やっぱり、勉強は苦手です。
「魔法陣は魔力を流し込めば誰でも扱える。だけど、魔力を扱える人がそもそも少ないからね。そこでマシューくんが取り組んだのが魔力を貯蔵して……」
「はぁ」
「マシューくんは優秀な生徒だったが精神的にもろい所があり、時折寝込むことがあった。そんな彼を当時から献身的に支えたのが君の母親である……」
「へぇ」
「ガーネットくん、どうしたんだい。君が聞きたがっていた父親の話だよ」
「はい! 聞いてます。歴史上開墾が植生を後天的に変える違法行為として扱われる州もあり、動植物の資源保護が目的とされていましたが実際は」
「待て、待て。何の話だ」
「はぇ?」
カラビア先生、私の手を握ってる。
そうだ、私。先生といつもの居残り授業をしてるんだった。
先生は手を離した。
「いいだろう。今日はこれくらいにしておこうか」
「はい、ありがとうございます…」
ぺこり、と頭を下げると、先生が小さめの声で言った。
「なんだか、元気がないね。いつもはニコニコしてるのに、今日はうつむきがちだ。何か悩みでもあるのかい?」
「その、実は」
私は胸に手を当てた。
日々を過ごす内に膨らんでいった、この、どうしようもない、抑えきれない思い。
ずっと我慢してた。こんなこと言っちゃいけないって。ましてや、ずっと親身になってくれてる先生になんて。
だけど、もう、ダメだ。
「実は…?」
先生が身を乗り出す。
「テスト勉強が辛いんですっ……!」
先生は座り直した。
「なるほどね。さっきのは、歴史の授業の話か」
「ごめんなさい、先生も授業をしてくれているのに、辛いなんて言ってしまって」
「いや、いや。ちっとも大したことじゃなくて安心したとも」
「そんな、私にとっては大したことです」
「しかし、変だよ。君は授業をちゃんと受けている。テストだってまだまだ先さ。心配することはないと思うんだがね」
「そんなことないです。私、ダメなんです。全然、分かってないんです。どこを覚えればいいかとか、ちっとも」
テスト。授業で聞いたことをちゃんと覚えているか、試すもの。
この先それがあるって聞いたから、ちゃんとノートを見直したんだよね。
でも、さっぱりだった。全然覚えられていなかった。
しかも。しかもだよ。授業で言われなかった、教科書に書いてあることも覚えないとダメなんだって。
そんなの無理だよ。私、蚊だよ。虫なんだよ。
こんなに辛いことがあるなんて聞いてないよ。
「ふむ、ふむ。ここは教師として、アドバイスを……」
「え!」
「しない方がいいだろうね。ただでさえ毎週の居残りで目立っているんだ、これ以上のえこひいきはよくないよ。まあ、不正行為でもしない限り補習が増えるだけだとも。頑張りたまえ」
「はい……」
がっかり。それに、補習って言われた。居残り授業が増えちゃう!




