ガーネットはカラビア先生に呼び出される。
ちんぷんかんぷんって言葉、いいよね。響きがどことなく蚊っぽくて。
全くもってこの授業はちんぷんかんぷんだよ。先生の言葉や黒板に書かれた文字を写してるだけで内容は全然わからない。後でどれだけ復習すればいいんだー。
こんなの覚えなくても生きていけそうなのに。って思うのは、やっぱり私が人間じゃないからかな。
「――汎用性のある呪文の開発が、それまでの固有魔法ありきという価値観を変え、更に魔法を便利にしていくことになる。だが魔法の体系的な発展は、魔術師の独自性を失う事にも繋がっていく。魔術士の凋落は起こるべくして起こった、という訳だね。今日の授業はここまで。あと、ガーネット・ファロンは少し教室に残る事」
えーと、今日の授業はここまで。ここまで! やった、やっと終わった!
あと、ガーネット・ファロンは、少し、残る、こと……と。
ん? 私の名前だ。
んん? 聞き間違いかな。
写しから目を離して先生を見ると、びっくり。先生、私の事見てる。
「そうそう。君だよ。心配しないで、大した話じゃないから」
え、なんだろ。今日は授業が終わったら自由時間のはずなんだけどな。
みんなが教室から去っていく。中にはこそこそ話し合ったり、出て行く時に私の顔を見る人も。うう、目立ってるなあ。
近付いてみたけど、やっぱりカラビア先生って小さい。絶対こどもだ。
先生は下から私を見上げて言った。
「なるほど、少し面影があるかもしれない」
「おもかげ?」
「君の父親。マシューのさ」
え。お父さま?
「お知り合い、なんですか?」
「もちろんだとも。だって…」
先生は、帽子のつばを持って被り直した。
「マシューは僕の教え子、だからね」
「えー、そうなんですか! 凄いご縁です! 偶然? それとも女神さまが引き寄せてくれたのでしょうか? 嬉しいです。お父さまのお話聞かせて頂けますか? お父さまって昔から運動が苦手だったのでしょうか?」
「待った、待った。話が早すぎる。少しは驚きたまえよ」
「え?」
「僕の見た目だよ。気にならない? 結構自信あるネタだったんだけどな」
見た目? そういえば、んん? お父さまが、大人で、カラビア先生がこども。なのに、お父さまが、教え子?
「改めて、カラビアだ。この見た目は魔力で年齢を止めている。産まれてからの年齢は150歳になるかな」
……。
「えー! 150歳!!」
口元に手を当てる私を見てカラビア先生は深く頷いた。
「うんうん。それだよそれ。僕の求める反応はね」
だって、だって、驚いちゃう。
150歳! 人間ってそんなに生きてしまうんですか!




