ノエルはデュオ・ヴァルナートに会いに行く。
考え方を、変える。
ボクはガーネットにとっての邪魔者であってはならない。
だが、彼女をウエストリアに引き込んだのは確かにボクだ。
そのことを踏まえて、今彼女の歩む道が悪い方に繋がっているなら?
ボクには、ガーネットの前に立ちふさがってでも、彼女を守る義務があるじゃないか。
だから、行くんだ。デュオ・ヴァルナートの所に。
あいつの狼藉をこの目で確かめる。
こればかりは人任せにしてはいけない。
自分に納得するために、これは必要なことなんだ。
学園の正面玄関を抜けると、庭園があった。
ボクは入学の時以来通ったことがないけど……。
そこは、造園師が腕によりをかけて作った学園の顔。
のどかで開放的。静謐でありながら、花壇には常に花が咲き乱れて訪問者の目を楽しませてくれる。
冬にはわざわざ寒い時に花をつけるスノウドロップに植え替える徹底ぶり。
つまり、ひとことで言えば素敵な場所。そして、座って休める場所も沢山ある――。
そんなわけで学内デートの人気スポットみたいですって、リンベルが目を輝かせて教えてくれた。
その時は何とも思わなかったけど、今は彼女のことが少し恨めしい。
今の状況だとその、男女の……それを、強く意識してしまう。
ボクは被りを振って気分が悪くなる想像を振り払った。
集中しろ、ノエル。
庭園から向かって左へ。そこが目的地だ。
軍事演習棟前。この時間帯、デュオ・ヴァルナートは軍事学の授業を受けた後ここでうろついていると聞いた。
気のせいだろうか、歩む度に足が重くなるように感じる。
緊張しているのか?ボクは。
……いや、きっとそうだろう。
欲しいと思ったものはどんな手段を使ってでも全て手に入れる。力も、物も、そして、人も。
そんな苛烈な奴にわざわざ会いに行くんだ。自ら火の中に飛び込むようなもの。
必要なことだと頭で分かっていても、本能が避けろと言っている。
ああ、ボクのバカ、臆病者。今さら何を怖がることが――。
「ゥオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーッス!!!!!」
「ひゃわっ!?」
たくさんの男の声が、曲がり角の向こうから聞こえてきて、思わず飛び跳ねてしまった。
「んだっ、今、の」
バカみたいに独り言が漏れ出てくる。落ち着け、ボク。
曲がり角の向こうから男たちの声が聞こえてくる。だけどそれは、言葉というより、音という印象で、何をしてるのかは察する事が出来なかった。
もっと、近づかないとダメだ。
ボクは壁の角に取り付き、慎重に顔を出した。
そこで、見たのは。
地面に伏せる、男の群れ。
そして、そいつらの中に立っているのは。
剣を肩に乗せた、背の高い男だった。
分かる。分かった。分からない訳がない。
人を見下ろして、偉そうな態度を取っている、あの、男。
あれが――デュオ・ヴァルナート。
……でも、なんで?
これについては全く分からない。
なんで、奴らは……。
"腕立て伏せ"を?




