伝説のフェリージェとは?
翌日、城内の説明や詰所を一通り案内してもらったが、昔とはあまり変わらなかった。変わった所といえば城の装飾が豪華になっている。一言で言えば……派手だ。良く言えば。それ以上は言えない。今の皇帝の趣味だろうか?そんな事を考えているとテオールが懐から懐中時計を取り出す。
「そろそろ夕食の時間ですね。戻りましょう」
「食事の準備はどうなっている?」
「当番制ですが……」
「そこも変わらんな。よし、今日は私が作ろう!」
「えぇっ!?」
ビクッとするテオール。
「何か問題でも?」
そこに鋭い視線を向けるフリネラ。
「いえ、フリネラの料理は斬新かつ独創的だったので私達には理解できるかどうか……」
まだフェリージェだった頃、手料理を食べた事があった。正直……とても不味かった。
「つまり何が言いたい?」
勝負を挑んだ隊員のようになりたくはない。
「またあの料理を味わえるとは何とも贅沢でありますな!」
そう言って引き攣った笑顔になる。
「大丈夫だ。あの頃より成長した。任せろ!」
幼児化の間違いでは?ああ!いかん、いかん。また余計な事を。
結局これ以上何も言えなくなり、フリネラが作る事になった。
「さあ、食え!」
「……」
テーブルに並べられたメニューはパンにポトフ、鶏の揚げ物、サラダ。見た目は――普通だ。
「遠慮はいらんぞ」
「い……いただきます」
恐る恐るスプーンを口に運ぶ。
最初の犠牲者は俺か。まずはポトフを食べる。
「……美味しい」
「だろう!修道院にいたときは食事の手伝いをよくしていたからな」
ありがとう、神様。
心から感謝致します。
そこに魔獣討伐に行っていた隊員達がぞろぞろと食堂に入ってきた。
「何か良い匂いがする」
「腹減ったー!」
「おっ、今日は豪華だな」
各々席に着く。
「それではフリネラの入隊祝いも込めて、乾杯!」
『乾杯!!』
「うまーい!」
「これ、フリネラが作ったのか?」
「良い奥さんになれるぞ」
皆、美味しいと言って笑顔で食べてくれる。満足だ。
そう思いながらワインを飲もうとグラスを取ると、テオールが「フリネラ、あなたはまだ駄目ですよ」と止められた。
「今日くらいお祝いなんだから良いだろう」
「今は未成年でしょう?」
テオールパパは厳しい。グラスを取り上げられた。
代わりにレモン味の炭酸水で我慢した。
話題はフェリージェの話になっていた。皆、酔っている。
「それにしても伝説の赤き獅子・フェリージェはどのような女性だったのだろうか?」
「美しかったのだろうな」
うんうん。
「あの大剣で……格好良いな!」
うんうん。
「俺は男より酒豪だと聞いたぞ。飲み比べでは負けた事がないとか。酒場を一軒潰したらしい」
ん?
「俺は大きな猛獣を素手で倒したと聞いた。拳一発で。何とそれを骨ごとバリバリと丸かじり」
んん?
「それ、聞いた事がある!後、お見合いをしたらしいが、マナーはがさつで見てられない。おまけにフェリージェの戦の話を聞いた男が怖くて逃げたとか!」
「ハハハハ。そんな怖くてがさつな女だったら逃げるなあ」
「無理無理!」
ビール片手に盛り上がっている隊員達。
ブチンッ!
何かが切れた。そして――
ズドンッ!!
気づいたときにはテーブルが大剣で真っ二つになっていた。せっかくの料理も滅茶苦茶だ。
『……』
「悪かったな、がさつで。おまけにテーブルマナーを忘れてしまったようだ」
「フリネラ!」
テオールからワイングラスを奪い、一気に飲み干して自分の部屋に戻っていった。




