表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蚊です。転生したら人間でした  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/71

ノエルは仮病を使っている。

 今日も朝がやってきた。

 滲んだ視界が、少しずつ鮮明になっていく。

 起き抜けの頭の重さも、身体のだるさも抜けていく。


 嫌だ。

 このままだと、起き上がる理由が出来てしまう。


 未だに滲んだ視界の中に、白いものがちらりと侵入してきた。

 それはどんどん大きくなって、そして。

 額にふにゃっと当たった。


「体温、低めです。ノエルさん、大丈夫ですか? 何か欲しいものはありますか? 水、持って来ましょうか? もっと小声で喋った方がいいですか?」


 本格的に視界の焦点が合ってきて、ぼやけていた輪郭が鮮明になった。

 ガーネットがボクの顔を覗き込んでいる。

 心配そうな顔してる。


 普段なら、本当に疲れていたとしても「大丈夫だ」とか言って、起き上がってた。

 だけど、今のボクは……。


「うーん、まだ辛そうですねえ。今日もお休みでしょうか」


 返事をしあぐねているとガーネットは自分で納得しちゃったみたいで、ボクの頬をすりすり撫で始めた。

 ……優しい。

 本当に優しい手つきだった。


「ごめん、ガーネット」


 方向の定まらない謝罪に、ガーネットは微笑んで首を傾げた。


「どうして謝るんですか?」


 また、言葉に詰まった。

 だって、ボクは、身体が疲れている訳でも、患っている訳でもない。


「ふふふ。変なノエルさん!」


 ガーネットはボクの両頬を人差し指でつんとして、立ち上がった。

 ベッドについていた傾斜が戻って、気付かない間に入っていた身体の力が抜けた。


 水平のベッドは、何故かとても寂しかった。


 ガーネットは机に鞄を置いて、ノートや本を詰めている。

 すっかり学生が板についちゃってるな。


 でもその中身は、芯の部分はやっぱり変わっていない。

 こいつは、今も昔も変わらず、優しい女の子のまま。

 そして、そのままで、新しい世界に触れて、新しい人と出会って、そして恋をした。

 誰が責められるって言うんだよ。


 ボクがわがままなんだ。

 ボクがバカなんだ。

 ボクが、最低なんだ。


 ずっと誤魔化してきたけど、今はもう、分かってる。

 ボクの底に沈んでた気持ち。

「ガーネットが自由に生きられるように支える」なんて立派な言葉とは、全く逆の気持ち。


 寝返りを打ってバルコニーの方を向くと、太陽の光がボクの目を焼いた。

 どうせなら全身焼き尽くして、消し炭にしてくれたらいいのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ