入隊
「さて、フリネラ・フォン・テスミールよ。配属先に異論はあるかね?」
受け取った書類に目を通す。
それを見て少しだけ口元が緩む。
「ございません!」
元気よく答えるフリネラ。
「うむ、ならば良い。厳しい道のりが待っているだろうがその手で乗り越えてみせよ。あのフェリージェを越える活躍を期待しておるぞ」
「はっ!無論そのつもりで参りました。必ずや勝利を掴んでみせます。では、失礼致します!」
人事部のドアを閉め「ふぅ……」と息をつく。
配属先は第2番隊陸部となった。
ざっくりまとめると行き先は4つある。
第1番隊は皇族警護、つまり皇帝と城の警護だ。
第2番隊は陸部、海部、空部。空部は魔力を使って空中で戦う。その為、飛べるほどの魔力が必要だ。
第3番隊は魔法院。その名の通り、魔法を使って戦う。攻撃はもちろん、防御魔法もできなければならない。
第4番隊は医療班。怪我人を治癒魔法を使って治す。
ちょうどそこにテオールが通りかかった。
「隊長、どの隊にきまったのですか?」
「隊長はお前だ。これからよろしく頼むぞ、テオール隊長!」
テオールを軽く小突いてニヤリと笑うフリネラ。
「では、我が部隊に?」
「ああ」
「また、共に戦えるとは……」
何とも感慨深い。
「フェリージェは団長だったのだぞ。最終的にはそこを目指す」
「フリネラ殿の実力ならば出世は早いでしょう」
最年少記録も夢ではない。
「その……呼び方なんだが『殿』はやめてくれないか?隊長のお前がその呼び方では他の者達が変に思うだろう」
言われてみれば確かに。
「では何とお呼びすれば?」
「そのまま『フリネラ』と呼べば良いだろう」
それもそうだ。もう上司ではないのだから。
「分かりました……フリネラ」
「よろしい」
「では、我が第2番隊陸部までご案内致します」
それでも敬語は直せなかった。そこがテオールの可愛いところでもあり、悪いところでもある。下の者達に舐められていなければ良いが……。
着くと稽古の真っ最中だった。
「皆、集まってくれ!」
テオールが声を掛ける。
『はっ!』
隊員達が一斉に集まる。もちろん女性などいない。ある国では女性でも剣を扱うと聞いた事がある。まあ、この国では私くらいなものか。それもあってかジロジロと遠慮なく見てくる者も何名かいる。私は珍獣か?難癖をつけるようなら噛み付いてやる。
「少し遅れたが本日から第2番隊陸部に所属する事になった、フリネラ・フォン・テスミールだ。実力は入隊試験を見た通りだ。女だからといって遠慮はいらないぞ」
入隊が遅れたのはフリネラに合う隊服などを用意する為だ。何せ10歳の少女の体格に合わせて作らなければならない。
「フリネラです。隊長の仰る通り、子供だからとか女だからとか関係ありません。誰であろうと負けるつもりもありません。どうぞ、よろしくお願いします」
こんなものか。
フリネラの言葉にざわつき始める隊員達。
「ちょっとフリネラ……そこまで」
小声でテオールが耳打ちする。
「最初が肝心だぞ。これでお嬢さん扱いはされなくなるだろう」
「それって初めて会ったとき、俺が……」
――言った。
『お嬢さん、ここの近くはこわい獣がいるからお家に帰った方が良いよ』
確かに言った!言ったが……
「あっ、あれはですね。そういった意味で言ったのではなくて!」
何とか弁明しようとするテオール。前世でフェリージェの機嫌を損ねた者の末路の記憶が蘇る。
そこに隊員の一人から声が上がる。
「ほう。すごい自信だ。それでは一つお手合わせ願えますかな?」
声を掛けたのは隊の中でも一番体格の良い男だった。
「良いだろう」
向かい合う二人。
「だから!……って、え?」
「行くぞ!」
「はぁっ!」
いつの間にか手合わせが始まっていた。




