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蚊です。転生したら人間でした  作者:


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25/28

舞踏会の終わり。燦然と輝く双子星。

「ほら、こっちや、こっちや!」


 スイカさんの手招きに迎え入れられた時、ようやく、人心地がつきました。

 終わってから気づきました。私、凄く緊張していたみたいです。

 だって、激しく呼吸をするのがやめられない。

 無意識のうちに息を止めていたみたいです。

 そんな私にガーネット様が声をかけてくれました。


「大丈夫ですか、リンベルさん。それにこちらの方は」

「はじめまして、自分はスイカいいます。よろしゅう」

「わー、スイカさんですね! 私はガーネット・ファロンと言います。リンベルさんの友達ですか?」

「友達も友達、大親友ですわ」

「えー。大親友! すごい! ではでは、お泊り会も? 私も大親友とたまにするのですが」

「そりゃもーしっぽりと」

「しっぽり!」


 息を整えてる間に勝手に会話が進んでる。スイカさん、勝手なこと言って。ガーネット様も信じないでください。


「あの、ガーネット様、スイカさんと私はさっき出会ったばかり」

「リンベルさん。私ともお泊り会しませんか? 私、うるさいのに早く寝るって不評ですけど。夜更かし、出来ないんですよね、私」

「是非しましょう!」


 前言撤回。スイカさんありがとうございます!


「ってか、そないなことはどうでもいいんです! ガーネットさん、あそこで何してたんです」

「ダンスです。何故か私だけ、途中で終わっちゃったんですけど」

「それです。あそこであの男に何言うてああなったんですか?」

「ああ」


 ガーネット様は口元に指を当てました。


「それは、二人だけの秘密です」

「……へぇ~」


 スイカさんののんきな声を聞きながら、ガーネット様のお姿を見ながら、改めて思いました。

 ガーネット様は、無邪気で、まるで無垢に見える振る舞いをなさります。

 だけど、その裏には底知れないものが眠っている。

 私は――いいえ。

 今ここで、私たちを取り巻く皆さんも、そう、思ったはずです。


 この方は気付いているのでしょうか。自分に集まった注目に。

 ――ガーネット様はふと、何かを追うように目線を巡らせました。

 その視線は、一点にとどまり、そして――。



「ガーネット!」


 声が、響きました。

 その切実な、何か強く訴えかけるような声は、私の耳に強く届いて。

 だけど、その声にひときわ早く反応をしたのは。


「ノエルさーん!」


 今までで一番明るい笑顔で、手を振ったのは、ガーネット様。

 ガーネット様の目線の先、そこに、一人の女の子が、居ました。


 ――今日は、衝撃を受けてばかりの日、です。

 そう、それは確かに、ノエル様。朝に正門の前で見た、ノエル様。

 だけど、その時抱いた地味な印象とは全く違う。

 しっとりとした白を基調に、青いシフォンが透き通るドレス。肩を覆う繊細なレース。


 上品。だけど、華美な装飾はなされていない。

 でも、だからこそ。

 強烈な、だけど、ドレスの色彩と調和したワンポイントが、その印象を忘れがたいものに変えている。


 ああ、私には分かりました。

 それは、彼女の個性を。

 銀髪に彩られ、ピンと張った、その、ワンポイントを。


 彼女の、耳を、美しく彩るためのドレス。


 あのような、美しい異相。きっと、誰も見たことがありません。

 あの、自分への"誇り"と"自信"。誰も、持っていません。

 私のような、一般市民にも分かります。

 それは明確なメッセージ。

 それはきっと、彼女の意思表明。

 自分は何も臆することなく、決して気後れしない――と。


「リンベルさん。絶対ですよ、お泊まり会!」

「あっ」


 ガーネット様は、言葉だけ残して、ノエル様の所に、飛ぶように行ってしまいました。

 そして、ノエル様の前で、軽く跳ねたり、手を広げたり。

 先ほど大事件を起こしたガーネット様が、嬉しそうに喋りかける様は、大いに人の目を引いています。

 私にとってもう既に、二人は遠く。何を喋っているのかも聞こえませ――。


「はぁ!? ゴンベ!?」


 ノエル様の声が響きました。

 ガーネット様はノエル様に頭を下げています。

 何があったのでしょうか。ノエル様の表情。とっても怒っています。

 だけどすぐに二人は、また先ほどと同じように話し始めました。


「なー、ええん?」

「……スイカさん? 何が、ですか?」

「いや、知らんけど」


 スイカさんは、テーブルの大皿を持ち上げ、自分の皿にお菓子をざらざらと入れながら言いました。


「あんた、ノエル・リンウッドと話す為に頑張ってたんやろ? あのガーネットさんを助けたのもあんたや。今がええ機会やで。行ってきい」


 ……全く。

 この人は私を、いつから見ていたんでしょう。もしかして最初から?

 でも。


「もう、いいんです」


 私はスイカさんの皿の中から、ひとつ、オレンジを取りました。


「それより私、スイカさんのお話、聞きたいです。北部でのこととか、色々」


 オレンジを口に運んだ私を見て、スイカさんは呆気にとられたような顔をしました。

 それから、とびきりの笑顔で言ったんです。


「よっしゃ! ほな今日は朝までコースやな!」

「あ、朝までですか? 明日からいきなり授業ですし、そこまでするつもりは……」

「ええやん! 商売人は体力が資本やで!」

「……そうですね。では、一緒に日の出でも見ましょうか」

「よっしゃ、その意気や! とりあえず外行こ。ここうるさいわぁ!」


 スイカさんは山盛りの皿を持って、テラスの方に歩いて行ってしまいました。

 私もすぐに、そちらに行きます。

 だけど、最後にもう一度だけ。


 私は、振り向いて、その姿を目に、焼き付けました。

 ガーネット様と、ノエル様。二人のお姿を、燦然と輝く双子星を――。

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