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絶欲モンスター  作者: ジラフ
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己のすべき事をしろ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

正歴143年 秋節 18日


最近うちの信者達がおかしい


教義の【己のすべき事をしろ】を守るのは良いが


これは本来自分の役割をやり遂げろという意味である


だが、近頃はやりたい事をやるという風に解釈されている


これではただの暴徒になってしまう


早急に対処しなければ


とりあえず大司教に相談してみよう


草創期からの信者の彼女ならば何か良い案があるかもしれない


明日からまたすべき事をしよう


ーーーーーーーーーーーーー教祖 ハラヌス


正暦143年 冬節 3日


私はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない、私の側近である者たちまで本来の教義を無視した行動をとり始めた。守っているのは大司教ただ一人だ。ほかの者はとても信用できる状態ではないのだ。信用できるのは彼女だけだ。


しかし一つだけ疑問がある彼女の周りの者から順に暴徒化しているような気がするのだが……いや気のせいだろう

ーーーーーーーーーーーーー教祖  ハラヌス

正暦143年  冬節 21日


私は……愚かだった。見るべきものがまるで見えていなかった……真に警戒すべきなのは信者ではなかった。扇動者がいたのだ、教義を曲解してあらゆる不道徳を正当化している。私は扇動者の正体を知った。だがもう手遅れだ。私のできることはもうない。せめて安らかな眠りが彼らに与えられることを願う

ーーーーーーーーーーーーーー ハラヌス


これより後にハラヌスが信者の目の前に出てきたことはない


なぜかって?


それを表す東方の諺がある。『死人に口なし』だ


私が殺した。心臓を一突きでお仕舞い


なんてあっけない。あとは簡単だった


乗っとるのにかかった時間は1日と半


すでに私の息のかかった者で上層部を埋めてあった


後はじわじわと信者を増やして計画を進める。人間が何にも縛られない真なる自由を。


というのは建前。実際は独裁宗教国家を作るのが目的だ


意のままになる国というのはどんなに愉快だろうか。しかしもう少しで聖戦を始めるというところで彼が現れた


「っ!?」


普段なら問答無用で殺す


話すことさえない、だけど


地上において聖なるものなどないと思っていたのは間違いだと叩きつけられた


「あはぁ……!」


偶像崇拝など愚かだと思う


天に座す方々の形など我々には分かるはずもないのだから


それでも、私の偶像は決まった。あの姿をなんと形容したらいいのか、全身から発せられる濃密な聖の気配に加えておそらく聖骸布に等しいと思われる御衣を苦も無くまとい、少しだけ覗く肌は焼け焦げている。あれはきっと自らを供物として焼いたに違いない。


とにかく尊さというものが形を与えられたならああなるのだろう。そう確信できるほどの何かを私は彼から感じ取った


「欲しい……私はあの人が欲しい……」


私は初めての感覚に戸惑った、胸が苦しい……。


これは……まさか……?


「なんとしても手に入れてみせる」


まずは我が神……あれ?名前は……さっき忘れてしまったが


とりあえず我が神の檻に捕らえる。その後は呪言を紡がせれば良い


ただ一言『私は解き放たれる』と言わせればいい。


結果


彼は手に入った


記憶の大部分と聖性を失ってしまったけれど、そんなことは些細なことで後は真っ白な彼を染め上げるだけ。わざと暴力的、呪術的な信者を彼にけしかけてから助ける。


それを繰り返して少しずつ彼の中に私を刷り込んでいく


彼の中の私への依存を最大限に高めてからドロドロに溶かし尽くしてしまえばいい


私の愛のために生きて


私の愛のために死ぬ


彼の全てを私のものにする


ああ、痛めつけられている姿も毒で苦しんでいる姿も刻まれている姿も気を失って臥している姿も


全部全部愛おしい


だが、なぜこんな聖者がここに来たのかが分からない。私の隠蔽に不備などはなく今までに情報がもれたことなど無かった。ピラミダスは聖地の一つではあるが周りを砂漠で囲まれている上に危険なモンスターも出現する危険地帯だ。巡礼をするにしたって一目見てすぐに帰るのが普通だ。禁足地である内部にまで入ってくる理由などないはずだ。普通に考えればこれは諜報か刺客の類であるのだがそんな可能性は万に一つも無いだろう。


分からないことを考え続けても仕方がない、私は彼を染め上げながら聖戦の準備もしなければならないのだから。


聖戦とは名ばかりの国盗りではあるけれど、それでも制圧してしまえばこちらのものだ。私は作ってみせる、私と彼の楽園を。













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