042 スカラベとつながった世界と下準備 その7
「............」
「こんにちは」といったとき、声が異様に長く伸び、自分の声に対する違和感がつよくなった。
待てよ。「異様に長く」?もしかして、自分が、体の細かい変化すらもわからないレベルで精神における時の進み方を細かくしたことが原因か?
つまり、この状態は自分の口?をはやく喋るようにすれば解決するということか。
「.............」
「あ」が異様に長いが、先程までより短い。もっとはやく、もっとはやくすれば、自分の声を聞き取れるはずだ。
「..........ー....ー........」
「もしもし」も長いが、先程よりは発音がはやくなってる。
「........ー.....」
「ホーク」も、だんだん聞き取れるようになってきた。
「こーんぺーいとーーお」
「金平糖」が、なんとなくわかった。
「レストラン」
精神と声をようやく合わせられるようになってきた。
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ひとつ問題があることがわかった。これは重大な問題だ。なにかというと、ここは虚無の海。つまるところなにもないところだということだ。杭システムは1鯖のメンテナンスに巻き込まれて使えない今、脱出手段が一切存在しない。恐ろしいことであるが、ここはおそらくどこにもつながっていないのだ。あさりうまうまの姿はとうに見えないし、ここではありとあらゆる感覚が役に立たない。はずかしい話であるが、ここにあさりうまうまが戻ってこない限り、おそらくでることはできないであろう。
とはいえ、せっかくなにもないという得難い体験をしているのに、調声と無に帰すだけしかやらないのはもったいない。せっかくなので、アバターをどこまで小さくできるかチャレンジをしてみよう。
1m、10cm、1mm、........................................
そして、つくれなくなった限界の大きさに魂をあわせ、大きいアバターはすべて消す。
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何度もやっていると、自分のおおきさが まったくわからなくなる。この感覚にはなれない。さて、発声練習といこうか。
「こんにちは」
なんか虚しいが、少し高すぎる気がする。もう一度。
「こんばんは」
いい感じになった。
自分しかいない世界てさびしいものなと感じながら、いろいろやってみる。
大きさのなかでも、一定の長さを超えて小さくなると、大きくなることと小さくなることが全く同じこと、区別できないことになるらしい。
どこからも光はこない。静寂の世界。たまにはこういうところもいいかなっておもってしまう。
音を出してもはねかえらず、すぅーと虚空に溶けてゆく。
自分の存在を無に近づける。楽しい。
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アバターどころか魂まで無になりそう。それでいい。いつかここから出られるのだろうかなどと考えながら、始まりの都市の神殿をイメージしてみる。
祭具生成室のイメージを練る。
魔力はいまだ回復しない。だが、いけるはずと思って念じてみる。
どこまでも、どこまでも、強く念じた。
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目が覚めると、神殿の祭具作成室にいた。
戻って来られたという安堵とともに、ログアウトした。




