036 スカラベとつながった世界と下準備 その1
気がつくと、私はまた死と龍の山脈にいた。そして、あさりうまうまの声がどこからともなく聞こえた。
「君、やっちゃったね。」
あたりを見回しても、魔力感覚にも、あさりうまうまの姿はない。
「ばっかるこーんはこれを予期してたのかな?それだと僕の考えにはじめっから賛同していたことになっちゃうね。」
声だけが聞こえる。
「僕が指名手配されていた理由ってなんだったんだろ。自己嫌悪?ははっ笑っちゃうよね。」
上からも、下からも、右からも、左からも、前からも、後ろからも、声が聞こえる。
「期待どうりであり期待はずれであると言わざるをえないよ、スカラベさん」
そして、自分が発した声のようにも聞こえる。
「5鯖はやはり滅ぼすべきだったのかな?一方的に、世界間攻撃魔法で徹底的に、滅ぼすべきだったのかなスカラベさん。」
あさりうまうまの声によって平衡感覚が、崩れ去ってゆく。
「この程度もレジストできないプレイヤーが逸材?馬鹿言わないでよばっかるこーん」
いつの間にか魔力が減っていっていることに驚く。
「雑魚だね。雑魚しかいない。当たり前だけどレース会場と戦場は違う。ステータス任せの出力じゃぁ、いくら技巧派でもばっかるこーんに、そしてなにより僕に勝てるわけがない。」
いつのまにか、自分が倒れ込んで、うずくまっていることに気づく。そして上から、あさりうまうまが私の事を見下ろしていた。
「でもそうだね、滅亡鯖の強者が駆け込んでくるのに、5鯖には強者が一人もいないってのも可愛そうだよね。昔いたんだけど、そいつは確か3鯖に逃げたよ。」
そして私の手を取って言う。
「特訓をして上げようか。ばっかるこーん風情には軽く勝てるようにしてやるよ。」
そして私の視界は光に染まった。
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「ここは、どこだ」
「5鯖。N4W4U2L1通称「崩れた世界」。僕しか来たことのあるプレイヤーはいないと思うよ。」
「なにをする場なんだ?」
「ここは永遠の命を受けてなお殺された者の墓場。不老長生だろうが死ぬときは死ぬ。だが人として彼らは受け入れられないこともあった。ここでするのは、君のアバターの改造及び疑似的な魂の底上げ。なぜかこのゲームは自分の魂を改造することを推奨しているからね。ステータスでなくて真に上げなくてはならないのはこっちだ。スキルは後付けするもの。魔法は創るもの。所詮人間の魂だと、スキルや魔法を扱うのは厳しい。ばっかるこーんみたいなかなり大雑把な使い方をするプレイヤーでさえ、魂を改造している。あと、ステータスだけ上げてるやつらいるでしょ。ステータスだけ上げても、魂がそれを使いこなせない。このゲームに、速度制限があるのは、魂がそれに拒絶反応を示しているから危険という意味だよ。技術的にとかフラッシュレートとか言っているけど、たくさんの魂が高ステータスに対して拒絶反応をしめしているからあそこまで遅くなってしまったんだ。発売当初は、速度制限なんてなかったよ。」
「じゃあ緊急メンテナンスは?」
「正規でないルートでマップの下にいく検証班は阿呆だけど、マップの下にデータを置くのも馬鹿の所業だよ。そして痕跡を見た限り、あの程度の速度で突破されるセキリュティではなかったね。偶然誰かが別の場所で何かラグを発生させることをした時間と被ったんだね。で、そのナニカを見つけるための緊急メンテナンスだよ。」
「魂の改造ってなにをやるんだ?」
「まずこっちの方向いて一歩進んでね。」
言われたとおりにすると、今まで見えなかった大きな鏡が近くに見えた。草原だったのが洞窟に変わった。
「この空間って面白くてさ。視界の中心がぶれただけで見えなかったものが見え、見えるものが見えなくなったりする。一歩踏み出しただけで遭難することがあるんだよ。それと鏡だけは正面から見ておくこと。鏡だけは、一度認識したら絶対に見えなくなることはない。魂の疑似複製理論というもので、疑似蘇生にも使う大事な理論さ。そして、魂の改造って言っても、不具合が出るかもしれないし、疑似複製した魂の方を改造するんだ。もし気に入ったら、ポチで終わり。魂のバックアップでもあるんだ。滅亡鯖にも似たような施設はあるけど、ここの施設がそれらの最高峰だよ。ここの素晴らしいところは、魂をいくつも重ねて使えるってことだね。ほかではできない操作なんだ。」
「魂を重ねる?」
「僕はミルクレープみたいに魂を重ねてアバターを使っているよ。たとえどれかが壊れても、演算処理を継続できるようにするにはスーパーコンピューターの理論だけど。それを応用してこのアバターを制御してる。でないと扱えないんだ。」
「どういうことだ?」
「何もしないと虚無の海に漕ぎだそうとするアバターさ。宇宙という意味ではなくてね。」
「魂を重ねるやり方を教えてくれ。」
「教えてもいいけど、制御できなくなったら横で邪悪な笑みをたたえて上げることしかできないよ。」
「おもしろそうだから、ぜひそうしてくれ。」
「それどっち?邪悪な笑み?それとも魂の重ね方をたとえ人格が崩壊するとしても教えてくれってこと?」
「どっちもある。」
「おっけーおっけーそうでなくちゃね。ではもう一個鏡を探してみようか。」




