043 スカラベと野犬再びとフリカッセ その1
久々に神殿の祭具作成室にログイン。
「おはようございます。久しぶりですね、スカラベ。」
「おはよう。久しぶりだな、フリカッセ。」
「一ヶ月半も失踪していたようですが、ふむ、なんというか、かなりいびつな成長をしているように見えます。」
「魔力が回復しなくなってしまった気がする。すこし調べてくれないか?」
「そうですね、ちょっと見てみましょう。そこのベッドの上に寝てください。」
「わかった。」
いつの間にか準備されていたベッドの上で仰向けになって背筋を伸ばして寝てみる。
「第七は流れが遅く、第六が異常に速く、第五が分裂し、第四が変形。第三、第二、第一は正常。これ、いろいろとおかしいですよ。生きていることに不思議はないんですが、動けていることがおかしい。魔力が回復するはずがありません。魔力を司るところが機能不全をきたしています。いったいどこでなにをしてきたらこうなるのか。重病人じゃないですか。」
「魂はどうだ?」
「異常なくらい正常ですが、魂と肉体をつなぐ部分がおかしくなってしまっています。刻印魔法って魂の記憶部分に刻むんですよ。今、あなたは三百の魂が重なっていますね。接続部分の許容範囲ぎりぎりです。魂の記憶についてご存知ですか?」
「オカルト系で、なんか前世の記憶とかうんぬん。ダライ・ラマとかの継承に使われているやつくらい。」
「間違っていません。で、あなたですが、最新のタイムラインに虚無が記憶されていますね。仙人にでもなろうとしたんですか?」
「肉体を消すために虚無の海に連れて行ってもらった。」
「馬鹿の所業ですね。あなたがある程度許容できる精神を持っていたからよかった。でも、あと少しで、本当に肉体が永遠に魂ごと消えるところでしたよ。」
「で、フリカッセ、私はこの体で戦闘はできそうか?」
「スキルや魔法を使ったあなたの通常の戦闘スタイルでの戦闘は無謀ですね。スキルや魔法といったものを使わない戦闘ならば武器を貸出せばなんとかいけるかもしれませんが、今、獣がどこもかしこも急激に強くなってしまったので、インパクトすら使えない状態だと、おすすめできません。」
「杖を一本くれ。戦えないか試したい。」
「いいでしょう。あなたがスキルや魔法なしで戦えるか、見てみます。」
杖を一本持ちながら、草原に駆けてゆく。
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草原は以前とその様相を大きく変えていた。遠くに見えていた森が、全く見えなくなり、代わりに、大きな断層や、溶岩といったものが見えていた。とても大きな峡谷の中にあるとはわからずとも、大きな地殻変動があったことが伺えた。「ミチ」は草原の中に柱をおろし、小さなスロープが見えていた。
草原につくと、そこでは以前見たことのある野犬に似たようなものが群れていた。それらが軽く足踏みすると、目の前の大地が跳ね上がった。軽く駆けてくるだけで恐ろしい砂埃が発生し、遠くで狩りをしていた戦士たちの首や足を確実に刈り取っていった。野犬はもはや、弱い獣などではなかった。足場を的確に崩し、確実に獲物を仕留める凶悪な獣となっていたのだ。その遠吠えは、はるか上を飛ぶ獣を撃ち落とし、草原の支配者になっていた。何匹も固まって一斉に吠えることで、鳥が通過しようとするところに巨大な衝撃をあたえているようであった。しかし、あまり大きな吠え声にきこえないのは、いったいなんでなんだろうか。




