フリネラの歩む道
フリネラは孤児だったという。
修道院の前に名前とメッセージを書いた手紙と共に置かれていたらしい。どうやらフリネラは貴族の妾の子で、父親はその赤い髪と金色の瞳を見て軍神フェリージェの生まれ変わりとして、自分の利益にしようとしていた。そう、フリネラを祭り上げ、国を乗っ取ろうとしていたのだ。正妻は実の子供よりもフリネラを大事にしていたので面白くなかっただろう。何度、命の危機にさらされてきたのだろうか。
このままではいつか殺される――。
危機を感じた母はフリネラと共に逃げ出し、こんな所までは来ないだろうと田舎の修道院にたどり着いたという。その後の母の行き先は書いておらずどうなったかは分からない。
シスター達は神のお導きだとしてフリネラを大事に扱った。文字を習わせたり、剣術も腕に覚えのある者を相手に練習をさせた。その流れからフェリージェの話の事に興味を持ち、彼女の事が書かれた歴史書を読んだ。
その中にフェリージェの大剣が残っていると書いてあった。しかもこの近くに。フェリージェの事を知れば知るほど記憶が甦えってくる。そこで剣を見に行ったのだ。
「そうでしたか……」
テオールはフェリージェこと、フリネラを自分の馬に乗せながら聞いていた。
「いや!それより入隊志望とはどういう事ですか!?」
「その通りだが」
「嘘じゃなかったんですか?いくら剣を扱えるからといってその歳では危険過ぎます。このまま修道院に送り届けますよ」
「剣が、いや戦場が私を呼んでいるんだ。生まれ変わった事に何か運命を感じる。こうしてテオールとも出会えたんだ。行くしかないだろう。それにちょうどこの時期は入隊試験が行われるはずだ」
こうなったらフェリージェは聞かない。昔からそうだ。何度困らせられた事か……。
「そうですが……。でも入隊には筆記と実技があるんですよ?実技はまあ、問題ないとして筆記は――」
「問題ない。元帝国騎士団団長だぞ?」
自信満々に答えるフリネラ。
「……知りませんよ」
村の見回りを終えた第2番隊陸部は帝都に帰った。フリネラと共に。
その後、戻ったテオールは上司である総隊長に見回りの報告とフリネラの入隊志望の話をした。
てっきり反対されると思ったのだが――
「良かろう。面白いではないか、その娘。よし、実技の相手はお前に任せよう」
「……承知致しました」
案外乗り気だった。止めてくれると期待していたのに。
実技かぁ……自分もあの魔獣のようになるのだろうか。
一週間後、各地から入隊志望者が集まり、試験が開始された。あまり騒ぎのないようにと髪の毛を染めたが不思議な事にすぐに色が落ちてしまった。本人がこのままで良いと言ったが結局目立ってしまった。「落ちてしまう」などと試験には縁起も悪いしな、とフリネラもわらっていた。
しかし、心配されていた筆記試験は見事合格。実は修道院に勉強熱心なマーサというシスターがいたらしい。このマーサ、勉強した部分を覚えるまで寝かせなかったらしい。小さな子にそこまでするか?
でもそのおかげで合格できた。マーサ万歳。
後はテオールとの実技試験。
筆記試験よりも気合が入る。
「よし!」
木刀を握り締める。
「26番、フリネラ・フォン・テスミール。前へ!」
「はい!」
両者向かい合う。
「それでは始め!」
「はっ!」
テオールから攻めていく。
だが簡単に受け流されてしまう。
「ふっ!」
今度はフリネラが攻める。
「くうっ……!」
受け止めるテオール。その小さな体からこんなに重い力がどうやって。
バキッ!
「!?」
「おっ」
何とテオールとフリネラの木刀が折れてしまった。
「何だ、何だ?」
「木刀が折れたぞ」
ざわつく試験会場。
「し、静かに!まだ試験中だ。誰か代わりの木刀を……」
試験官が代わりの木刀を持ってこさせようとすると
フリネラは折れた木刀を捨ててテオールを呼ぶ。
「おい、テオール!」
「真剣はあるか?」
「はい、ここに……って、え?」
腰の剣を見せるとフリネラは近くからあの大剣を持ってきた。
「やはり木刀では物足りぬ。行くぞ!」
「えー!!」
テオールは反射的に剣を抜く。
「こら、勝手な真似を……」
「あれがあのフェリージェの大剣か」
「俺、初めて見た」
またもやざわつく会場の声に試験官の声は飲まれてしまう。
ガンッ!ガンッ!
剣と剣がぶつかり合う。
「隊長の力はその程度か?」
「うっ……」
余裕そうに見えるフリネラ。
何とか抑えてはいるが一撃一撃がさすがに重い。
ガンッ!ガッ!
ギンッ!
試験官も止める事も忘れ試合を見守っている。
「これで終わりだ!」
「!!」
ブンッ!
大剣がテオールの顔の寸前で止まった。
「……参りました」
「勝者、フリネラ・フォン・テスミール!」
こうしてフリネラの入隊はきまった。




