王立学園ウエストリア
「見てください、ノエルさん。馬車の列が並んでます! みんなウエストリアの新入生ですか? 遠くに建物が見えます。あれに馬車が出たり入ったりしています。きっと新入生だけじゃありませんね? 出入りが激しいって奴でしょうか? 素敵です、初めて見ました、こんなの!」
「ガーネット、静かに」
はい、すみません。私は馬車の窓を閉じて席に座り直した。
そんな私にノエルさんはなんだか慌てた感じで言った。
「ごめん、ガーネット。ちょっとイライラしてた。別にいいよ、外見てて」
「えー、いいんですか」
私はもう一度立ち上がろうとしたけど、やめた。
「いえ、静かにしています。だって、あれですよね。貴族らしく! ゆっくり動いて、喋りすぎず、落ち着いて話す。お母さんにもよく言われた事です。気を付けます!」
ふふ、私も成長しているんだ。いつまでもボウフラのガーネットじゃないもんね。
「……まあ、いいけど。大丈夫だからな、ガーネットはガーネットらしくしていれば」
ノエルさんは窓の外に目を向けた。
この顔、緊張してる顔だ。
やっぱり。
恐ろしいんですね。人と接するのが。
私は、ノエルさんと出会ってからのこの5年で知った。ノエルさんが人と違うこと。そして、人は、時々人にも冷たいって事。
ノエルさん。私も、恐ろしいです。潰されたくないです。
だから二人で気を付けましょうね。ウザくならないように!
馬車がガタンと揺れて、止まった。
ついで御者さんが入り口を開ける。
ふふふ、とうとうウエストリアだよ!
「ボクが先に降りるよ」
そう言ってノエルさんは降りていった。やがて、馬車の中ににゅっと手が伸びた。
私はその手を取って馬車から降りる。お礼、言わなきゃね。
「ありがとうございます!」
ノエルさんって、本当にいい人。それに、なんだか、どんどん優しくなってる気もする。たまに怒られちゃうけど。
時刻はまだ朝。照り始めた太陽の中でノエルさんの銀色の髪がキラキラとしてる。
「行くよ」
ノエルさんはそう言って、もう一度私の手を取って歩き始めた。
心強いなー。私一人だったらあわあわしてたかも。どこに行けばいいのかなーって。
これから始まる学生生活。ノエルさんと一緒なら全然平気かも!




