まおうさまとの出会い1
朝気が付いたら周りの半径3メートルを除いて軍勢に囲まれていた
最悪だな
しかも人間じゃねえ。ゴブリンからオークからリザードマンからより取り見取りだ。しかし善因が似たような装備をしてやがるのを見ると群れっつうか軍隊っぽいか
「なんの御用ですか?」
一応聞いてやるよ
それにしても死骸が転がってるのを見るとトランス状態という名のボーっとしている間になんかしようとしたら俺のセコムが発動して死んだようだな
ある者は内側から焼かれ
ある者は陸上で溺れ
ある者は鋭利なもので斬られ
ある者はツタで首を吊られ
なんかこう空間ごとねじられた的な奴もいる
灰になったのもいる
キラキラしながら消えているのは浄化
なんだろう、俺もう戦闘じゃ死なないんじゃね?なんてこった。たぶん俺がなんも言わんから三メートル範囲で済んでいるけどOK出したら虐殺がスタートだろーなー
もう一回聞いてなんの反応もなければOK出しちゃおう☆
「なんの御用ですか?」
「聖人殿……まずは非礼を詫びたい」
ああん?豚面のあんちゃんよぉ頭が高いんじゃねえのお?
俺は今座ってんのよ?立ってんじゃねえよ
「いえ、お互い様でしょう。私の周りの者が失礼を致しました」
エルフどもは加減をしらねえからな。切れすぎる刃は使えねえって曹操も言ってたぞ
「だが、私も引くわけにはいかないのだ。魔王様のためについてきてもらおう」
「どうして、私などを?」
「それは……ここでは言えない」
え、また面倒ごとなの。やだ、去ってくれないかしら
「お断りします」
そうだ、なんか尊いこと言えば聖性で後光さすからそれでビビッてくれんかな?
「私は世俗から離れて生き、神にこの身を捧げるのです」ピッカーン!
どうだコレすごかろう、神々しいだろう、ひざまずけや
「なんという聖性……これなら……これならば」
え、やめて
救いが見つかったみたいな顔しないで、救ってほしいのは俺のほうだっつーの
「どうか……どうか……お助けください……。魔王様を……救ってください」
言っちゃったよこのポーク。これは……アカン奴や
『受難の成立を確認』
ほらきたもー、嫌なんですけどー
「救うとは……?」
聞かなくてもいいことを聞いちゃうんだよなあ
この口が恨めしい
「古い呪いです……それに侵された魔王様は見る影もなく……しかし、【紅蓮の聖者】という新たな聖者ならばもしやと……」
『5番の試練、古き邪心を開始します』
はじまっちゃったー、あーあ、これで行かないとどうせまたペナルティが増えるんだろう?
『肯定、今回は一分間のみ欲を満たしその後により強く欲を縛ることになります』
おいおいおい、慣れかけたところでそれはないだろう!?来た頃の苦しみをもっかい味わえってか?
それは無しだ無理
「いきます」
「そ、それは誠ですか!?」
まことですう行きたくないけど行きますう
「命がかかっているのです、ここで動かないのは畜生同然」
豚野郎に向かって畜生同然とか良いジョークだな
「ありがとう……ありがとう……」
「さあ、参りましょう」
行きたくねー
※※※
聖者が意識を覚醒させる十分前
「この方が……聖者か、まさか禁じられた森の最奥に人がいようとは……」
魔王の軍勢の精鋭を率いても易々とはたどり着けぬ魔境である聖域の森。聖者が今まで一度も襲われないのはひとえにクリアと聖性のおかげである
「しかし、ようやくだようやくたどり着いたぞ。これで魔王様を救うことができる。人さらいのようになってしまい申し訳もないがこれも魔王様のためである。せめて丁重にお運びしろ」
オークの将校の合図で布を持った部下が聖者に近づいていく。
残り三メートルそこまで近づいた時だった。異変が軍を包む。
それは圧倒的な殺意、歴戦の勇士でも足が竦むような絶対的な圧力
ついで聞こえるのは処刑宣告
「何をするつもりなのかしら?」
一人が浄化の光に包まれ声もなく消え去った
「何でもいいにゃ」
一人が灰になった
「……近づかないで」
一人が突然巻き付いた植物によって首をへし折られた
「どうでもいい」
一人は口から水を延々とこぼしながら倒れた
「どっかいってよ」
一人は風とともに二つとなった
「悪く思わないでね」
一人は異音とともにひしゃげた
「死ね」
一人は内側からじわじわと焼かれ苦しみながら斃れた
「なん……だこれは……!」
オークの将校は理解できない
一介の聖人につく戦力をゆうに超えたこの現状を
死んだものたちは決して未熟だった訳ではない、トップクラスの者たちだった
「なるほど……聖とはこういうことか」
オークの将校は聖者と直接交渉するほかないことを理解させられ。聖者と話ができるまでの十分間は彼にとって生涯最大の難関となった




