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絶欲モンスター  作者: ジラフ
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長旅の始まり


聖堂へ向かうことに決まったのは良いんだがまさか徒歩とは思わなんだ


馬車とかさ……調達すると思うじゃん。聖女どもなんて言ったと思う?


俺がさ


「私は構いませんがあなた方は物資や移動手段が必要ではありませんか?」


こう言ったら


「お心遣い感謝します……ですが神にいただいたこの体があれば不自由など一つもございません」


だってよ


百点満点の答えだよちくしょう


だけどな?よくよく考えてもみろ、飯も食わず水も飲まずに旅なんかできるかよ


俺は……まあできるだろうけど


聖女っていっても人間なんだからどうせすぐにへばるだろうって思っていた時が俺にもありました。


「どうしました聖者様?」


「紅蓮の聖者様は足元まで気をつけて歩いているから時間がかかるのですよ。万が一命を踏んでしまったらいけませんからね」


「さすがは聖者様です!!」


「ぜー……ぜー……はー……」


クッソ、このゴリラどもめ……お前らの体力は一体どこから湧いてきてんだよ。


それ以前にちょっと待って……俺体力なさすぎじゃない!?まだ一キロも歩いてないけど!?


たしかに食っても飲んでもいねえから動けること自体がおかしいんだけどさ


「持久力なんてないに決まってるわよ。聖性だってまだ前の半分もないんだから」


あーそうかよ。じゃあ前だったらこれくらい余裕だったのかよ


「見てらんないにゃ」


あん?なんかさ、内側がさ俺の内側がさ


燃え始めてね?


「熱量ぶっ込んでやったからそれで動くにゃ」


そんな理屈があるかあ!?


熱量はそりゃカロリーだよ?でもさ、体を物理的に燃やすのは意味ねえだろうがあ!?


「ぜー……スー、スー、はあ」


あれえ?なんか息が整ってきたぞう


おっかしいなあ俺燃えてるのになあ


「これでしばらくは保つにゃ」


「ありがとうございます」


マジでありがとう猫!!


よくやった、あとでカリカリやるよ


ふはははははははは!!


これならダッシュも余裕だぞ!!


「あ、聖者様待ってください!?」


動ける


動けるぞ


羽が生えたようだ!!


ん?


なんか足場がボコって


「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


わーい


すごーい


でけえええええええええええええええええええええええええええええええ!?


クッソでかいムカデだと!?


なんでこんな奴が!?


「聖者様!?それは【百足龍(ハンドレット)】です!!気をつけてください!」


気をつけるもクソもねえだろうがこんなん


調子に乗ると良いことねえなあ!?


※※※


教会本部


通称聖堂、その地下に秘密の工房があった。聖なる場所にあるまじき武器製造場が。


驚くべきことにそこの人員は一人である。


【聖造】と呼ばれる異端の武器製作者シュタイン・シュタインが全ての作業を行なっている


「あー、ダメだー。なんも思いつかねえっス。もう潮時っスかねー。なんかもうマンネリっつーか、やる気ゼロっつーか。やる気/Zeroっつーかー」


図面を広げるはずの大きな机の上でのたうちまわる白衣の女性こそが偉大なる【聖造】シュタイン・シュタインである


「そりゃああれっスよ?エクスカリバーとか天羽々斬とか作ろうと思えば作れるっスよ?でもそのまま作ったらただのパクリじゃないっスかー?なんか追加でフレーバーがないと二次創作物にすらならないっス。それじゃあ、あっしの心が満たされないっつーかー」


ゴロゴロと机の上で転げ回る姿に威厳などひとかけらもない


「めんどくさいっスねー、そもそも文明の度合いを考慮しなくちゃいけないのがめんどくさいっス。とっととカラシニコフでもワサビサンゴブでも作ればいいのに」


シュタインはなにかをつかむように虚空に手を伸ばすがなにもつかむことはない


「あー、ミサイルか巨大ロボットでも良いっスねー……こっちじゃ良くて投石機止まりっスよ。あー、ガン◯ムとかナイトメ◯とか作りたいなー」


手近にあった鉛筆をとる


「それかもしくは、なんかこうアイデアが湧き出るような存在があれば良いのに……」


雑にスケッチをしながら眠くなったのかシュタインの瞼はゆっくりと降りていった。


「ああ、こっちなら面白いことが毎日あると思ってたのに……なあ……」


最近の【聖造】シュタイン・シュタインはずっとこんな調子である。


退屈な毎日


それが終わる日は案外近いかもしれない










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