ガーネット、カラビア先生に出会う。
魔法学の教室は不思議な匂いがした。なんだか、インクの匂いを更に苦くしたみたいな?
人数は割と少ない。後から来るのかな。知ってる顔もなさそう。
本当に今まで見たことのない人たちだ。一人の女の子に笑いかけると、ふいと目線を逸らされた。
うーん、話しかける雰囲気じゃないね。
席にかばんを置いて教室を見渡していると、教卓の方に、子どもが居た。
あれは、んーと、タキシードだね。じゃあ、男の子? つばが大きくてとんがった帽子を被ってる。
男の子は教室をぐるりと見渡した後で、黒板に向かって背を伸ばして、何かを書いた。
えーと……からびあ? カラビア。
男の子は手をぱんぱんと払って、言った。
「初めまして。僕が魔法学を担当する、カラビアだ。さて、さて。さっそくだけど、時間は限られている。魔法学の授業を始めるよ」
先生だったの! えー、意外。全然そんな風に見えない。多分、私より年下。
みんなも同じように思ったみたいで、ざわざわと声がする。
大丈夫かな。みんな静かにした方がいいよ。年下なのに先生として頑張ってるんだよ。
だけど先生、気にしてないみたい。私たちを見つめて、変わらない調子で「さて」って言った。
「魔法、それは人に与えられた神秘。もっと情緒のない言い方で言えば、力。人類の黎明期において、人を図ったのは、魔力の量。性質。扱いのうまさ。力を行使出来る者ほど、高い地位を得ることが出来た――」
先生の声が教室に響いて気持ちいい。コツ、コツ、って、足音がリズムになってていいね。
「――だけど、社会が成熟していく度に、個人の突出した力は用済みになっていった。制御された人の波は、たった一人の魔力を遥かに上回る。魔法使い自身も、貴族という特権に、制度に飲み込まれて、魔力の行使以外のことに忙しくなった――そうやって魔力が大勢を左右する時代は去り、魔法はただの"才能"になってしまったのさ」
気が付いたらみんな静かになってる。
先生はぱんっと手を打った。
「という訳で、この魔法学の授業では魔法使いの興亡を中心に座学していくよ! 魔法の使い方や仕組みを学べると思ってた子は残念でした。まだ早いよ。まずは歴史から学ぼうね。そしてみんなで頑張って魔術高等院への入学を目指そう!」
思ってたのと違った! うそうそ、私、魔漏とか、魔力の抑え方とか、なんというか、実践的なものについて学べると思ってた。
しかも、歴史! 私の一番苦手なひたすら名前や言葉や数字を書く奴だ。
結局のところ、この授業も今までと一緒。話を聞き漏らさずに聞いて、写しを取って、分からない所は後で調べる。休み時間までたっぷり使って!
ううう。牛乳が飲みたいよー。




