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蚊です。転生したら人間でした  作者:


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8/28

私、ダメなんです。ただの虫なんです。

 帰り道の馬車の中。私、しょげてます。

 ノエルさんを泣かせてしまった。

 泣き終わった後ノエルさんは「また来て」って言ったけど。

私は知ってるよ。人間は、思ってないことを口に出すことがある。

 気遣いとかそんな理由で。つまり社交辞令って奴だ。本気にしたらダメだよ。


「どうか、したのかい?」


 お父さまが話しかけてくれた。顔に出てたのかな。


「実は、ノエルさんを泣かせてしまって」


 お父さまはんっぐと空気を飲み込むような音を立てた。


「いや、大丈夫だろう。うん。大丈夫だ。ガーネットは人を傷つける子じゃない。分かってるよ」


 ああ、過大評価ですお父さま。

 私は結局、ただの蚊です。ボウフラです。虫なんです。

 まだ出会ってから二回目なのに、怒らせて、壊して、許されて、泣かせて。

 人間の間で生きるなんてこと、最初から無理だったんです。


「君がどういうことを言ってノエル嬢を泣かせたのかは、分からない。リンウッド公から色々と聞いたし、想像はつくけどね。ガーネットのことだから、多分大丈夫だと思う」


 お父さまの声、いつもより力強い気がする。


「君はまだ10歳だ。これから学んでいけばいい。人の感情も、世界の様子も、それからノエル嬢のことも。そうすればいつか、ノエル嬢の涙の意味も分かる、さ」


 よく学びなさい。女神さまにも言われた事。


 ……10年。この、私にとっての途方もない時間は。

 人間にとっては"まだ"なんですね。


「分かりました。お父さま。私、これからも学びます。ノエルさんの涙の意味も知ります。人を悲しませる事だけはないようにします」


 お父さまは頷いた。

 やっぱり、ノエルさんとはまた会いたい。そして、よく学びたい。

 ノエルさんのこと。そして、仲良くなります。だって私、ノエルさんのことが大好きなんだから。


「ああ、それから。君の進学先、決まりそうだよ」


 え? 進学先ですか。

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