023 スカラベと滅亡鯖の恐怖 その1
「見たことのない天井だ。」
「おっ起きたか、期待の新人君。確かスカラベだっけか。ここは1鯖の地下都市ハラキリだよ。」
「名前を教えてくれ。」
「ほえないいぬ。ほえないいぬという名で通っているよ。」
「ばっかるこーんの部下か?」
「そうだけど、あんまり上の方ではないかな。」
「1鯖にNPCはいるか?」
「人間だと十五人しかいないね。この地下都市の建築に協力してもらっているよ。」
「未完成なのか?」
「実は計画の三割しか工事は進んでいない。できたのは主要区画だけでね。それでも割と広いから、見回ってみるといいよ。但し、決して地上に出ないこと。」
「問題があるのか?」
「1鯖はすべての大地を汚染物質が覆っていて、持久が5e700を超えないと、一分も立たずに死んでしまうよ。」
「持久なら8e900ある。」
「なら、地上を三時間は生きられるね。それでも、獣が大体4e600の俊敏を有しているんだけど、どう?」
「俊敏は困ったことに3e400しかない。」
「地上にはしばらく出られそうにないね。八割で地上に出て1分も立たずにデスエンカして終わり。杭の数に余裕があるならパワープレイできるよ。」
「176本も余っている。」
「どんなに運良く進めても1km進んで詰む可能性が高いね。」
「どんな魔境なんだ、この鯖は。」
「仮にも滅亡鯖を名乗っているわけだし、1鯖は一番酷い環境なのは間違いないが、他の滅亡鯖と違って地下都市があるだけまだマシさ。」
「因みに、『アウグスト』に乗っていたらどうなる?」
「ばっかるこーん総帥の至高のモフモフかい?アレに乗れれば最高ステータスが100なくても1鯖の地上で何時間でも活動できるね。そうでなくともモフモフ使いならばある程度地上で活動できるようになるよ。モフモフは維持費となる使役者の魔力消費が性能を高くするに従って高くなるけど。」
「魔蓄と魔回は7e800もあるぞ。」
「なら中堅どころのモフモフが使えるよ。いくら持ってる?」
「6300ゴールド」
「うん、初心者支援モフモフしか買えないね。もしくはセールを待とう。でなければ君が一からモフモフを創るんだ。自分で使う分にはただの非刻印魔法だからね。売るとなると完全に勝手が違うさ。譲渡できる非刻印魔法何ぞ創れるやつはほとんどいないよ。総帥は創れるよ、一度に大量にね。完全に別格さ。」
「なんかこの鯖の最強の攻略法ってないのか?」
「あるよ。まず杭を打ち込みます。旨味敵にエンカして勝ちます。そこに杭を打ちこみます。十本打ち込んだら一本杭を抜きます。デスエンカしたら、杭に戻ります。杭が一本でも獣に囲まれていなければ先に進めます。もし全ての杭が詰み状態だったら待ちます。これの繰り返し。通称十倍ウォークさ。」
「ええ...なぁにそれぇ...」
「これが最強の攻略法だからだよ。杭は、テレポータルなんかじゃない。少しでも前に進むための強力な武器なのさ。つまるところ、忍耐力が必要だよ。そうでないと、十倍手間取ってしまうからね。」
「だから、この鯖ではどこまで早く特定地点につくかを競うのさ。みんな、同じ地獄で彷徨うのさ。ただ
一匹のモフモフを手にいれるために。」
「地底都市地上部からN10E10までの到達にかかった時間を競いあうコンペティションが、あと一週間で開かれる。一位の特典が、性能は中堅だが根性のあるモフモフ。十倍ウォークを練習して、ソイツを手に入れる事がスカラベ君のモフモフを手に入れる最短だと私は思うな。」
「ほえないいぬは随分十倍ウォークを推すんだな。」
「どの道、この鯖で生きるなら必須な能力だからだよ。5鯖を救うために1鯖に来たなら、なおさら必要さ。」
少しでも早く進みたいなら、このゲームは十倍ウォークが必須です。




