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蚊です。転生したら人間でした  作者: 若


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ノエルは時間を無為に過ごしている。

 何もせずに転がっているだけの時間は、辛い。

 ガーネットに会う前のことを思い出すから。


 昔のボクも毎日のように寝転がって生きていた。

 でも、もしかしたら、今の状況は昔よりもっと酷いかも。

 だって今のボクは、本すらまともに読むことができない。教科書すらも。


 別に、体調は悪くない。

 むしろ、すこぶるいいと言って構わない。布団の中に入っていると身体が火照るくらいに。

 たまに吐き気がするけど、それはいつものことだし。


 でも、何もできない。部屋を歩くこともできない。

 ガーネットに「体調が悪い」と言ったから。ボクは本当に体調が悪い人のように過ごさないといけないんだ。

 本も教科書も手に取ることすらできない。

 だから辛くても、ずっと天井を眺めている。


 自分で選んだ道なのに、思う。

 まるで、時間の牢獄にいるみたいだ。ただ、命を無駄にしている感覚だけがする。


 一日のうち何度も、「何がしたいんだよ」って思う時がやってくる。

 時計がこつこつ鳴る音や、たまに外から聞こえるざわめきが無性に心を掻き立てる。

「このままじゃ良くないだろ」って気持ちになる。


 だけど、気持ちは泥にはまった車輪みたいに空転するばかりで、どこにも踏み出すことが出来ない。


 これからどうしたらいいかわかんないんだ、ボクは。


 ボクはガーネットに会ってから、彼女のことだけ考えて生きていた。

 ガーネットを守るために強くなろうと思った。

 常にガーネットという太陽がボクの指標だった。


 ガーネットが居なくなった途端にボクは元の引きこもりだ。

 本当に情けない。ボクはちっとも変わってなんかいなかった。

 よく詐欺師から金を奪い返せたもんだ。


 でも、何より、一番情けないことは。

 ボクは、ガーネットに仮病を使っている今でさえ、彼女を待っているということだった。


 そろそろお昼時だ。ガーネットが寮に帰ってくる。食堂からランチボックスを持って。

 ガーネットは食堂に果物がある時は必ず果物ばかり詰めて帰ってくる。

 いかにもガーネットらしい気の利かなさだけど、今はそういう所にものすごく癒される。

 そしてお昼時を一緒に過ごすんだ。他の誰も居ない、この部屋で。


 罪悪感は、ある。

 あるけど、ガーネットのいない部屋で罪悪感に耐えるのと、ガーネットがいる部屋で耐えるのとでは大違いだ。


 耳が、特徴的な足音を捉えた。

 たんたん、たんたんって、弾むような足取り。

 ガーネットだ。


 ボクは目をぎゅっと閉じた。

 眠ってたけど、ガーネットの声で起きたって演技をする為に。

 だけど、ボクの耳はもう一つ、いや二つ、違う音も捉えた。

 ガーネットの足音に重なるそれの正体は、だけどすぐに、わかった。


 ――いいですか、なるべくお静かに、ですよ。

 ――わーかってるって、リンちゃんは心配しぃやなぁ。


 スイカと、リンベルだ。


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