ノエルは出遅れる。
頭を冷やすだけ、だったのに。
どうせ外に出たなら、少しでも情報をと思ったのが失敗だった。
男子寮に忍び込んだまでは良かった。
物陰から物陰へ、ボクの身長なら隠れるのは簡単だ。
この厄介者の耳といい、ものは使いようだな。
そんなほんの慰めが集中を鈍らせたのだろうか。
気が付くと人の気配に左右から挟まれていて、すぐそばの扉に飛び込まざるを得なかった。
落ち着いた色調の壁材と、くつろげそうな家具。個室って雰囲気じゃない。きっとこれは、談話室だ。
ボクはいくつかあるソファの一つの裏に隠れた。
だけど、それは追いつめられただけ。人の気配は、この部屋に入ってきた。
部屋に入ってきた二人から有益な話が聞ける訳でもなく、彼らが出ていくまでただ時間を浪費させられた。
ようやく人の気配が去って、ボクは急いで部屋から抜け出した。
バカ。徒労だ。何の成果も得られなかった。舞踏会までそう時間はないのに。
そもそも他の公爵子女が普通の奴だったらこんな心配なんかしなくて良かったのにっ!
戻ったらまず、ガーネットの着替えを手伝って注意事項を再確認してそれからボクもドレスを着ないとっ!!
そう思って急いで戻ったボクを迎えたのは――もぬけの殻の部屋。
ベッド脇にはガーネットがさっきまで着ていた服が律義に吊られている。
あの子、先に行っちゃったんだ。
焦りがどんどん広がっていく。まずい。やばい。
男子寮に忍び込んだことが露見することなんか気にせず帰ってくるべきだった!
まずはボクも着替えないと、ああ、気が逸る。
ガーネットはうまくやるだろうか。ボクの言った事を守ってくれるだろうか。
ああ、どうしてボクはうまく出来ないんだ。
どうして、ここに居ないんだよ、ガーネット!
ああ、もう……!
――ドレス、ちゃんと着れてるか見てほしかったのに……!




