づくほど神からの干渉を受け付けない存在だった。
それは番だった。
片方は王冠を被った少年のようで、もう片方はその姉のようだった。
その人間はその存在に名をつけた、少年のほうを恐怖の大王、姉の方をアンゴルモアの大王と呼んだ
その人間の名はノストラダムスという。
彼は番の大王について広めたが、聞き入れるものはいなかった。人類は大王に対抗する事を放棄した。
「ここまでか……地球はいい世界になってくれたが……」
「兄さん。あれは地球を消したらいなくなるのかな」
「分からない、だがごく稀に発生することがあるとは聞いたことがある。その時は世界が消えるのと一緒に消えたようだが…」
「……兄さん。いい考えがあるんだけどやってみてもいいかな?」
「テラ……?」
テラは真っ直ぐにアースを見つめていた。数多の大量絶滅を乗り越えた時と同じ瞳だった。
「……分かった。頼りにならなくていつもすまんな」
「ふふっ、何言ってるの。これからは兄さん一人でやっていくんだからしっかりしてよ?」
「……ひとりで?おいまさかテ「じゃあ行ってくるよ」
テラは番の大王のすぐそばへと降臨した。
「さあ僕が地球だよ。しっかりお腹いっぱいになるまで食べてね?」
番の大王は微笑んだ
「でもできるだけ痛くなく食べてくれたら嬉しいな」
その直後テラは消滅した。それと同時に番の大王の姿も消える。地球の危機は去った。
「テラ……お前はいつもそうだ。お前はいつも大事な事を最後まで……いつも……」
それからアースは地球を存続させるためにあらゆる手を尽くした。時には全滅寸前まで追い込むことさえあったがなんとか地球を維持し続けた。
だが
やがて限界が見え始める
アースが異世界への転生人数を増やし始めたのはこの時期からである。
「おお、我が子らよ。我が半身をも犠牲にした上で成り立つ最愛の子らよ。汝らの未来に幸多からんことを」
人類の自滅と時を同じくしてもう一度かの大王が襲来する事をアースは予感していた。




