034 スカラベと戻ってきた5鯖と油断
死と龍の山脈から大きく高度を上げてゆく。何もいない、そのはずだと考える。地名、そしてなにより、いままでここで獣に襲われたことはなかったから。そして、私は油断していた、とても危険なマップであることを忘れて。
呑蛇lv???x???
シュッと音と共に全身が噛み砕かれた。そして私は、死と龍の山脈に戻された。そして、私は何に食われたのだろうかと思って上を見てみる。だが、何もいない。周りを見渡そうとしたところで、またシュッという音とともに私は噛み砕かれた。魔力感覚で見ても、何もいないはずだったのに、確かに殺された。だから、何かがいる。目を閉じ、耳を澄ませてみる。すると、とても小さな、ズルズルという音が聞こえてきた。他にも、ドンという音も、チーという音も。どれかが私を殺した敵だが、どれも音の位置が動かない。
電探垓苔lv???x???
なにかに押されたような衝撃とともに、耳障りな音が聞こえてきた。空をナニカに飛ばされ、そして噛み砕かれた。死と龍の山脈の初期位置に戻される感覚とともに、5鯖の獣にリスキルされている自分が、情けなく覚えた。そして、中空のシャボン玉に身を覆わせた。目も耳も役に立たなくなるが、惑わされて知らない間に殺されるよにはずっといいと、そう思えた。こちらに飛びかかってくる蛇のような獣の姿がはっきり見えた。そして、いままでなんとも思わなかった苔が、薄く光を放っているような気がした。
空乏之雷lv???x???
晴天なのに雷が落ち、シャボン玉が割られた。二回目の雷が、私を爆散させた。体からナニカを吸い取られ、ナニカを入れられた結果である。戻されたところでシャボン玉をたくさん浮かべて見た。無数の雷によって私は蒸発し、シャボン玉をすべて割られた。
少年肥男lv???x???
原爆の資料館で見た、あれが空から降ってきた。卵形の胴体に箱型の安定翼。私は蒸発した。戻されたときに感じたのは頭が痛くなるような症状。そして、黒い血を吐いて私は死んだ。ここから出られなければ、もしくはこれらに対する対抗策を練らなければ、延々と死ぬことになることを私は理解した。
幸福降雨lv???x???
黒い雨が降った。そいて、またあの噛み砕かれる感覚とともに死んだ。戻されると、一面の青空。何もなかったかのように、見えるこの世界は、魔境と化していた。決して、人が生きていられる世界ではなくなっていた。汚染物質は強い雨で洗い流されており、1鯖のようなことにはならなかった。覚えたての時空属性のトラップを仕掛けまくると、たくさんのヘビのようなものがそれに引き裂かれたが、それ以上の数のヘビのようなものが、トラップの隙間を縫うようにして入ってきた。私は噛み砕かれて死んだ。自分を中心に時空属性の球状の封印をはると、一回り大きなヘビのようなものが、封印ごと私を噛み砕いた。
今度は時空属性で身の回りの空間を隙間なく捻じ切れる寸前まで変形させた。ようやく、安全圏ができた。雨も、雷も、音も、すべて跳ね除けることができた。ヘビのようなものも、引き裂いてくるなんてことはなかった。安全圏ごと体を動かすのに慣れが必要だった。ひとつ問題があるとしたら、攻撃が行えないことだが、獣は無視しても問題にはならなそうだったから、それは問題にはならなかった。インパクト推進は、一からやり直す必要がありそうだった。なぜなら、迂闊に動くと、自分もまた安全圏に跳ね返され、恐ろしいことになりそうだったからである。ぶつかったものはすべてぶつかる前より勢いを増していた。つまり、自分が安全圏に軽く倒れ込むだけで、恐ろしい速度で安全圏の中を跳ね回ることになる可能性が高かったのである。そんな間抜けな死に方はごめんだから、一歩一歩の進み方を練習することにした。空間を縮める練習も併用することにした。速く、安全に進むのは骨が折れた。まず一歩の距離を15mに抑えた。インパクトを使ったのではなく、空間を縮めただけである。そして駆け足に変えて同じことをすると、一歩の距離は60m。まだまだ短い。走りながらやると、一歩の距離は200m。走りながらでないと、インパクト推進は安定しない。足を踏み出すごとにインパクト一発で一歩の距離は1200mまで伸びた。
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迷って、コケた。私はあっけなく「安全圏」のなかで加速し続けるスーパーボールとなった。肉体の表面にさらに時空属性の盾を薄く貼った結果、加速度がさらに上がり、地獄になった。油断が生んだ自滅であった。20分ほど加速し続けながら「安全圏」の中を跳ね回っていると、突然肉体が「安全圏」の外に放り出された。原型と意識を保ったままゲッダンしているその姿は、まるで自分が「アワレなイキモノ」になったかのように思えた。いままで殺しに来ていたヘビの目が、こちらを見て「あっ(察し)」みたいな憐憫を含んでいたのは決して気のせいでないであろう。もっともすぐに私の肉体は、そのヘビを踏み潰してしまったのであろうが。




