うちがわ
まずいことになった
軽はずみに動くもんじゃねえって事を痛感してる
まさか一言で人格を幽閉されるとは思ってもみなかった
邪神怖え
俺の体は今、俺じゃない人格が動かしてるがひどいもんだ
血を盗られ殴られ毒物で嬲られる
よく死なねーと思う
内側に来て分かったことがある
まず俺の体はゲーム風に言うなら一人一本しかないはずのHPゲージが六本あるような状態だった。言わずもがな、俺の体に寄生しているエルフどもの分だ。それのおかげというのは癪だが、その要因で俺の体は保っている
俺の分は随分と貧弱だが、あいつらの分が膨大なせいだ
あともう一つ
もう一個の人格が二面者の能力の産物だということだ
本来なら俺は本当に記憶をぶっ飛ばされる所だったのを自動的に隔離して仮想人格を表に出して乗り切ったらしい
ちなみにこれらのことはよく分からない天の声に聞いたら教えてくれた
だからまあ表の俺はまるっきり別人格だ
でもよ
なんであれ俺がいいようにボコられてるのは気持ちがいいものじゃないな
まあ見た目はもう生前の俺じゃないが
それでもだ
思わず
「立ち向かえ!」
とか
「それでも俺か!!」
とか言っちまうこともあるが届くわけもないな。加えて驚くべきことに別人格の俺は戒めがない。寝てる間に声をかけても無駄だったがな、
それと、あの野郎……いやあの女は露骨に俺を取り込もうとしてやがる。
女難の対象かもしれない
そうなると破滅させるのは無理か?
だが、俺は待ち続けてやる
いつまでも俺を閉じ込めておけると思ったら大間違いだ
俺を虚仮にした事を後悔させてやる
絶対にだ
※※※
最近眠るのが嫌になった
声が強く
厳しく
激しく
苛んでくる
それはきっと正しい怒りなんだろう
それはきっと当然の思いなんだろう
でも
それは自分のものじゃない
誰かの思いだ
誰かの祈りだ
頭の中がぐちゃぐちゃになる
誰なんだろう
分からない
「どうかしましたか?」
隣にいる大司教様が声をかけてくれる
悩みがすっと霧散した
この人がいれば大丈夫
この人がいれば大丈夫
このひとがいればだいじょうぶ
「いえ、なんでもありません」
「そうですか……何かあったら相談してくださいね」
「はい、ありがとうございます」
慰めてくれるのも
優しいのも
守ってくれるのも
この人だけ
「1ついいですか?」
「何でも言ってください」
「私と契りを結ぶ気はありませんか」
「ちぎり?」
「ええ、簡単に言えば約束ですよ」
「よくわからないけど……それをしたいならいくらでも」
「ありがとうございます。では早速」
胸に軽い衝撃が走る
「……?」
見ると
胸に穴が空いていた
「驚かないでください。これは一種の儀式です。その証拠にあなたの心臓は鼓動を打ち続けていますよ」
たしかにどくんどくんと心臓は動いている
「そしてこれが私の心臓です」
黒い
そして艶かしい
内蔵の1つに過ぎないはずなのに美しい
「私の心はあなたのもとへ、あなたの心は私のもとへ、願うは永劫の絆【心融】」
心臓がそれぞれの胸に入り込む
何か嫌な予感がする
取り返しのつかないことが起こってしまったような
してはいけないことを見過ごしてしまったような
「これで私とあなたのつながりは永遠になった」
「あの……」
大司教様が苦しみだした
「……え……これは……なに……こんなことって……ありえない……ありえない……やめて……いやああああああああああ!!」
何とかしなきゃ
何とかしなきゃ
今分かった
すべきことはこれだ
助けなければいけない
救わなければいけない
僕は愛する人を
愛してくれる人を
救わなければいけない
『条件を達成』
声が聞こえる?
なんだ?
何だって良い、僕に力を
『二面者の裏条件である【第二人格】の覚醒を確認。精神性の査定により一度のみ【天啓】の発動を許可。あなたの言葉は奇跡を起こすでしょう」
これなら……もしかして助けられるんじゃないか?
やれる
僕は助けることができるぞ
言うんだ
大司教様を救うと
息を限界まで吸い込む
そして全身全霊で言葉を吐き出した
「邪教徒たちに断罪を!!」
え?




